天然酵母を育ててみました。

天然酵母を育ててみました。~まずは「酵母」を知らねばならぬ~

未来館がある東京は、どんよりした天気が続いています。この時期は、気持ちまでどんよりさせる「カビ」が姿を現してきます。

とはいえ、湿度が高いこの時期は微生物の生育に最適。ならば、私たち科学コミュニケーターも微生物を観察してみよう!ということに。

志水:微生物は観察したいけど、カビを見るのもなあ......。

書店をブラブラしていたそのとき、書棚の一コーナーに目が行きました。

MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店にて

並んでいたのは、「天然酵母」を使ってパンをつくるレシピ本。酵母とは、微生物の一種で、パンやお酒をつくるのに使われています。パン作りで一般的に使われるドライイーストも酵母です。酵母はさまざまな食品の表面に付着しています。食品の糖分を栄養にしているのです。その酵母を取り出せれば、ドライイーストと同じようにパンが焼けるはず。そのような酵母が「天然酵母」と呼ばれているようです。

志水:どうせ見るなら食べ物づくりに役立つ微生物がいいよね!

と、いうわけで、私たち科学コミュニケーターが天然酵母を観察して、パンを焼くことにチャレンジしてみました。

夏休みももうすぐです。自由研究のご参考に。

志水:そもそもドライイーストをちゃんと見たことがないなあ......。

まずはみんなで、酵母の筆頭、ドライイーストを観察することにしました。

30℃くらいのぬるま湯を100ml用意して、お砂糖を小さじ1杯、ドライイーストを1gくらいパラパラと入れました。 待つこと2時間。そろそろ酵母が活発に動き出しているころです。 顕微鏡で見てみましょう。

まんまるのかわいらしい奴ら。この一粒一粒が酵母です。 直径5マイクロメートル(1mmの200分の1)と目には見えない大きさです。

酵母は、生き物の分類でいうと「菌類」の一種です。カビやキノコも菌類に入ります。 同じ「菌」という漢字を使う生き物に「細菌」がいますが、「細菌」は菌類ではありません。ヨーグルトに含まれる乳酸菌が細菌の代表的なものです。

細胞の中に核膜(DNAを包む膜)という構造がない生物を「原核生物」、ある生物を「真核生物」とよびます。 原核生物と真核生物は、生物のもっとも基本的な分類です。 細菌は、酵母を含む菌類とは全く別の仲間だということがわかりますね。

これまでに1000種類以上の種(しゅ)が知られています。 しかし、パンをつくる酵母(=ドライイースト)とお酒をつくる酵母が同じ種だ、ってご存知でしたか? どちらも、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)という種です。お酒にも色々な種類がありますが、ビールもワインも日本酒もみーんなサッカロマイセス・セレビシエによってつくられます。先ほどのドライイーストもサッカロマイセス・セレビシエです。全く風味が違うパンとお酒が同じ種の酵母からできるなんて不思議ですよね。

(酵母の系統は異なります。犬で例えると、柴犬とチワワの違い、といったところです。)

いろいろな食べ物から「天然酵母」をとった場合、サッカロマイセス・セレビシエ以外の種の酵母がとれることがあります。どんな酵母がとれるかは完全に運任せ。

志水:珍しい酵母がとれたら、面白いなあ。

そんなわけで、未来館「発酵部」発足です!

科学コミュニケーターが、これには酵母がすんでいそう、と思った食材を持ち寄りました。

レーズンに酒粕、すりおろした人参に、冷蔵庫で数か月放置されたプルーン(大丈夫か!?)、と、よりどりみどり。

天然酵母を育てる方法は簡単。 ビンに食材と水を加えて混ぜるだけ。(糖分が少ない人参には、砂糖を入れました。) 一日一回蓋をあけて、酸素を入れてあげます。

さあ、みなさんもやってみましょう!

......と言いたいところなのですが、実際にやってみると思わぬトラブルが発生して大変だったのです!

発酵部はどうなってしまうのか?

気になるその後はまた今度。

(この笑顔が1週間後凍りつくことになろうとは・・・)

※すぐにでも天然酵母をとってみたい!という方のために、成功したレシピを載せておきます。

①500mlの密封できるガラスビンを沸騰したお湯の中で3分間殺菌します。

②レーズン(オイルコーティングされていないもの)100g、水(市販のペットボトルに入った飲料水)100mlをビンに入れます。

③24℃の室温に置きます。(室温は30℃を超えなければ問題ないでしょう。1日に1回ふたを開け、酸素を入れます。ふたを閉めて、上下に軽く振りましょう。)

④1週間ほどで泡が出てきて、アルコールの香りがしてきます。

パン作りのレシピはまたの機会に。

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