SDGsリレーブログ・タイバンコク編 情報技術で渋滞解消!快適な移動を実現するには【後編】

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 前編では、情報技術を活用してバンコクの渋滞を解消し人々の快適な移動を目指すプロジェクトの取り組みについて紹介しました。
 中部大学持続発展・スマートシティ国際研究センター長の林良嗣教授の下、快適な移動の評価方法について調査をしている、タイからの留学生ウィットサルートさんに話を聞きました。


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ウィットサルートさん

<インタビュー>

松島 ウィットサルートさんはバンコクのタマサート大学で修士課程を学んだとのことですが、出身はどちらですか?

ウィットサルートさん チェンマイです。バンコクから北へ700kmほど、人口25万人のタイでも比較的大きな都市ですが、周りは山に囲まれていて美しい自然にあふれています。

20200120 matsushima_05.jpgタイ バンコクとチェンマイ(地図:©OpenStreetMap contributors)

松島 チェンマイの交通はどのような状況ですか?

ウィットサルートさん チェンマイは公共の交通機関がほとんどなく、完全に車依存の社会です。とはいえ、バンコクはケタ違いに人口が多いので、それに比べればチェンマイの渋滞は今のところそんなに酷くありません。

松島 バンコクの渋滞はどれくらいひどいのでしょうか?

ウィットサルートさん とても深刻です。毎日人々は渋滞によって多くの時間を失っています。例えば健康面では精神的・肉体的な影響を受けます。仕事面ではビジネスマンや学生アルバイトが経済活動をする妨げになります。生活面では大切な家族活動の時間を奪います。環境の面でも大気汚染や騒音被害、エネルギーの無駄遣いにつながるなど、渋滞による悪影響は多大です。日本に来てから、東京・大阪・名古屋など大都市を訪れましたが、どの都市の中心街でも交通渋滞がみられないことに驚きました。

「社会にインパクトがある研究をしたい!」

松島 現在、ウィットサルートさんはバンコクの渋滞解消をめざした研究に取り組んでいますが、この分野に、どうして興味を持ったのですか?

ウィットサルートさん タイの大学では、情報通信技術を使ってデジタル地図を作る研究をしていました。修士課程を修了した後も、自分の研究を継続しながら、社会にインパクトのある研究をしたいと考えていたところ、林先生と出会いました。明らかにタイの交通渋滞は、社会に多大な悪影響を及ぼす深刻な課題です。交通渋滞を解消し人々に快適さをもたらすという林先生の研究にとても興味を持ち、彼の下で博士研究に取り組むことに決めました。

松島 日本での生活で学んだことはありますか?

ウィットサルートさん 日本は既に素晴らしい規則や環境にやさしい社会づくりを行っていると思います。さらに、一人一人が環境保護や資源を使う責任に目を向けることができれば、それは世界を救うことに繋がります。例えば、エネルギーの使用や温室効果ガスの排出を削減すること、ゴミの分別をすることが大事です。

20200120 matsushima_06.jpg林良嗣教授(左)とウィットサルートさん(右)のディスカッション風景

「快適な移動を実現するためにスマート交通分野の研究をけん引できる存在になりたい」

松島 中部大学で博士課程を終えた後はどうされる予定ですか?

ウィットサルートさん タイに戻って、人々の生活をより豊かにするためのスマート交通の研究を継続し、教授になりたいと考えています。持続可能な発展のためにはスマートシティやスマート交通の取り組みは不可欠なものになってきています。さらに、QOLを考慮した社会づくりは今後世界中のトレンドになると信じています。

<取材後記>
 私は普段「時間が足りない!」と思うことが多くあります。仕事中・友人と遊んでいる途中・家族と過ごしている時・睡眠の前後など様々です。渋滞の解消によって、低炭素社会を目指すことや経済的損失を少なくすることももちろん大事ですが、人々の生活をより豊かにするということに着目して、人それぞれのQOLを評価しようと試みているのが、このプロジェクトのユニークさであり魅力だと感じました。
SDGsの理念である「誰一人取り残さない-No one will be left behind」は私の一番好きなSDGsの側面です。今回、実際に取り組んでいる方々に取材をしていると、みんながハッピーな明るい未来を描くことができる様な気がして、私も力がみなぎってきました。今後このプロジェクトがどのような方法で渋滞を解消し、「移動のQOL」をアップさせることになるのか、これからの行方がとても楽しみです。
今回、お忙しい中取材にご協力いただいた皆様に心より感謝申し上げます。

20200120 matsushima_07.jpg左から、松島(筆者)、ウィットサルートさん、林良嗣教授