カエルの威を借るヘビ。

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みなさん、大変ですよ!!

もうすぐヘビ年が終わってしまいますよ!!

というわけで、今年最後のヘビ話をば。

ぶっちーです。

 

さて、タイトル「カエルの威を借るヘビ」をご覧になって、

「えっ!?逆じゃないの??」

と思ったそこのあなた!!!

 

そうです。

「虎の威を借る狐」とは、力あるものに頼って威張る小者のこと。

 

「ヘビににらまれたカエル」に表現されるように、食うヘビが力あるもので、食われるカエルが小者のイメージですよね??

 

ところがどっこい!借りるのは、力があるはずのヘビなのです。

 

 

●借りるヘビ

ヤマカガシ Rhabdophis tigrinus tigrinus

 

ヤマカガシ

ヤマカガシは個体によって色彩が大きく異なることがある。 (C)藤田宏之

 

 

●借りられるカエル

ヒキガエル類(アズマヒキガエルBufo japonicus formosus、 ニホンヒキガエルB. j. japonicus、ナガレヒキガエルB. torrenticola

 

アズマヒキガエル

写真はアズマヒキガエル。 (C)藤田宏之

 

 

●借りるもの

ガマの油(※)

ガマの油

(C)土井敏男

※ガマの油とは、「ヒキガエルからにじみ出る乳白液(毒液)を薬にしたもの」ですが、写真はその名前をとったお土産商品です。少なくとも戦後は医薬品規制により、ガマの油(蟾酥:せんそ)が含まれている商品は一般には売られていません。

 

 

さて、この威を借りる方のヘビは、世界的にみてもとても珍しい毒蛇なんです。何が珍しいって、なんと毒を2つ持っているのです!!

 

1つ目の毒は口にあります。唾液腺が変化したデュベルノア腺から出る毒液が牙を伝って、噛みついた相手に注入されます。

 

2つ目の毒は首にあります。首にある頸腺から毒液が分泌されます。

 

さて、今日の話はこの2つ目の毒です。一つ目の毒は唾液腺が変化したものから分泌されるわけですから、100%ヘビの自前です。

 

ところが首の毒は、元はヒキガエルの毒なのです!

 

ヤマカガシ図1

解剖図解:ヤマカガシの毒

イラスト提供:京都大学 准教授 森哲(もり・あきら) (C)森哲

ヒキガエルはいじめると、耳の後ろにある耳腺を中心に体中から白い液体(俗に言うガマの油)を出します。これが眼に入ったりすると激しい炎症を引き起こします。皮膚の弱い人は、皮膚炎を起こすこともあります。

 

そのヒキガエルをあえて好んで食べるのが、ヤマカガシなのです。ヤマカガシは食べた毒を頸腺に蓄えるのです。

 

 

そして、どうやって使うかと言うと…

 

こんな感じ!!

 

やまかがし防御

(C)森哲

 

頸腺に強い圧力がかかると中の毒液がはじけ飛ぶのです。そこで写真のように、その頸腺を見せつけたり、打ちつけたりしてくるのです。

 

 

 

ちなみに本家ヒキガエルの防御姿勢との比較。そっくりですね!

 

ヤマカガシとヒキガエル

かたや耳腺を、かたや頸腺をみせる。これでひるんでくれれば毒液を使わずに済む。 (C)森哲

 

 

ではヤマカガシは毒牙を持つのに、なぜわざわざヒキガエルからさらに毒液を借りるのでしょうか???

 

実は、皆さん誤解していると思うのですが、ヤマカガシに限らず、毒蛇の毒牙というのは獲物が暴れないように弱らせるためのものなのです。転じて、防御のために使う場合もありますが、それは本来の使い方ではないのです。

 

ところが、ヤマカガシは防御専用の毒器官を持っているのです。

 

 

 

おもしろいことに、この毒は母親がすでにヒキガエルから借りていれば、その子どもの頸腺には産まれながらに毒があるようです。

 

「誰が返さないと言った?永久に借りとくだけだ!」と言ったジャイアンを越えるレンタルっぷりです。

 

しかし、借り物であるが故にヒキガエルの生息していない島のヤマカガシは頸腺毒を持ちません。そして、首に毒がないので、首を見せることもしません。

 

 

おなじ種類のヘビなのに、土地が変われば生活が変わる。人間と同じですね。

 

地球にすんでいるのは人間だけでないことに思いを馳せつつ、みなさん、よいお年を。

 

 

◆謝辞◆

取材その他協力:森哲(京都大学)

写真提供:土井敏男(元・神戸市立須磨海浜水族園)、藤田宏之(埼玉県立 川の博物館)

ガマの油に関しては、東京都薬剤師会・北多摩支部のサイトにおもしろい記事が載っています。

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