爆発から生まれたノーベル賞

こんにちは!

いよいよ明日からノーベル賞発表の日です。みなさん、科学コミュニケーターのブログやニュース等をご覧になって受賞者の予想をたてましたか?今回はノーベル賞の発表を前に、この賞の設立者であるALFRED NOBEL (アルフレッド・ノーベル)について紹介します。

― アルフレッド・ノーベル ―

「技術者・中背・茶色の髪・卵形の顏・健康な肌・青い目」

1863年の旅券登録にはこのような記載があったそうです。右の写真は白黒で色までは分かりませんが、偉人の雰囲気が感じられます。

性格は人とのつきあいを楽しむ素晴らしい人だった」と、第三者は言っていたようですがノーベルが54歳(1887年)のときに兄に宛てた手紙には自分自身のことをこのように語っていました。

「この惨めで半病人のアルフレッド・ノーベルはこの世に産声をあげたときに、人道的な医師によって窒息させられていればよかった。」

最大の長所:見ぎれいにしていて、決して他人の足手まといにならないこと

最大の短所:家族がなく、機嫌が悪く、腹の調子が悪いこと

最大の要求:生きたまま埋められないこと

最大の罪:富の神マンモンを崇拝しないこと

人生の有意義な出来事:なし

(参考文献:U・ラーション編 『ノーベル賞の百年』 ユニバーサルアカデミープレス)

このときのノーベルはすでに自分の研究で大きな業績や多大な財産をなしていました。科学者として幸せな人生を歩んだように思えます。しかしこの手紙からは自分の存在を否定し、まるで自分自身のことを呪っているかのようです。なぜ、こんな思いを抱いていたのでしょうか? それは彼の発明品とその社会での使われ方にありました。

ノーベルは1833年にストックホルムで発明家の家に生まれました。9歳の時にロシアのサンクト・ペテルブルグに移り住みます。このサンクト・ペテルブルグは周期表をつくったメンデレーフも縁があり、化学史にはときおり出てくる有名な場所です。

物心ついたノーベルは化学に興味を持ち、発明家の父とニトログリセリンによる爆薬の開発に没頭しました。ニトログリセリンは非常に反応性が高く、少しの振動でも爆発する大変危険な液体です。そのままの状態では目的の場所に持ち運ぶ間に爆発する危険があります。そこでノーベル親子はニトログリセリンを安全に使いやすくするために板状の珪藻土に吸収させて持ち運びを簡単にし、取り扱いやすく改良しました。これがダイナマイトです。当初、ダイナマイトはトンネル建設などの土木工事に使われ、早く・安全に掘削できるとして多くの需要がありました。

しかし、ダイナマイトの威力は、工事ではなく戦争などで大量虐殺に使われるようになっていきました。ダイナマイトの特許料で世界屈指の資産家になったノーベルですが、自分の発明品が武器として使われることに悲しみ、ノーベルは、1895年11月27日に世界で広く知られることになる遺言に署名をしました。

「私のすべての換金可能な財は、次の方法で処理されなくてはならない。私の遺言執行者が安全な有価証券に投資し継続される基金を設立し、その毎年の利子について、前年に人類のために最大たる貢献をした人々に分配されるものとする。」

つまり、ダイナマイトによって得た資産を人類に最大の貢献をなした人々に与えるということです。この遺言をもとに設立されたのがノーベル財団で、彼の遺志の通り1901年から現在まで、ノーベル賞として賞金が贈られています。受賞者は2011年までに総勢853名にのぼります。

ダイナマイトに限らず、科学技術の発展は私たちの生活を豊かにし、必要不可欠なものです。しかし使い方によっては私たちの生活だけでなく命をも脅かすものにもなります。日々、世界中で発展している科学技術を私たち人類のため、生命のため、地球のために役立てられるように願います。

ノーベル賞の予習も終わり、あとは今年の受賞者発表を待つのみです!!受賞者の発表は10月8日から始まりますが、授賞式はノーベルの命日である12月10日にストックホルムで行われます。(平和賞のみ同じ日にノルウェーのオスロで開催)

あなたは人類のために何ができますか? 今から、人類のために出来ることを探して今後のノーベル賞を狙いましょう!!

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