土にはお宝が眠っている~大村智先生ノーベル賞受賞によせて~

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12月10日、北里大学の大村智栄誉教授がノーベル賞授賞式に出席します

大村先生は、米・ドリュー大学のウィリアム・キャンベル氏とともに、寄生虫が原因の感染症に効く薬を、「放線菌」という微生物から発見したことが評価されました。マラリアの治療薬を開発した中国のトゥ・ヨウヨウ氏との3人での共同受賞です。(詳しくは科学コミュニケーター・鈴木の記事(こちら)・古澤の記事(こちら)をご覧ください)

20151210_shimizu_01.jpg 大村先生が発見した放線菌「ストレプトミセス・エバミティリス」
(日本放線菌学会提供/Photo by H. Ikeda & S. Omura)
http://atlas.actino.jp/

何億もの人を感染症から救うことができるなんて、放線菌って、すごいお宝ですね!

というわけで、そんなお宝を探りに、世界中の放線菌が集まる 研究所に行ってきました。2万5000 株を超える 放線菌が保存されている「製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター(以下NBRC)」です。放線菌の多くが土の中から見つかったもの。どうやらお宝は土のなかにあるようです。いったいどうやってお宝を掘り出すのか、お話を聞いてきました!

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NBRC(千葉県木更津市)は、放線菌やカビ、酵母、細菌などの様々な微生物を保管し、大学や企業の研究者に提供する業務を主とする国の機関 です。放線菌「ストレプトミセス・エバミティリス」も当然保管しています。

また、国内外の研究者から新種や有用な機能を持つ放線菌を預かったり、新種の放線菌を追い求めて土を集めたりもするのだとか。

そんな「放線菌ハンター」とも呼ぶべきNBRCの研究者にお話を伺いました。

20151210_shimizu_03.JPG NBRC生物資源利用促進課・浜田盛之さん(左)と特許微生物寄託センターの田村朋彦さん(右)。天然物創薬支援室・小牧久幸さんにもお話を伺いました。

放線菌を採集するプロセスをまとめてみましょう。まず土をいろいろな場所からとってきます。そして、熱や化学的な処理をした土を、培養皿の寒天の上にまきます。数日すると、かびのようなかたまりが点々と現れます。その一つ一つがたった1つの放線菌が分裂して増えたものです。これを試験管に別々に移し替えたものが「株(かぶ)」と呼ばれます。

20151210_shimizu_04.JPG放線菌を集めるのは地道な作業です。

新しい放線菌を見つけるために工夫すべきポイントは主に2つ。珍しい放線菌がいそうな土をとってくることと、寒天の上で培養する方法を工夫することです。新種の発見というと、ジャングルの奥地に分け入るイメージがあるかもしれませんが、私たちの身の回りの土でも、培養方法を工夫すれば新しい放線菌がまだまだ見つかるのだそうです。

というのも、私たちが培養できる放線菌は今のところ、地球上にいるもののうちわずか1%未満と考えられているから。土をどのように化学物質や熱で処理して、放線菌にどのような栄養を与えるかで、寒天上に生えてくる放線菌の種類が大きく異なるそうです。

このようにして分けられた放線菌は、製薬企業や大学の研究者に送られていきます。新しい薬を見つけるためには、何万という株の放線菌が使われるそう。だからこそ寒天の上に現れた放線菌一つ一つは大切なお宝です。そこで、NBRCではそれらを厳重に保管しています。

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浜田さんがもつのは、アンプルと呼ばれる小さなガラス瓶。乾燥させた放線菌が収められています。写真の保管庫には8万株の微生物を保管できるのですが、これでも全ての放線菌を保管するには全く足りなさそう。放線菌の多様性を感じますね。

私たちの身の回りの土には、実に多様な放線菌がすんでいます。寒天の上に姿を見せてくれない放線菌もたくさんいますし、土を採取する季節を変えただけでも現れる放線菌の種類が変わるそうです。道ばたの何気ない土に、そんな豊かな世界が広がっているなんて、おもしろいですよね。

くしくも2015年は、国連が定めた「国際土壌年」。「限りある資源である土壌について、社会的な認識の向上を図ること」を目的としています。そんな年に(それも12月5日の「国際土壌の日」の直後に)土からとれた放線菌の研究に対してノーベル賞が与えられるなんて、なんという巡り合わせ!土からの贈り物である放線菌、そしてその放線菌を探し求めて、私たちの健康を守る薬を見つける研究者のみなさまに感謝したいですね。

20151210_shimizu_06.jpg 土の恵みに感謝!

※微生物を培養するときは、微生物の知識を持つ方が付き添いの上、滅菌できる設備(オートクレーブなど)がある場所で行ってください。有害な微生物が増えてしまうおそれもあります 。

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