ハイエナの出産は、男性も共感せざるを得ない大変さだ。


みなさん、こんにちは!ぶっちーです!!

突然ですが、今日はぶっちーがブッチーの話をします!!

そのブッチーの正体はこちら!

20150312_ohbuchi01_ブッチー.JPG

(C)高知県立のいち動物公園

ブチハイエナ Crocuta crocutaです。

アフリカのサバンナに暮らす肉食獣です。この個体の名前は、ブッチーです。奇遇にも、私のあだ名と同じ。ややこしいのでハイエナの方はカタカナ表記でブッチーとします。


ここで、クイーズ!!!!!!!!

ハイエナのブッチーはオスでしょうか?メスでしょうか?




正解は......オスでした!!




次に見ていただくのは、メスのエナです(寝転んでいる方)。

20150312_ohbuchi02_エナ.JPG

(C)高知県立のいち動物公園

ん!?

んんんんん!!??

おまたに何か立派なものがあるようにも見えます。

拡大してみましょう。


まず、ブッチー♂のあそこ。

20150312_ohbuchi03_オス.jpg

(C)高知県立のいち動物公園

黄矢印:陰茎、青矢印:陰嚢、橙矢印:肛門



次に、エナ♀のあそこ。

20150312_ohbuchi04_メス.jpg

(C)高知県立のいち動物公園



??

オスにもメスにもおちんちんとタマタマがある???


実は、ブチハイエナの雌には、おちんちんのようなものがあります(黄矢印)。これは、メスの陰核が発達したもので、擬陰茎と呼ばれるものです。長さは、平均で17cmもあります。

では、その下にあるタマタマのようなもの(青矢印)は何かというと、これは擬陰嚢と呼ばれる器官で中には脂肪がつまっています。




さらにこの写真のうち、右2頭をご覧ください。2頭のうち、右からメス、オスです。

20150312_ohbuchi05_陰茎と擬陰茎.JPG

(C)高知県立のいち動物公園


そうです、この擬陰茎は勃起もできてしまうのです!!

さて、ここで素朴な疑問1。

コレ、おしっこはどう出るの?


擬陰茎の根元から先端まで尿道が通っています。ですのでオスと同じように、この突起物の先からおしっこが出ます。



続いて素朴な疑問2。

コレ、交尾のときはどうするの??

メスが筋肉の力で擬陰茎をお腹の中へひっこめ、一時的な膣をつくります。

つまり、交尾の主導権は完全にメスの側にあるということです。

もしかしたら、1枚目のエナの写真で擬陰茎があまり目立っていないのは軽く引っ込めている状態なのかもしれません。


もうひとつ素朴な疑問3。

コレ、出産のときはどうなるの????

はい、出産間近のエナの写真です。

20150312_ohbuchi08_出産前.JPG

赤丸の部分、擬陰茎の根元がふくらんで来ているのがわかりますか??

そうです、擬陰茎は産道も兼ねているのです!!!!

男性の私には、実感をもって出産の苦しさ・大変さはわかることはないかと思っていました。しかし、ブチハイエナの出産に至っては、まさに痛いくらいにその苦しみの想像がつきます。ブログをご覧になっている男性諸氏も痛みを共感できるのではないでしょうか?

もしも、自分のおちんちんから赤ちゃんを産み出さなければならないとしたら......

想像しただけでもつらいですね。


このような細く長い特殊な産道を持っているがゆえに、初産の仔の60%が死産になるそうです。母親の方も、5頭に1頭が初産の傷が原因で死に至ります。


死産を免れたとしても、赤子が産道を抜けきる直前に、擬陰茎は裂けてしまうそうです。一度、裂けたら、そこはもうふさがらず、擬陰茎の下側にピンクの亀裂ができるそうです。研究者いわく、そうなるとメスを見分けるのは容易になるとか。



ここで素朴というよりも根本的な疑問。

そもそも、なぜブチハイエナのメスには、立派な陰茎様の突起物があるのでしょうか?そして、わざわざ危険を冒してまで、それを通して出産するようになったのでしょうか?

一説にはブチハイエナの社会構造が関係していると言われています。ブチハイエナは、メス優位な社会を形成します。身体もメスの方が大きく、群れを守るのもメスの仕事です。それには、必要なときには闘いもいとわない攻撃性が必要です。そのため、メスであっても、胎児期に攻撃性を誘発する男性ホルモンをたくさんつくると考えられています。その影響で、メスの生殖器の外見もオス化してしまうという説です。

ブチハイエナと同じようにメス優位社会を形成し、メスが巨大化した陰核をもっている哺乳類がいます。それは、ワオキツネザルです。やはりワオキツネザルも群れを守るのはメスの役割です。なるほど、男性ホルモン増加によって攻撃性を得た副作用で、陰核が巨大化するというのは確かにありそうです。

しかし、マダガスカルに棲むネコ目(食肉目)の肉食獣フォッサは、単独で暮らすのに擬陰茎を持っています。それも、若いメスだけが持っているのです。これは、若いメスが力の強いオスに無理矢理交尾されるのを避けるたけではないかと考えられています。

他にもメスに擬陰茎を持つ哺乳類は少数ではありますが、知られています。ただし、そのいずれも、なぜ擬陰茎を持つのか、その理由についてうまく説明できていません。

私見ですが、ブチハイエナの場合は単に男性ホルモンの副作用で擬陰茎ができたというだけでなく、メス優位社会をより堅固なものにするために擬陰茎が発達したのではないかと思います。なぜなら、ブチハイエナの場合、交尾する際にメスが擬陰茎をひっこめて膣をつくらねば、交尾は成り立ちません。繁殖において、実質的にメスの優位が不動のものになるわけです。

しかし、母子ともに危険を冒してまで、擬陰茎を通して出産する理由はよくわかりません
。そんな生態が生き延びるのに有利とは思えませんが、もしかすると生存に不利ではあるが、淘汰されるほどのことでもなかったということだったのかもしれません。あるいは初産を乗り越えられるメスだけが生き残るように、今まさに淘汰がかかっているのかもしれません。




そんな、いまだなぞの多いブチハイエナの生態には魅力を感ぜざるを得ません。

いやー、動物ってほんとうにおもしろいですね!この地球で生きてゆく生き方が、ひとつじゃないことを教えてくれます。

それではまたの機会に動物の話を!

謝辞

本ブログの写真はすべて高知県立のいち動物公園および同園の木村夏子さんのご厚意によります。

この場を借りて厚く御礼申し上げます。

20150312_ohbuchi07_ダイズアズキ♀.JPG

(C)高知県立のいち動物公園

帝王切開にて、無事にエナから産まれた双子のアズキとダイズ。父親はブッチー。どっちもメスです。そして、飼育担当者の木村夏子さん。


主な参考文献

キャサリン・ブラックリッジ 『ヴァギナ 女性器の文化史』 河出文庫、2011年

Christine M. Drea and Anne Weil. External genital morphology of the ring-tailed lemur (Lemur catta): Females are naturally "masculinized". Journal of morphology 269:41-463(2008)

など

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この記事への4件のフィードバック

9月に三度目のマサイまらに行くのにマサイマラにいる動物の復習をしていたところ、たどり着きました。
すごいです!日本では、嫌われ者のようなハイエナですが、あの土の巣から出入りしている姿が愛らしくなり、ちょっぴり好きになりかけていましたが、更に魅力が増しました!
素晴らしい情報をありがとうございますm(_ _)m

onyanyaさま

コメント、ありがとうございます!onyanyaさんのハイエナへのご興味や良い方向に増したご様子で、私もブログを書いた甲斐がございました。ハイエナは、生態・行動・形態ほか、とてもおもしろい動物です。
また、マサイマラに行かれるとのこと、とてもうらやましいです!ハイエナは4種知られているのですが、そのうちのアードウルフはシロアリを主食としている一風変わったハイエナです。9月の旅で、ブチハイエナと合わせて探してみるとおもしろいかもしれません。

初めまして。
i以前からメスのハイエナにもオスと同じく陰茎と陰嚢(に似たもの)があることは知っていましたが、出産もそこからと聞いて、え?って思っていました。
正直、人間のを想像しても(笑)あの場所から産めるのか、産まれるまで通り道が長いし、裂けるんではないかと。
でも、他の動物のメスのような膣や産道の話は聞いたことがなかったので、実際はどうやって出産するのかと不思議に持っていました。
実際はやはり裂けてしまうのですね。
このページに偶然にもたどり着き、本当にそこから産むんだと、納得しました。
また、実際のメスの性器も拝見できて、本当にオスにそっくりだと理解できました。
前に、海外から送られたハイエナが、つがいのはずがオス同士だったという話もありましたね。
外見では判断が出来ないからと。
ハイエナって、掃除屋とか横取りするってイメージが強いけど、本当はちゃんと自分たちで狩りもするし強いんですよね(笑)
長文になってしまいましたが、このページを読んだのは貴重な時間になりました。
ありがとうございました。

桐眞さま

とてもうれしいコメントをありがとうございます!

私自身、今回のブログを執筆するにあたり、リサーチを深めれば深めるほどにハイエナの魅力にとりつかれました。おっしゃるとおり、繁殖生態もさることながら、その暮らしぶりも非常に興味深い動物です。進化をみても、実はイヌ科よりも、ハクビシンなどを含むジャコウネコ科に近い動物であることがわかっています。

動物の世界のおもしろさが伝わったようで、執筆した甲斐がございました。

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