海外旅行をもっと楽しむ秘訣は「感染症対策」〜ニコニコ生放送より〜

皆さん、海外旅行は好きですか?

僕は大好きです。 中南米、アジア、ヨーロッパと35カ国旅してきました。美しい景色に出会ったり、おいしいものを食べたり、現地の人と交流したり、素敵な思い出がたくさん。

でも、旅行ににでると楽しいことだけではありません!日本みたいに治安の良い国ばかりではないのです。僕も旅をしているときには「拳銃をつきつけられた」など犯罪に巻き込まれたケースをたくさん耳にしました。

怖いのは犯罪だけではありません。海外にはもっと身近な危険があります。

それは、感染症

感染症という言葉だけきくとマラリアやデング熱など深刻なものを思い浮かべるかもしれませんが、風邪や一部の食中毒も感染症の仲間です。海外には日本ではあまり聞かないような感染症があり、普通に旅行をしているだけでも多くのリスクがあります。

先日のニコニコ生放送では、国立国際医療研究センターの堀成美さん(ご出演は二回目なのに、すでに未来館チャンネルの準レギュラーの風格ですね)とともに「海外旅行に潜む感染症リスク」についてお話をしました。番組では、僕の海外経験談を交えながら、どんな行動が危険だったかを堀さんにコメントしていただきました。その内容の一部をご紹介します!※番組をご覧になってない方はぜひこちらでご試聴ください!

例えばこんなところに危険が・・・

現地ならではの楽しみ! 路上でご飯を食べる

これは、僕がタイの路上でパッタイを注文している時の様子です。旅をしているときは、路上にある食べ物をパクパク食べていました。そして、日本にいるときとは比較にならないぐらいお腹を下しました。

堀さん:食べ物を含め調理に使う水やお皿がきれいであるかはわかりません。食べる時は衛生面を気にしたほうがいいですね。

現地の人が大丈夫だからといって、路上で売られている食べ物を安易に口にすると、食中毒になる危険性があります。そして、単なる食中毒といってあなどってはいけません。赤痢やコレラの場合であれば、放置すると重症化して死亡することもあります。できるだけ衛生状態の良いレストランを選んで食べるほうが良さそうですね。

日本ではできないことをしたい!川に飛び込んでみた

写真提供:バックパッカー仲間 Hiroyasu Shinoda

やっぱり海外に行くと日本ではできないことをやりたくなってしまうもの。インドやラオスの川で泳いだ後に、高熱がでるなんてこともありました。

堀さん:チャレンジャーですね(笑)。

堀さんのチャレンジャーというコメントどおり、川や湖で泳ぐことには危険がたくさん。インドのガンジス川では現地の人が洗濯をし、用を足し、沐浴するのです。なんと、牛も沐浴します。汚物にはウイルスや細菌がたくさん含まれるので、そんな川の水を飲み込んでしまったら感染症になることは目に見えてます。覚悟のある人は自己責任でどうぞ(笑)

風邪をひいた時は現地の薬を飲んでいた

同じ宿にいる旅人から「現地の病気は、現地の薬を飲んだほうが治るよ」とアドバイスされ、薬局で薬を調達して飲んでいました。

堀さん:国にもよりますが、現地の薬は何が入っているかわらかないため、服用しないほうがいいでしょう。小麦粉みたいな薬が売られている国もあるし、安全性が確かめられていないような薬も売られている国もあります。また、インドではいろんな薬が混ぜられて作られているということも聞いたことがあります。普段から飲み慣れている薬を持って行くことをオススメします。

今思えば、どんな薬かわからず飲んでいたとはなんとも怖いことをしていたと思っています。しかも副作用を考えずに飲んでいました。きちんと自分の体にあった薬を持参しておくことが重要なのですね。そして、体調があまりに悪いようだったら現地の医療機関にかかることも大切ですね。保険で提携している病院であればキャッシュレスで診察してもらえます。保険に加入していないと、高額の医療費を自分で支払わなければいけなくなります。

タトゥーやネイルをする

Wikimedia commonsより転載

海外でしかできないオシャレもあります。ヘナやネイルを楽しんだり、非日常の雰囲気からタトゥーをしたり。しかし、これらも要注意です。

堀さん:ネイルケアをするときに甘皮の処理などの器具をそのまま使いまわしているのを見たことがあります。器具の使いまわしをすると、感染症にかかるリスクが高くなります。タトゥーの場合、針は使い捨てでも、インク壺は共有している場合があります。実際に、ネイルケアやタトゥーによるB型肝炎やHIVの感染事故が起こっています。

器具にウイルスや細菌がついたまま処置が行われると想像しただけでゾッとしますよね。海外でしかできないオシャレというのはもちろんありますが、やるとしても衛生管理の整ったところでやるのがベターでしょう。

ロマンスにはご注意を!性感染症

旅行をしているときは、思わぬロマンスもあります。性感染症の危険性もあるため、性行為をするときはご注意を。ちなみに、僕にはちょっとしたロマンスさえありませんでした。ある意味悲しい。

堀先生:海外にはそういうことを目的にして行く人もいる。行為をする時は品質の高い日本製のコンドームを使用するなど気をつけたほうがいいでしょう。

ここまで、ざっと海外滞在中の危険ポイントを紹介していました。

この他にも、「野生動物に触らない」とかいろんなポイントに注意しなければいけません。堀さんは「動物とは目を合わせないように」とアドバイスしているそうです。が、これだけ注意しても、十分とはいえません。渡航前のワクチン接種を忘れてはなりません。

海外渡航前にはワクチン接種をオススメ

厚生労働省検疫所FORTHのウェブサイトで、どのワクチンを接種すればいいか確認することができます。渡航場所によって打たなければいけないワクチンの種類がかわってきます。参考までに、僕が南米に行く前にうったワクチンをご紹介。

全て接種するのに、5万~6万円かかりました。しかも狂犬病に関しては、期間を空けて3回も打たなければならないので、1ヶ月もかかりました。費用も時間もかかるため、アジアやヨーロッパに行くときには打ちませんでした。堀さんによると「ビジネスミーティングで海外に2日間滞在するだけなら打たなくてもいいかもしれないですが、田舎や自然に囲まれた場所にところに行くのであればワクチンは必要。何を目的にしていくのかで判断したほうがいいでしょう」とおしゃっていました。ワクチン接種により副作用がでてしまうこともあるため、お仕事の状況によって接種するのが難しいかもしれません。しかし、上記の感染症は病原性も高く、命に関わります。もしものことを考えて極力ワクチンで予防するのがいいのでしょう。

さらに堀さんは、赤ちゃんや子どものころに麻疹(はしか)などの基本的なワクチンを打ったかどうかも確認した方が良いといいます。国によっては、今も蔓延しているからです。母子手帳があれば、自分が何を打ったのか確認できますが、不明の場合でも血液検査でわかります。でも検査にはお金がかかるし、結果を聞くために、再度、クリニックに行く必要があります。堀さんは、「不明だったら(検査をせずに)打ってしまうのも手です」とのこと。

しかし、滞在中に気をつけたとしても、ワクチンを打ったとしても、それでも感染症にかかるときはあります。そこで、特に注意してもらいたいときが帰国時です。

帰国時に体調が悪くなったらどうすればいいの?

堀さんは「帰国時に体調が悪くなったら検疫にある健康相談所によることをオススメします。感染症にかかっていることがわかったら、病院への紹介状を書いてもらえます。そうすると治療環境の整っている病院を紹介してくれるし、費用も安くすみます。」とおっしゃっていました。体調が悪いと、いち早く家に帰って休みたい気持ちになってしまいますが、検疫によったほうが私たちにとってメリットが大きいのです。

また、検疫によることは「国を越えて感染症を持ち込まない」という意味でも重要です。番組内でも紹介しましたが、昨年末から今年の3月にかけて、アメリカではしかが大流行しました。米国疾病予防センターは「はしかウイルスは海外旅行者によって持ち込まれた可能性が高い」と発表していました。タイプにもよりますが、感染者1人が入ってくるだけで、感染が一気に広がってしまうケースがあるのです。特に、西アフリカで大流行したエボラウイルス病のような重篤な病気であればあるほど注意が必要です。1人1人がウイルスを「持ち込まない、持ち出さない」ことを意識する必要があるのです。

海外旅行をするだけで気をつけるポイントがいっぱいですね。

「これだと注意、注意、注意だらけで海外旅行に行っても全然楽しめないじゃん」と思ってしまうかもしれません。

これは僕の個人的な考えですが、路上で食べ物を買って食べたり、川を泳いだり、ある程度「チャレンジャー」なことをしても良いと思っています。でないと現地ならでは楽しみが半減してしまいますからね。でも、チャレンジャーなことをするには「ワクチン接種をすること」「どんなところに感染症のリスクがあるか知っておくこと」「かかってしまったときにはどう対処するか」は必ずおさえておく必要があります。

そういった対策をしていれば、

ちょっとした冒険も許されるのではと思っていますし、みなさんの旅行ももっと楽しくなるはずです。

感染症には気をつけながらも、
アクティブに海外旅行をお楽しみください!

世界は楽しいですよ~

アメリカのテキサスにて 大自然をバギーかけめぐる(2008年8月撮影)

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