明日、衛星、落下。

先日の記事「アナタもなれる!(かも) 衛星の名付け親!」でご紹介した第1期水循環観測衛星GCOM-W1の愛称が、「しずく」に決まりました!
きっと、はやぶさのように擬人化され、しずくちゃんと呼ばれ、某ネコ型ロボットアニメに出てくるヒロインのように、メガネのダメ男を放っておけなかったり、ダメ男が空間直結ドアで家に来るときはいつも入浴中だったりする設定になるんでしょう。
さて、今回は同じ衛星でも、役目を終えて落下してくる衛星のお話です。
科学コミュニケーターOの「落下した衛星を拾ったら警察に届ければいいんですかね?」(※注)と感性が豊かすぎる発言は放っておき、少し科学的なお話を。
出典:NASA(アメリカ航空宇宙局)
明日9/24の未明、落下すると予測されている衛星UARS(Upper Atmosphere Research Satellite:上層大気観測衛星)は、大気中の化学的な成分やその流れを調査するため、NASAによって打ち上げられました。しかし、2005年12月にその役目を終え、廃棄するための軌道に移動されていました。 【UARSの成果】 ・オゾン層中の様々な化学成分を計測。 ・ピナツボ火山噴火による噴出物の流れを長期的に計測。 ・成層圏の気流や温度を計測し、太陽から受ける光エネルギーの吸収・散乱・反射のバランスを調査。 (調査:科学コミュニケーター 田端萌子) と、UARSの輝かしい栄光の紹介につづいて、みなさんから寄せられた質問にお答えします! Q. そもそも、なぜ、衛星は落下せずに回っていられるの?
A. 衛星が地球に引っ張られる力と、その引力から飛び出そうとする力の釣り合いがとれると、衛星は落下せずに地球の周りを回り続けられます。その速度は秒速7.9 km(時速28,000 km)! 提供:宇宙開発研究機構(JAXA) Q. 運用が終わった衛星は、どう処理されているの? A. 運用が終わった衛星は、地球から遠い衛星(高度36,000 km)の場合、もっと遠くに軌道をずらし、運用中の衛星が集まっている軌道から外れ、邪魔にならないように周り続けます。地球から近い衛星(高度2,000 km以下)の場合は、ほとんどは特に何もしませんが、大気や重力の影響を受け、だんだん高度が下がっていき、大気圏に突入して燃えつきます。 (調査:科学コミュニケーター 三ツ橋知沙) Q. なぜ、今回、衛星が落下してしまうの?
A. 落下してしまうというより、意図的に落下させられました。役目を終えた衛星が、いつまでも残っていると、他の衛星の邪魔だからです。意図的に落下させたことにより、不必要に地球を周り続ける時間を、20年間分、短縮できたそうです。 しかし、UARSは、大気圏突入で完全に燃え尽きず、一部の破片が地表に降り注ぐと考えられています。
・残存すると予想される危険な物体の数: 26 個 ・残存すると予想される物体の合計質量: 532 kg ・人に傷害を与える確率: 3,200分の1 また、太陽から放射されるエネルギー等によって衛星の姿勢が変わったりするため、直前にならないと、地球に落ち始める正確な日時を予測することは困難だそうです。 人工衛星の登場により、私たちの社会は豊かになりました。天気予報、カーナビ、航空写真、衛星放送など、もはや人工衛星なしの生活は考えられません。なれば、人工衛星の落下は、衛星の恩恵にあずかっている私たちが享受しなければならないリスクなのかもしれません。 しかし、このまま衛星を打ち上げているばかりでは宇宙にゴミ(スペースデブリ)が増え、どんどん危険になってしまうため、日本を始め、各国でスペースデブリ処理の研究が進められています。 あなたはどうしたらよいと思いますか? 参考リンク 文部科学省 - 「米国衛星「UARS」の落下に関する情報について」 アメリカ航空宇宙局(NASA) - 「UARSに関するページ」 ※注)この科学コミュニケーターOの発言について、科学コミュニケーターIからコメントが来ました。 この発言、NASAの発表文を受けたものでした ↓ でも拾っちゃダメ 「UARSの破片の疑いのあるものを発見したら、触らずに警察に届けて下さい」