水陸両用!?ワニの心臓はバイパス済みの切替式。

以前、「あの花」 (リンクは削除されました)ならぬ「あのワニ」 (リンクは削除されました)を書かせていただいたぶっちーです。 突然ですが、そんな私からみなさんへクーーーイズ!!! このワニは、ぶっちーがシンガポールで撮影したものです。どこにいたでしょう?

正解は......

なんとほぼ海でした!!!

スンゲイブロウ湿地保護区という場所で、マングローブが生い茂る汽水域です。まだ仔ワニですが、おそらくイリエワニと思われます。イリエワニは以前、別のブログ (リンクは削除されました)でも紹介しましたが、成長すると5mを超す世界最大のワニです。

えー!ワニって淡水に棲んでいるんじゃないの??と思われたそこのあなた。 イリエワニは、漢字では入江鰐、英語ではSaltwater Crocodile("海水のワニ"の意)と書きます。 そう!イリエワニはその類い希なる遊泳能力で、時折、海を渡ることで知られたワニなのです! 普段はオーストラリアや東南アジアの淡水域に棲むイリエワニですが、海を渡り、なんと日本の奄美大島や西表島、果ては八丈島で見つかったことさえあります。 さて、海を渡るのはイリエワニくらいですが、現生のワニ全25種はみな遊泳能力に長けています。高い遊泳能力を生む体の特徴はいろいろあります。オールのような尾だったり、水かきだったり。 しかし!! あえて言おう!その最大の秘密は心臓にあると!!! まず「心臓」についておさらいです。 図は人間の心臓ですが、人間含め哺乳類の心臓は、2心房2心室(右心室・右心房・左心室・左心房)からなり、 体中→右心房→右心室→肺→左心房→左心室→体中 という一方向の流れで血液を循環させています。

人間の心臓のつくり(Wikipediaより) (C)Wapcaplet and Yaddah (translated by Hatsukari715)

心臓から体への流れを体循環といい、体へ血液とともに酸素を送る役割を果たしています。対して、心臓から肺への流れを肺循環といい、体で酸素を消耗した血液に肺で酸素を補給させる役割を担っています。 では、ワニの心臓はどうなっているかと一般的な爬虫類の心臓(2心房1心室)と違って、我々哺乳類や鳥類と同じ2心房2心室の心臓を持っています。 と、同時に他の爬虫類と同じように左右両方の右心室と左心室の両方から、体循環へつながる大動脈弓が出ています。 なおかつ、その動脈がパニッツァ孔と呼ばれる部位で、バイパスされているのです!!

ワニ類の心臓のつくり

このバイパスと左大動脈弓、肺動脈についている弁が開閉することによって、水中と陸上で血液の流れを切り替えることができるのです!!!

大渕希郷 著『新ポケット版学研の図鑑 爬虫類・両生類』より改変

赤は酸素に富んだ動脈、青は酸素を使った静脈の流れを表しています。 つまり、水中では肺呼吸ができないので、無駄な経路である肺循環をバイパスし、体内の血液に残された酸素を効率よく使い切ることができるようになっているのです。 そう! なんと潜っている間は、体循環だけを行っているのです!!! これにより、長時間の潜水が可能となっています。 (別の方法で肺循環をバイパスさせる2心房1心室の心臓をもつオオトカゲなどもいます。) すごくないですか???? 当館館長の毛利は、「科学とは、人類が生き延びるための知恵や知識を得るためにある」と申しておりました。 三畳紀(およそ2 億5000万年~2億年前)に現れ、恐竜が絶滅した6500万年前の大量絶滅も生き延び、その後の哺乳類が繁栄する現代でもなお「水辺の捕食者」の生態的地位を守り続けているワニたち。 彼らのその「生き延びてきた知恵」から学ぶことも多いのではないでしょうか?

☆ぶっちーの過去ブログ☆
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