南部先生、ペンタクォークが見つかりましたよ

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20150718_fukuda_00.png(CERN提供)

身の回りの物は何でできているのか?
好奇心を突き詰めると、小さな粒に行き当たる。
その粒が2、3個集まった粒子は知られているが、
5個も集まった粒子が、新たに見つかった。
その名も「ペンタクォーク」だ。

 

お久しぶりです。福田大展です。5つの素粒子で作られる粒子「ペンタクォーク」の存在を確認したという研究成果が14日に、欧州原子核研究機構(CERN)により発表されました。冥王星の美しい画像に見とれていたら、ツイッターでこのニュースを見つけたので、久しぶりに慌てて筆を取りました。ペンタクォークとはどんな粒子なのか? どんな実験で見つかったのか? じっくり見ていきましょう。

 

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あたりを見回してみてください。何が見えますか? 私は本屋にいるので、本棚やたくさんの本が並んでいるのが見えます。立ち読みをしている人の姿も。皆さんは私と違う風景が見えているでしょう。しかし、私が見ているものも、皆さんが見ているものも、目に見えるすべての物質は、たった数種類の小さな粒「素粒子」でできているんです!

 

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身の回りのものは原子でできています。どんどん細かく見ていきましょう。原子は中心にある原子核と、周りにある電子でできています。そして、原子核は陽子と中性子が集まったもの。さらに、陽子と中性子はアップクォークとダウンクォークという2種類の粒でできています。つまり、突き詰めると原子は「電子」と「アップクォーク」と「ダウンクォーク」の3種類の素粒子でできているんです!

 

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物質をつくる素粒子は、この3種類だけでしょうか? 小林誠博士と益川敏英博士は1973年「6種類のクォークがある」と理論的に予測しました。先ほどの「アップ」「ダウン」に加えて「チャーム」、「ストレンジ」、「トップ」、「ボトム」です。現在では、6種類のクォークが実際にあることが実験で確かめられ、2人は2008年にノーベル物理学賞を受賞しました。さらに、レプトンと呼ばれる電子の仲間も、6種類あることが分かっています。

 

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そして、物質をつくる素粒子は上の図で示した12種類なのですが、それぞれに「影武者」がいるんです。質量はまったく同じで、帯びている電気のプラスとマイナスが逆になった「反粒子」です。

 

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今回、注目されているのはクォークです。クォークには「強い力」というクォーク同士を引きつける力が働き、複数のクォークが集まってひとつの粒子を作ります。一番身近なのが、先ほどの説明にもでてきた、陽子と中性子です。いずれも3つのクォークからできています。このように3つのクォークからなる粒子を「バリオン」と呼びます。また、クォークと反クォークのペアでできたものを「中間子(メソン)」と言います。

 

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さらに、4つ集まったものを「テトラクォーク」といい、5つ集まったものが今回の主役の「ペンタクォーク」なんです! この4つと5つが集まった粒子は、理論的には存在すると考えられていますが、まだ確実には見つかっていません。そして今回、ペンタクォーク発見か? という報告がありました。

 

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時速100kmでまんじゅうとまんじゅうが正面衝突したとします。(福田はいきなり何を言っているんだ!暑さでおかしくなったのか)  何が飛び出てくると思いますか?

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あずきの粒やあんこ、餅が砕け散って飛び出てくるでしょう。つまり、まんじゅうの中にあるものが出てきます。しかし、陽子と陽子をほぼ光の速さでぶつけると、面白い現象が起こるのです。陽子の中にはアップクォークとダウンクォークがあるので、普通に考えると、それらの粒が出てきそうですが、まったく違う粒が飛び出してくるのです!

 

下の写真に写っている物が、陽子をほぼ光速に加速して衝突させる実験装置です。その名も、大型ハドロン衝突型加速器「LHC」。大型というだけあって、大きさは1周27km。地下100mの地下に山手線一周(34.5km)に近い長さのトンネルが掘られています。そのトンネルの中で、陽子を光速の99.999997%まで加速させます。そして、1秒間にトンネルを1万周ほど回る速さまで加速させた陽子を、「ガシャン!!」と正面からぶつけるのです。この装置の中には、衝突を観測する4つの巨大な検出器があり、そのひとつが今回ペンタクォークを見つけた「LHCb」と呼ばれるものです。

 

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陽子と陽子の衝突の瞬間には何が起こっているのでしょうか。なぜ違う粒が飛び出してくるのでしょうか。その謎を解く鍵を握っているのが、この式です。
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アインシュタインが考えた相対性理論に関係する式で、一度は耳にしたことがあるかもしれません。「E」はエネルギー「m」は質量、「c」は光の速度です。この式は「エネルギーと質量は変換できる」ということを意味しています。つまり、エネルギーは質量を持つ粒子に変えられるし、その逆も成り立つということです。

具体的に見てみましょう。陽子と陽子をほぼ光速で衝突させると、粒はいったんエネルギーに変わり、とても大きなエネルギーが生み出されます。そして、そのエネルギーの大きさに見合った質量を持つ別の粒子が、新たに生み出されて飛び出してくるのです!

 

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それでは、今回の実験では衝突の瞬間に何が起こったのかをじっくり見てみましょう!(強い意志を持ってついてきてください!)

 

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【①】陽子の衝突のエネルギーで最初に生み出されたのは、「ラムダ粒子(Λ)」というバリオンの仲間でした。ラムダ粒子にはいくつか種類がありますが、今回のものは「ラムダb」という粒子で、アップとダウン、ボトムでできています。

【②】せっかくできたラムダ粒子ですが、一瞬で崩壊して別の2種類の粒子に変わってしまいます。そのひとつが、ペンタクォークだったと考えられているんです! 5個のクォークの内訳はアップが2個、ダウンとチャーム、反チャームが1個ずつです。そして、壊れでできたもうひとつの粒子が「K中間子」の仲間です。K中間子にもいくつか種類があるのですが、今回のものは「マイナスの荷電K中間子」で、ストレンジと反アップでできています。

【③】しかし、このペンタクォークも一瞬で崩壊して、2種類の粒に変わってしまいます。ひとつは陽子。もうひとつは「ジェイプサイ中間子(J/ψ)」と呼ばれる中間子で、チャームと反チャームのペアでできています。

【④】さらにジェイプサイ中間子は、2つのミュー粒子に崩壊します。

 

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上の図が実際LHCbで観測した実験結果です。確かに、最終的にK中間子と陽子、2個のミュー粒子が飛び出していますね! しかし、皆さん思いませんか。検出されたのは、K中間子と陽子と2個のミュー粒子なのに、「なぜ途中の崩壊するプロセスまで分かるの?」って。

先ほどの建設途中のLHCbの写真を見ると、「アヒルのくちびる」のような形をした黄色い物がありますよね。実は、あそこに電流を流すと巨大な電磁石になるんです。そして、衝突によって発生した粒子が電磁石の間を通るときに、電荷を持っている粒は曲がります。その曲がり具合から、飛び出してきた粒子の運動量(質量×速度)や、帯びている電気の量がわかるんです。さらに、粒子の速度や、軌跡から崩壊した場所を特定する装置も備わっています。なので、検出された粒子の情報から元をたどっていけば、崩壊する前の粒子の質量などが計算で求められ、どんな粒子か推測できるのです!

 

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私がこの記事を書いている最中に、南部陽一郎先生の訃報を知りました。私は福井県の藤島高校の卒業生なのですが、南部先生はその前進の旧制福井中学をご卒業されており、私の大先輩にあたります。直接の接点はありませんでしたが、科学館で働き始め、素粒子物理学のことを学べば学ぶほど、南部先生の偉大さが身にしみました。

南部先生は「対称性の自発的破れ」という理論の発見で、2008年のノーベル物理学賞を受賞しました。そして、それだけでなく、2013年に同賞を受賞した「ヒッグス機構の理論的発見」の考え方にも、大きく影響を与えています。(そのときの話は、このブログでまとめています。)

「世の中はどんな法則でできているのか」という根源的な知的好奇心に対し、南部先生の研究は何度も私の心を鷲掴みにしてワクワクさせてくれました。良い小説や音楽と出会った時のように、ドキドキさせてくれました。ありがとうございました。南部先生は研究の最前線から離れてからも、学問への向上心は持ち続けていたと伺っています。南部先生は今、ペンタクォークの発見の報告を聞き、何を思っているのでしょうか。

20150718_fukuda_30.pngのサムネイル画像

 

【参考にしたサイト】

LHCb コラボレーションのサイト

今回の研究成果を発表した論文(ArXiv)

 

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