注射で血管に空気を入れられました

本日はいつも書いているSFブログをお休みし、最近の体験談を書きます。実は私、人生で初めて入院を経験してしまいました。顔面神経麻痺といって顔の左半分が麻痺して動かなくなってしまったのです。といっても特に痛いわけでも気分が悪くなるわけでもなく、入院自体に苦痛はありませんでした。

ですが一つだけ、どうしてもいやで仕方ないものがありました。それは一日何度もやってくる注射です。

え、たかが注射じゃんと言われそうな気がしますがそうはいきません。入院中は針を刺しっぱなしにしていて、写真にあるコネクタのようなところから新しい点滴や注射器を入れ替え、次々に様々なものを体内に入れていきます。ですが、私の入院した病院では、別の注射や点滴に変える際になんと空気をほとんど抜いてくれなかったんです!!

私は血管から空気が入ると死ぬと聞いていました。大学時代にマウスを使った実験をしていましたが、空気抜きが甘い状態でマウスに注射すると、マウスはすぐにぴたっと動かなくなり、死んでしまっていたのです。自分の不注意で哀れな死を遂げたマウスを見ると、とても悲しい気持ちになっていたものです。

が、なんと私の入院した病院では、人間である私への注射に、ほとんど空気抜きの作業をしてくれなかったのです。

佐尾:「こ、これ空気入ってますけど大丈夫なんですか?」

看護師さん:「あ、これくらいなら大丈夫でーす。」

会話終了・・・。

まさにカルチャーショックでした。

空気はじわりじわりと管を通じてやってきて、やめてくれーという私の心の悲鳴を無視してブチッという鈍い感覚とともに血管内に入ります。

入った空気でマウスのようになったら・・・。気が気でなかったです。

そこでお見舞いに来てくれた、医学のバックグラウンドを持つ科学コミュニケーターの小林に聞いてみました。すると「10ml以上の空気が一度に入らなければ大丈夫と聞いたことがある」とのこと。これで少しほっとしました。

ですが私も科学コミュニケーターですのでそこは少し自分でも調べてみました。

空気が血管内に混入すると空気塞栓(そくせん)症というものを起こすことがあるらしいです。塞栓とはなんらかの塊により血管がふさがれ、血流が流れなくなることですが、中でも空気の混入が原因のものを、空気塞栓症というそうです。

入り込んだ空気が少しなら血液中に溶け、症状もほとんどないようです。ただし多量の空気が入って、例えば心臓に到達した場合には、血液を送りだすポンプ機能が失われるなど、深刻な事態を招くとのこと。

ではどれくらいなら大丈夫なのか? 残念ながら人体実験はできないので、正確な量はわからないようです。症状がでる推測値も文献によってもまちまち。しかし少なく見積もっても普通の静脈注射なら10ml程度の空気が入ったくらいでどうこうなるレベルでないことは間違いなさそうです。10mlの空気といえば相当な量なので、一度に入ることはまず間違いなくあり得ない。ということでやはり看護師さんや小林の意見は正しかったようです。

みなさんも病院で空気を入れられそうになっても、静脈注射であればちょっとくらいなら問題ないようなので、大目に見てあげてくださいね。

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