2012年ノーベル賞を予想する!~化学賞~

科学コミュニケーターの田村真理子です。暑い夏も過ぎ、いよいよノーベル賞の時期がやってきました。

私は学生時代に化学を専攻していたということもあり、ノーベル化学賞を予想します。化学賞は特に予想が難しく、「これはもしかすると生理学医学賞でもおかしくない」「これって物理学賞ではないんだ」と思うような受賞者が出る可能性もあります。(なので、西原からディミまでの予想記事も見てくださいね)。ここでは、私がこれはすごい!!と思った研究と、さらに世界中から注目されている日本人化学者をノーベル化学賞予想にあげます。

田村の予想する化学賞

受賞者:藤嶋昭 (東京理科大学 学長)

受賞テーマ:光触媒 (酸化チタン)の発見

※注 9/19にトムソンロイター社が発表した今年の予想と、くしくも同じですが、真似したたわけではありません! 田村は9/7に予想し、原稿を書いてきましたが、化学賞の発表は、医学生理学賞、物理学賞に続いて3番目ですので、予想ブログも合せて、最後に公開となりました。いずれにせよ、トムソロイター社も予想したのですから、的中が期待されます!(管理人)

提供 東京理科大学

この研究のここがスゴイ!

酸化チタンを表面にコーティングするだけで、優れた殺菌効果があるだけでなく、汚れが自然に落ちるという防汚効果もあります。手術室の壁や医療機器、掃除の難しいビルの外壁などに使われています。この、酸化チタンの優れた効果を発見したのが、藤嶋昭先生なのです。

光触媒である酸化チタンは光を当てるだけで物質を分解します。さらに酸化チタンで表面をコーティングすると水滴が粒状ではなく平たく伸びるという性質があります。(下の図)。この性質から、殺菌、消臭、防汚など、多くの効果が得られるのです。

菌も殺し、死骸も分解

酸化チタンに光を当てると強い酸化力が発生します。この酸化力により酸化チタンコーティングした物は光を当てると表面に存在する細菌やウイルスを分解します。また、床や壁に使用したところ空気中の殺菌効果も確認され、現在では病院の手術室などに利用されています。さらにすごいのは、従来の殺菌方法では死んだ菌の死骸は残ったままでしたが、酸化チタンは物質を分解させる効果もあるため菌の死骸までも分解します。(ちなみに、ゴキブリの分解には一年間かかったようです。)

空気中の有害物質を分解

分解するのは、病原体だけではありません。シックハウス症候群の原因物質と考えられているホルムアルデヒドを分解する効果も発見されました。また、大気汚染物質である窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、ダイオキシンをも分解するため、現在は道路をコーティングし濃度減少をはかる実証実験が行われています。

汚れが勝手に落ちる

分解する効果を用いて、汚れも落とすことができます。光を当てると表面の汚れが分解され、はがれ落ちます。また、超親水性という非常に水になじみやすい性質により水滴が平たく伸びて汚れの下に入り込み水の流れとともに洗い流されます。

ビルの外壁やトンネルの内壁など多くの建築物に使用されています。定期的に掃除をしなくても太陽光が当たり、風が吹き、雨が降るという自然のシステムで勝手に汚れがおちるのです。

酸化チタンは世界を救う!?

こうした酸化チタンの性質が発見されたのは、今から約40年前のことでした。当時、大学院生だった藤嶋昭先生はたまたま水の電気分解の電極に酸化チタンを使用したところ酸素が放出し電流が流れました。人工的に水を分解して酸素を放出する・・・まさに人工光合成です。これに驚いた藤嶋先生はさっそく国内の学会で発表をしましたが、当時の日本では全く相手にされず「もっと勉強しろ!」と言われてしまったようです。しかし、アメリカではこの発見が高く評価され一気に注目されるようになりました。

 この発見がきっかけとなり、現在ではさまざまな性質が見つかり、私たちの身の回りでも利用されています。しかし酸化チタンは値段が高く、今後は低コストでの利用が期待されています。

 藤嶋先生は日本だけでなく世界中で多くの賞を受賞され、ノーベル化学賞の候補者としても注目されています。私は学生の頃に使っていた教科書で酸化チタンの性質を知り、その効果に衝撃を受けました。そして、発見したのが日本人だということに驚き、日本の科学技術を誇らしく感じました。

将来、衛生面に問題のある国や地域に酸化チタンコーティングさえ出来れば多くの命を救えるかもしれない! 環境汚染物質を分解し、今世界的に問題視されている環境問題が解決するかもしれない! 酸化チタンは世界を救うと言っても過言ではないかもしれません。

たとえノーベル賞を受賞しなかったとしても、この研究はそれくらい価値のあるものだと私は思います。

ノーベル化学賞の発表は10月10日(水) 日本時間の18時45分です。

残り約1ヶ月。ドキドキしながら発表を待ちます!

参考文献 化学図録 数研出版

<リンク>

文部科学省 科学技術政策研究所
https://www8.cao.go.jp/cstp/nanoweb/interview_2.html (リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)

2012年 ノーベル化学賞!! 「化学と医学の共役-Gタンパク質共役受容体」 (リンクは削除されました)

「化学」の記事一覧