10分でわかるノーベル賞2011~生理学医学賞~


詫摩編集長から焚きつけられても、発表から原稿アップまで2時間もかかってしまった遅筆の小林です。

2011年のノーベル賞生理学医学賞は、残念ながら、日本人は受賞できませんでしたが、ブルース・ボイトラー博士ジュールズ・ホフマン博士のお二人が「自然免疫の活性化に関わる発見」により、ラルフ・スタインマン博士「獲得免疫における樹状細胞の役割の解明」により受賞されました!

 

そもそも免疫って?

たちの体を病原体から守るしくみ=免疫二度なしの現象と言われます。一度、かかった病気にはかからなかったり、症状が軽く済むからです。二度なしのしくみは、病原体をやっつけた攻撃部隊の一部(メモリー細胞)が体の中に残り、再び、同じ病原体に感染したときに武装化し、速やかに排除するためです。すなわち、その病原体に対して耐性を獲得したということで、獲得免疫と呼ばれます。

しかし、攻撃部隊は最初から武器をバッチリ持っていて、準備万端というわけではないので、今まで感染したことのない病原体に遭遇したときは、武装化するまでに時間がかかります。新兵を鍛え上げなければいけないんですね。

 

クイックスターターの自然免疫→スロースターターの獲得免疫

では、獲得免疫が立ち上がるまで、病原体たちはやりたい放題なのでしょうか?

そこで活躍するのが自然免疫。さきほどの、獲得免疫で活躍する攻撃部隊は、自分自分以外を区別し、自分以外の者に攻撃をしかけます。例えば、病原体に感染したときは、ウイルスや細菌の一部(タンパク質)を目印とし、「あっ!自分じゃないヤツが体の中にいる!」と認識すると、攻撃部隊が感染細胞や病原体をやっつけます。しかし、獲得免疫が区別するのは、あくまで自己非自己かです。臓器移植の際、他人の臓器が拒絶されてしまうことがあるのは、病原体のように悪さをするか否かではなく、自己か非自己かで免疫が見極めているからです。

ところが、自然免疫は、大きな意味で自己と非自己を区別する点では同じなのですが、タンパク質のような細かいレベルではなく、自分の体の成分か否かで見極めます。ヒトは持っていないけど、細菌やウイルスは持っている独自の成分を見つけたら、「あっ!ヒトじゃないヤツが体の中にいる!」と認識し、排除します。そして、先ほどの獲得免疫を開始するためにも自然免疫の反応が必要です。クイックスターターで、病原体を軽くやっつけ、次の本格的な攻撃につなぐ先発部隊が自然免疫。スロースターターだけど強力な武装をし、排除する部隊が獲得免疫のイメージです。

ジュールズ・ホフマン博士は、ショウジョウバエにおいて背中とお腹の向きを決めるToll遺伝子が壊れていると、カビに対する防御力が下がることを発見し、Toll遺伝子は感染防御にも働いていることを明らかにしました。写真はCell 1996;86:973-983より。

 

ブルース・ボイトラー博士は、正常マウスでは細菌の細胞壁の成分・リポ多糖(LPS)を大量投与されると死んでしまうのに対し、LPS投与で死なないマウスでは、ショウジョウバエのToll遺伝子によく似た遺伝子・Toll様受容体(TLR)に変異が起きていることを発見しました。この発見は哺乳類における自然免疫の解明のさきがけとなりました。イラストはJSTニュース2004年4月号より。

 

伝令部隊+指導教官=樹状細胞

しかし、目立つ攻撃部隊だけが病原体の排除に大切というわけではありません。自分じゃない者の侵入を伝える役、伝令部隊も大事な役です。自分と自分以外を区別する人相書き抗原と呼ばれるため、この伝令部隊は抗原提示細胞と呼ばれます。伝令部隊は、病原体やその一部を細胞の中に取り込み、消化したタンパク質(抗原)を細胞の外に出して、攻撃部隊(細胞傷害性T細胞、抗体産生細胞)や、攻撃部隊をサポートする応援部隊(ヘルパーT細胞)に伝えます。

その伝令部隊のひとつが樹状細胞です。樹状細胞は人相書きを伝える役でもあるのですが、ただの伝令役ではなく、新兵を鍛え、病原体をちゃんとやっつけられるように武装化させる“教官”役も兼ねているため、プロフェッショナル抗原提示細胞と呼ばれます。現在は、樹状細胞を患者から取り出し、試験管で培養&抗原を食べさせ、患者の体に戻してあげるワクチンもあるほど、免疫応答で樹状細胞は重要な役割を担っています。

ラルフ・スタインマン博士が発見した樹状細胞(マウス)。形が樹の枝の様であることからその名がつけられました。写真はJ Exp Med 1973;137:1142-1162より。

 

個性×連携=ハッピーな世界!

「自然免疫」「獲得免疫」のしくみは、一見、私たちの生活には関係なさそうですが、この2つの研究が進めば、病気の解明ワクチンへの応用につながり、多くの人が救われるでしょう。この記事は、自然免疫、獲得免疫、樹状細胞など、様様な役者がでてきて複雑でしたが、私たち人間にも同じことが言えるのではないでしょうか。個性を持つ様様な人がいる複雑な社会の中、お互いに協力すれば、不幸を少しでも減らし、豊かな世界を築くことができるかもしれません。

捕捉:10月2日に未来館で私が実演した受賞者予想では、京都大学・iPS細胞の山中先生、大阪大学・自然免疫の審良先生、そして、白血病の薬を開発したBrian Druker先生を紹介し、社内の勉強会で挙げた樹状細胞のラルフ・スタインマン先生は時間の都合でみなさんに紹介しませんでした・・・。あのとき言っていれば、今ごろ、みなさまから尊敬のまなざしをば。。。

追記(10/4):スタインマン博士は残念ながら9月30日に逝去されていたとのことです。ご冥福をお祈り申し上げます。

ノーベル賞の“3人目”

 

<関連サイト>

ノーベル賞公式ページ(英語)

【速報】2011年ノーベル生理学医学賞

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この記事への2件のフィードバック

フォントとカラーが読みにくいです……。すぐのまとめ,お疲れ様です。

smfafaさま、申し訳ございません。

フォントサイズを統一し、カラーは黒、赤、青、緑の4色から黒、赤、青の3色に直しましたが、いかがでしょうか?

実は、赤字は強調、青字は免疫に出てくる役者たちと、色分けには狙いがあったのですが、見づらかったでしょうか?

今後も忌憚のない意見をお寄せいただければありがたく思います。

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