研究者に聞く!ノーベル賞は誰の手に?② 細胞を守る3つの掟(生理学・医学賞予想)

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前回の化学賞の予想に続き、今回も研究棟の遠藤斗志也先生(京都産業大学 教授)にご協力をいただき、ノーベル生理学・医学賞の予想を伺いました!題して

この成果なくして、今の研究なし!

【分野】 細胞生物学(生理学・医学賞)

【研究者】 森 和俊 氏, Peter Walter 氏

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写真&解説: 遠藤 斗志也 先生

 

ニュースでご存知の方も多いと思いますが、今年2014年9月発表のラスカー賞(基礎医学部門)は、森先生(京都大学)とピーター・ウォルター氏(カルフォルニア大学)のお二人が「小胞体ストレス応答の発見とその主要シグナル伝達経路の解明に関する研究」で受賞されました。ラスカー賞はノーベル賞の前哨戦として名高い賞です。(森先生とウォルター氏のお写真も掲載されています↓)

http://www.laskerfoundation.org/index.htm

 で・・またも新たなキーワードが登場。小胞体UPR??危機管理??? ま、まさに今私の脳が・・・危機管理システムを必要としています・・・!(生理学・医学賞の発表は日本時間10/6(月) 18:30に迫る!)

アラートが鳴りっぱなしの私を見かねて、遠藤先生がさらに補足して下さいました。

 

実は、まさに「私の研究に森さんの発見なくしては」・・いえ、むしろ細胞内でタンパク質がどうやって働くかという「タンパク質社会」の研究(私もその分野で研究していると思っています)が急速に発展する中で,森さんの発見が光っているという感じです。

 タンパク質の社会では,タンパク質は正しい形になるようにフォールディングしなければならないし,目的地の区画(小胞体,ミトコンドリアなど)に正しく配送されなければならない。配送されたら集合してフォールディングして,機能しなければならない。それでもタンパク質はおかしくなることもある。そういうときは,異常のあるタンパク質を治療するか,あるいは細胞全体として,不良品タンパク質がそれ以上増えないように,いろいろな役者を呼んできて対処しないといけない・・というわけです。

 

 

なるほど、化学賞の予想で注目した「分子シャペロン」はタンパク質が正しい形に折りたたまれるようにフォールディングを助ける存在でした。ただ、一度は正しい形をとったとしても、その後に崩れてしまうことも(ゆで卵;熱変性のように)。タンパク質の形の異常は、さまざまな疾患(※1)にも関わってくる重大な事態です。もし不良品ができてしまったら・・・

森先生は、そんな危機を回避するために、細胞がとる3つの掟を明らかにされました!

 

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 実にシステマチック!そんなことが私たちの細胞の中で、せっせと行われているなんて感謝!

ところで、小胞体とUPRは・・・?

 冒頭、遠藤先生のコメントに「区画」とあるように、細胞内には細胞小器官とよばれる各々の役割をもった「部屋」があります。

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細胞がつくる全タンパク質のうち、約1/3は「小胞体」へ (※2)。なかでも、ホルモンなど細胞の外で働く分泌タンパク質や、受容体のような細胞膜の表面で働く膜タンパク質は、小胞体で形を整えます。そう!形を整えるといえば「分子シャペロン」です。小胞体のなかには、小胞体シャペロン (※3) がたくさん待ち構えていて、タンパク質を正しい形へと折りたたみます。小胞体では、形を整えるほかに、糖鎖をくっつけるなど、タンパク質の修飾も行っています。

しかし、時にこれが上手くいかないこともある。私たちも環境によって(暑いとか寒いとか)ストレスを受けますが、細胞レベルでもストレスがかかると、いい仕事ができなくなります(自分の言い訳にしていま・・・)。小胞体に負荷がかかると、不良品タンパク質が小胞体の中に溜まってしまいます。蓄積した異常なタンパク質同士がくっついて凝集すると、いよいよ緊急事態です。

そこで、小胞体が発動するシステムが、先ほどの3つの掟。大事なのでもう一度。ご唱和下さい。

 

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これら3つの応答システムをまとめて、UPR (Unfolded Protein Response) または小胞体ストレス応答 (ER Stress Response) と呼んでいます。しっかり検品して、出荷できるタンパク質と不良品を区別する、まさに「タンパク質の品質管理」です。

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さぁ、残すところは発表を待つのみ・・・みなさんは、どんな研究が受賞しそうだと思いますか?もしくは、どんな研究に受賞してほしいですか?発表時間に合わせて、ニコ生中継を行いますので、ぜひご覧ください!

 

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(※1)小胞体ストレスが関与する疾患として、脳虚血疾患、糖尿病、パーキンソン病などの神経変性疾患、心臓疾患、アテローム性動脈硬化等が森研究室のHP(下記参照)で紹介されています。

(※2) 細胞の種類によって、つくられるタンパク質の種類、行き先も変わります。特に、分泌系のタンパク質をメインにつくる免疫細胞や脾臓細胞では、小胞体およびそのストレス応答が極めて重要となります。

(※3)小胞体シャペロン:小胞体でフォールディングに関与する分子シャペロンや酵素の総称

 

【参考文献・関連リンク】

▶遠藤研究室HP http://biochem.chem.nagoya-u.ac.jp/index.html

▶ 京都大学 生物物理学教室 森研究室 http://www.upr.biophys.kyoto-u.ac.jp/

▶ 京都大学 森和俊 理学研究科教授がラスカー賞を受賞(2014年9月9日)

http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/history/honor/award_b/lasker/140909_1_1.html

▶ ラスカー賞 (2014年)

http://www.laskerfoundation.org/index.htm

http://www.laskerfoundation.org/awards/2014_b_description.htm

執筆にあたりご協力いただいた遠藤先生に心より御礼申し上げます。

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