研究者に聞く!ノーベル賞は誰の手に?①化学賞に分子シャペロン?

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朝晩が冷え込んできましたが、未来館のノーベル賞関連イベントはヒートアップしています!この勢いですと、発表当日は頭から煙が出るか、ついに知恵熱が出るか...。連日のブログ・ラッシュの通り、ノーベル賞の発表まであとわずか! 今年もお客様にご参加いただきながら予想活動をしてきましたが、それはもう至難の業。

そうだ!研究棟の先生に聞いてみよう!

そうです。未来館には第一線で活躍する様々な分野の先生方がいらっしゃるのです!今回、ご協力頂いたのは京都産業大学 総合生命科学部 遠藤 斗志也 先生。遠藤先生は、タンパク質の一生と、細胞内のミトコンドリアをつくる仕組みを研究されていて、未来館でのご活動についてはこちらで紹介しています。

ではさっそく・・・ズバリ、遠藤先生の予想は??

 

今年はコレがくるだろう!

【分野】 タンパク質科学,生化学(化学賞)

【研究者】 Franz-Ulrich Hartl, Arthur L. Horwich, George Lorimer

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「分子シャペロン」と聞きなれない言葉が登場しましたが...まずは、こちら。

 

固まらない、ゆでたまご?

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図1:卵白を加熱した実験結果。右はシャペロンを添加したので、凝固していない (東京工業大学 田口英樹先生よりご提供頂いた画像を改変)

 

タンパク質は「蛋白質」とも書きますが、「蛋白」とは卵白のこと。ゆで卵は熱で形が崩れて「変性」したタンパク質が凝集した状態。ところが、なんとそこに代表的な分子シャペロンである、シャペロニン(※)が存在すると・・固まらない!一体「分子シャペロン」とは、いったい何者なんだー!?

 

最強の助っ人・シャペロン

シャペロン(chaperone)とは、フランス語で

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 貴女に変な虫などつかぬよう目を光らせ、一人前のレディーになれるようサポートするご婦人。(オリンピックでは、女子選手村の世話役の職員を「シャプロン」と呼ぶようです。)

そして、分子シャペロンとは

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でございます。バクテリアから私たちヒトに至るまで、全ての細胞に存在し、活躍しております。

何を手助けしているかというと「形を整える」こと。

種々のタンパク質の機能は、ここでは紹介しきれませんが、タンパク質が正常に機能するからこそ、健康でいられるわけです。そのタンパク質の機能には、形(立体構造)が重要です。タンパク質は、アミノ酸が連なったものですが、パーツとなるアミノ酸には、水となじむ親水性、水を嫌う疎水性、正電荷を帯びるもの、負電荷を帯びるもの、など、いくつかのタイプがあります。そのため、パーツ同士の相性 :くっつきやすいか、反発するかー によって、おのずと「安定な形」へ導かれます。つまり、どんな形になるかはアミノ酸の配列(並び順)できまり、アミノ酸のチェーンが折りたたまれて立体構造になることを、タンパク質のフォールディングといいます。

タンパク質が自力でフォールディングすることは、試験管の中で確認されています。しかし、実際の細胞の中は、様々な分子で混み合っているので(細胞内の「分子混雑」については熊谷の記事でご紹介しています)、タンパク質が別の分子とからまったり、くっついたり(凝集)と大変。そこで、分子シャペロンは、新生タンパク質や、不良品のタンパク質をキャッチして、適切な形になったところで、リリース。こうして、タンパク質のフォールディングを効率的に、確実にできるよう手助けしているのです。

 シャペロン-2.jpg

図2:上は代表的な分子シャペロン(GroEL、後述します)の模式図。下はあくまでイメージです。(タンパク質をおにぎり、握る手をシャペロンに例えましたが、比喩としてご理解頂ければと思います。)

 

遠藤先生がお名前をあげた3名のうち、Ulrich Hartl氏 Arthur Horwich氏は、"アメリカのノーベル賞" とも呼ばれるラスカー賞を2011年に受賞しています。(お二人の顔写真も掲載されています↓)

http://www.laskerfoundation.org/awards/2011basic.htm

 

受賞理由は、細胞内でタンパク質のフォールディングを助ける分子マシン(シャペロンのこと)、特に、新生タンパク質を活性のある構造に変換する「かご状」構造の分子シャペロンの発見。ゆり「かご」から墓場まで...まさにタンパク質の一生の鍵を握る、重要な分子シャペロン。

冒頭のゆで卵の凝固を防ぐ分子シャペロンは、バクテリアの「GroEL」というタンパク質で、分子シャペロンのなかでも、最も研究されています。そのGroELがフォールディングを助ける分子マシンとしてはたらくことを最初に見出したのが、George Lorimer氏です。日本で分子シャペロンの研究をリードする東京工業大学の田口英樹先生も、2011年のラスカー賞に際し「本当はもう一人入ってほしかった。George Lorimerだ」とコメントされています。また、分子シャペロンのコンセプトの確立においては、John Ellis氏の貢献も大きいそうです。

 

フォールディングの異常と病気

タンパク質のフォールディングの異常は、プリオン病(BSE・狂牛病)、アルツハイマー病や、パーキンソン病、ハンチントン病など、深刻な神経変性疾患に関わっています。疾患のなかには、分子シャペロンが関わるものも知られてきており、今後さらに研究が注目されていくと思います。

ちなみに...

遠藤先生が「去年は生化学ではなかった」と、仰るように、幅広い分野を対象とする化学賞には傾向がみられ、一昨年2012年の化学賞は「Gタンパク質共役受容体に関する研究」で生化学領域でした。

さて、次号では「この成果なくして、今の研究なし!」と題し、遠藤先生の研究分野に欠かせない業績として、生理学・医学賞の予想を伺いました。さぁ、先生は誰のお名前をあげたのか...お楽しみに。

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(※)シャペロニンは分子シャペロンの中でも特に重要で、どの細胞にも存在する一連のタンパク質群

 

【監修・協力】

遠藤 斗志也 先生 (京都産業大学総合生命科学部)

田口 英樹 先生 (東京工業大学大学院生命理工学研究科)

 

【参考文献・関連リンク】

▶遠藤研究室HP http://biochem.chem.nagoya-u.ac.jp/index.html

▶ 東京工業大学 田口研究室http://www.taguchi.bio.titech.ac.jp/)

▶ ブログ「田口英樹のサプリメント」 http://taguchi-hideki.blogspot.jp/2011/06/groel.html

▶ 日本生物物理学会 http://www.biophys.jp/highschool/A-09.html

▶ Essential 細胞生物学 原書第3版

▶ ラスカー賞 (2011年) http://www.laskerfoundation.org/awards/2011basic.htm

 

執筆にあたりご協力いただいた遠藤先生、田口先生に心より御礼申し上げます。

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