"みらいのかぞく"を考える~LGBTにみる多様な家族像

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「"みらいのかぞく"を考える~人の心・制度・科学技術」のディスカッションパート後編です。

ディスカッションパート前編はこちら

LGBTの1人、塚本紹史さんに将来どのような家族を持つことを希望しているか、子どもを持つときに生殖補助医療などの科学技術を使いたいかお話を伺いました。

20160608hiei_1.png塚本紹史さん

塚本さんの見た目は男性。恋愛対象が男性であることから、周りからLGBTの「G(ゲイ):男性同性愛者」と考えられることが多いそうです。しかし、「自分の心は女性だと思っている」と述べているように、心と体の性が一致しない「T(トランスジェンダー):性同一性障害」と呼ぶほうが適切なのかもしれません。

塚本さんは、将来的に「子どもがいる家族」を持つことを希望しています。「できるだけ遺伝上のつながりがある子どもが欲しい」と考えていますが、恋愛対象が男性のため自然に子どもを授かることはありません。そのため、塚本さんは一般的でない結婚のかたちをとること、人工授精などの生殖補助医療を用いて子どもをつくることを望んでいます。


塚本さんが考える家族像について


塚本さんはいくつかのパターンを想定しています。

1つ目は、男性と結婚したくないと考えている仲の良い女性と"友情結婚"をするパターン。恋愛感情はありませんが、一緒に暮らし、子育てができるような女性がいれば家族になれると言うのです。女性とはセックスできないため、人工授精で子どもをつくることを考えています。

2つ目は、自分と恋愛関係にある男性パートナー、レズビアンカップルの4人で家族となるかたち。子どもをつくるときには、自分かパートナーのどちらかの精子を提供し、レズビアンカップルのどちらかに人工授精をする方法をとります。パートナーと自分、どちらの精子を使うかを選ばなければならないため、必ずしも自分の遺伝子を受け継いだ子どもを持てるかはわかりませんが、少なくともどちらか一方の遺伝子を残すことができます。レズビアンカップルとの間柄は友情結婚に近いものになるかもしれません。

3つ目は、自分と恋愛関係にある男性パートナー、男性と結婚しなくてもよいと考えている女性の3人で家族をつくることです。恋愛対象ではない女性が入っていますが、「子どもを産むからだの提供」ではなく、自分とパートナーがともに家族と思える女性がいれば一緒に家族を築きたいと考えているようです。

私は、「友達と暮らせればそれは家族である」ことや「3人以上のおとなで家族をつくる」という考えを聞いたことがありませんでした。最初は「そんな家族、ありなのか?」と思いましたが、恋愛感情だけでなく、一緒に生活していて心地良いと思える関係性や、子どもを育てていこうという目的意識があれば、家族と言ってもいいのかなとも思えました。

塚本さんが紹介してくれた家族像は子どもをつくることを前提としたものでしたが、皆がそう思っているわけではありません。会場にはさまざまなセクシャリティーの方が集まっており、それぞれの思いを語ってくれました。


他にどんな考え方がある?


自らをゲイと紹介する参加者は「結婚しない人生もあり」と考えており、「仕事で自分の足跡を残していきたい」と自身の考えを述べていました。家族以外のところに生きる意味を見いだしているのです。

この参加者に子どもを持ち方について尋ねてみたところ、「子どもは愛の結晶であるというイメージがあるため、生殖補助医療を使ってまで持ちたいとは思わない」。しかし、「困っている子どもがいれば養子として迎えいれたい」と子どもを持つことには肯定的で、同時に「子どもを持たない選択肢も含めて考えている」とも述べていました。

体が女性で、心は男性寄りという参加者も「子どもを持たない選択肢」に同意し、「社会としてもっとあたりまえになってほしい」と主張していました。

前回のブログでもお伝えしましたが、「子どもがいること」を"普通"の家族と考えがちですが、そうではない多様な価値観がたくさんあります。これはLGBTの方々に限らず、男女間のカップルにも同じことがいえるのではないでしょうか。

ある女性参加者は、自身のジェンダーと社会制度との狭間で悩むトランスジェンダーの友人の話を共有してくれました。

「心の性にあわせて戸籍を変えようとすると、(制度上)体の性も変えないといけなくなる。その場合、生殖機能が完全に奪われてしまうためどうしたらいいかわからない。」

現行の日本の婚姻制度ではカップルの戸籍上の性別は男女ペアでなくてはいけません。体が女性で心が男性のトランスジェンダーの方が、異性愛者の女性と結婚したいと考えたときには、戸籍をかえるため性転換手術をしなくてはなりません。その場合、生殖機能を失うことになります。

渋谷区や世田谷区など一部の自治体で同性パートナーシップ制度が認められるようになったものの、婚姻制度や戸籍制度があることによって、生きづらさを感じている方々がいるのです。

講師の松尾先生はその状況について、「現在の社会は、新しい多様な方向に向かっているけれども、どういう家族を作っていけばいいのかという理想像が見えていない」と社会としての受け入れ体制や制度が十分に整っていないことを指摘していました。そして、受け入れていく・考えていくために「語り合っていくこと」の重要性を説いていました。

AIDと同様、解決策はみえずモヤモヤしたかたちで議論は終わってしまいましたが、1人ひとりが望む「結婚の仕方」や「子どもの持ち方」が、本当に多様であること、そこにはたくさんの課題があることに気づかされた方も多かったのではないでしょうか。

どうすれば誰もが排除されない社会がつくれるのか、まだまだ答えにはほど遠いところにいますが、今後の活動を通じて皆さまと一緒に考えていきたいと思っております!

以上、ここまで「"みらいのかぞく"を考える~人の心・制度・科学技術」ディスカッションパートのまとめをお送りしてきました。長くなってしまいましたが、最後までお読みくださりありがとうございました!

ですがっ!!実は、まだ終わりではありません・・・。
キックオフイベント後に、参加者限定の特別ワークショップも開催していました。その様子を科学コミュニケーター田中がリポートしてくれます。

お楽しみに!

2月11日「みらいのかぞくを考える~キックオフイベント」の報告
文化人類学から見る家族のかたち
科学技術と生命倫理
精子提供による新たな家族のかたち
LGBTに見る多様な家族像(この記事)
特別ワークショップでは Coming Soon!

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