2014年ノーベル生理学・医学賞を予想する!番外編 ○○ニンジンは世界を救う!

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突然ですが、この白い物体は何でしょう?

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 病気の検査キットなのです。そう、マラリアの。

(血液を流動させます。溝の中に縦線が1本見えますが、これが2本あったらマラリアにかかってしまった証。)

 

私、古澤 輝由は、2011年より2年と半年、アフリカマラウイ共和国という国で生活しておりました。健康には気をつけているものの、発熱してしまったら万が一を疑って、先のマラリア検査キットでチェックします。マラリアにはワクチンがないため(研究はされていますが、まだ実用化されていません)、予防薬を定期的に摂取していました。

 

それでも、もしも、マラリアにかかってしまったら......?

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(彩色されている国がマラリア流行地域。濃い赤は多剤耐性を持つ蚊が生息。アフリカの南東、マラウイは見事に濃い赤です。出典:Wikimedia Commons)

 

その治療薬の開発に多大なる貢献をした科学者がいます。

中国屠呦呦(トゥ・ヨウヨウ)博士その人です。

 

【そもそもマラリアって?】

マラリアHIV/AIDS結核と並んで世界三大感染症の一つに数えられ、現在でも年間約2億人が罹患し、約60万人もの人が命を落としています。人類とマラリアの歴史は長く、古くは紀元前にも遡ることができます。

現代になっても人類を悩ませ続けるマラリア。

 

その原因は、

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(ハマダラカ 出典:Wikimedia Commons)

 

正確には、ハマダラカに感染するマラリア原虫です。(ハマダラカがマラリアを媒介することを発見したロナルド・ロス医師は、1902年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。)

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(マラリア原虫 出典:Wikimedia Commons)

 

人類はマラリアを克服するために、さまざまな治療法や薬剤を生み出してきました。しかし、一定の効果はみられるものの、その度に耐性を持ったマラリア原虫が出現し、また広がって行きます。同時に、マラリアに対する薬は、強い副作用があるものが多いことも問題視されてきました。


 

【マラリア治療をめぐる新たな動き】

一進一退のマラリア治療事情ですが、近年新たな動きが注目されています。

漢方から同定された化合物アーテミシニン(artemisinin)その誘導体を含む薬剤が、感染地域で広く使われ、効果を上げているのです。

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(アーテミシニン 出典:Wikimedia Commons)

時は1960年代後半の中国。戦地に赴く兵士達が薬剤耐性を持つマラリアに罹患し、倒れていきました。その苦境を打破するために、政府は科学者にマラリアの特効薬を開発するようにと要請を出します。その科学者の1人がトゥ博士でした。

トゥ博士は様々な漢方を化学的に分析し、1972に、古来よりマラリアに効く漢方として用いられて来たキク科ヨモギ属蒿(セイコウ:Artemisia annuaから、 アーテミシニンを同定することに成功しました。このアーテミシニン薬剤耐性を持つマラリア原虫にも効果があるだけでなく、副作用が弱いことでも重宝されています。

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蒿 Artemisia annua出典:Wikimedia Commons)

ここで、「ん?そもそも1972年って、だいぶ昔の話じゃない?」と思われた方もいるかもしれません。

 

そうなんです!

 

このアーテミシニン系の薬剤、実用化されるまでに30近くかかってしまいました。政治的な背景から認可が遅れ、世界保健機構(WHO)に認可されたのが2000年、本格的に使用され始めたのが2006年でした。

WHOでは2004年からアーテミシニン系薬剤による治療を推奨しており、ここ10年ほどの統計では、マラリアでの死亡率が42%減少し、330万人もの人々の命が救われたそうです。(※1)

そして、トゥ博士はその功績を認められ、2011年には「ノーベル賞の前哨戦」と呼ばれるラスカー賞を受賞しました。

エボラ出血熱デング熱など、感染症への関心が高まってきていますが、感染症分野におけるトゥ博士の功績は非常に大きいと言えるでしょう。御歳83歳トゥ博士ですが、もしも受賞されれば、中国で初のノーベル生理学・医学賞の受賞者となります。


 

蒿の気になる和名

ところで...

 

アーテミシニンの元となる、実はものすごい和名がついているんです。

葉っぱがニンジンに似ていることと、そして少し独特な香を持つことから...

その名も、クソニンジン

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(かぐわしいクソニンジンと私

 

えぇ、ヨモギっぽい?ラベンダーっぽい?そんな悪い匂いはしないんですけどね。命名された方、何か恨みでもあったんでしょうか...。

現在未来館で絶賛開催中のノーベル賞予想ミニトークでも、クソニンジンの紹介をしています。匂いを嗅いでみたいっ!という方、未来館でお待ちしております。(日本でもいたるところに自生していますが...)

とは言え、このクソニンジンから摂れるアーテミシニン、マラリアだけでなく他の病気にも転用できそう、ということで研究が進められているそうです。なかなかデキるヤツです。

名前なんて関係ないですね。

頑張れクソニンジン!負けるなクソニンジン!

 

※アーテミシニン耐性を持つマラリア原虫の発生も報告があり、その対策もとられています。 WHO: Factsheet on the World Malaria Report 2013 http://www.who.int/malaria/media/world_malaria_report_2013/en/%20

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