SDGsリレーブログ・インドネシア編 イネ科の作物ソルガムがカギ!見捨てられた草原の持続可能な利用をめざして【後編】

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 SATREPSの研究プロジェクトでは現地の学生や研究者を招き、日本の技術移転を積極的に行っている。SDGsの17の目標の1つとして掲げられている「パートナーシップで目標を達成しよう」に貢献している。
 この一環でインドネシアから来日し、梅澤さんの元で研究を進めているのがスパトミさん(34)だ。スパトミさんはインドネシア科学院(※1)に在籍中の研究員で、日本で博士号を取得した後はインドネシア科学院でさらに研究を進める予定だ。スパトミさんに京都大学生存圏研究所で話を聞いた。

※1 正式名称はIndonesian Institute of Sciences (LIPI)。以下本文では、インドネシア科学院とのみ表記する。


20191226_ayatsuka_01梅澤さんスパトミさん.JPG左から、スパトミさん、梅澤さん


20191226_ayatsuka_02インドネシア地図.jpgインドネシア ジャカルタとボゴール(地図:©OpenStreetMap contributors


「日本で学んだバイオテクノロジーをインドネシアの農業に役立てたい」

綾塚 来日してプロジェクトに参加するようになったきっかけについて教えてください。
スパトミさん オーストラリアで修士号を取得した後、今所属しているインドネシア科学院で働く中でこのプロジェクトがあることを知りました。バイオテクノロジーの進歩は早いため、インドネシアでは学べなかったことをたくさん習得したいです。例えば、将来の選択肢としてゲノム編集(※2)の技術にも興味を持っていて、そうした技術を習得できるのも日本で研究する魅力の一つです

※2 ゲノム編集とは、生物の特徴を決める遺伝子を今までの技術よりも高い精度で編集することができる技術。農作物の品種改良を早く進められるなど、農業分野での期待も大きい。

綾塚 もともとバイオテクノロジーに興味をもったきっかけは何ですか?
スパトミさん 父が農家だったことが大きいです。小さいころから農業が身近な環境で育ちました。今までの農業は、天候に左右され、たくさんの肥料が必要でした。ただ、こうした農業は農家に金銭的、労力的な負担がかかりますし、地球環境にとっても持続的ではありません。バイオテクノロジーをインドネシアの農業に活かしたいと考えています。

綾塚 今はどのような研究をしていますか?
スパトミさん 今は今後の研究の基礎となる知識と技術の習得を進めています。研究のサンプルとして使うイネを温室で育てることから始まり、遺伝子の解析方法や植物の細胞の解析方法などを学んでいます。ゲノム編集はちょうどこれから習得を始めます。


20191226_ayatsuka_03スパトミさん.jpg実験をするスパトミさん


綾塚 研究で特に大変なことはありますか?
スパトミさん まだまだ知識が追いつかないところが大変ですね。特に、リグニンの話はもっと勉強しなければなりません。また、実験でも失敗することが多いです。それでもあきらめずに何度もチャレンジしています。梅澤先生の「がんばってね!」の一言が私にとってのマジックワードで、チャレンジ精神の元にもなっています。「がんばる」という日本語、いいですね(笑)。

綾塚 がんばりすぎないように気を付けてくださいね(笑)。
スパトミさん はい、大丈夫です。研究と息抜きのバランスはとるようにしています。研究室のメンバーとたこ焼きパーティーをすることもありますよ。琵琶湖にも遊びに行きました。東京にもいつか行きたいです。


20191226_ayatsuka_04タコパ.jpg研究室でのたこ焼きパーティー。研究室内での交流も欠かせないという


綾塚 帰国後はどのような研究を行う予定ですか?
スパトミさん 今はまだ具体的に決まっていませんが、ボゴールのインドネシア科学院に戻って研究を続ける予定です。ここで得たバイオテクノロジーの知識と技術を活かした研究を行い、特に農業分野に貢献したいです。また、自分が持っている知識を科学院の同僚など周りの研究員にも伝えていきたいと思います。


20191226_ayatsuka_05インドネシア科学院.jpgインドネシア科学院。帰国後は引き続き研究を行う予定だ


「日本の高校生も夢に向かってあきらめないで」

綾塚 この記事を読む読者、特に日本の高校生へメッセージをいただけますか。
スパトミさん 日本の高校生を見ていると、隙間時間を見つけて勉強したり、遅くまで勉強したりしています。ものすごく熱心なので、むしろその姿勢を私が学んでいます。その上で何か伝えるとすれば、Never give up and do the best!(あきらめず、ベストを尽くして!)でしょうか。夢に向かってあきらめず、いろんな挑戦をしてもらえればと思います。


20191226_ayatsuka_06研究室メンバー.JPG取材当日、集まってくださった研究室のみなさん。全員で24名のメンバーがいる(京都大学 生存圏研究所 森林代謝機能化学分野)


<取材後記>
 日本でも郊外に行くと空き地や公園でたくさんのチガヤを見つけることが出来る。こうしたチガヤは実は世界にもたくさん広がっていて、その草原は農地としたり、地球温暖化対策として活用できたりする可能性を持っている。今回の取材を通して、日本の日常風景にも世界とのつながりを見つけられると感じた。そしてだからこそ、世界の課題を日本に突き付けられているとも思えた。日本では果たして持続可能な土地の利用ができているだろうか。日本の近海で赤潮が頻発している原因の一つに、肥料の使い過ぎが指摘されていることからも、決して他人事の問題ではない。世界で起こっている問題を知ることは、わが身を振り返ることでもあると思う。


<取材協力・写真提供>
●梅澤俊明さん
京都大学 生存圏研究所 森林代謝機能化学分野 教授

●飛松裕基さん
京都大学 生存圏研究所 森林代謝機能化学分野 准教授

●スパトミさん
インドネシア科学院 研究院 / 京都大学 生存圏研究所 森林代謝機能化学分野 博士課程学生