【今度こそ!祝!】113番目の元素 命名権を日本の理化学研究所が獲得!

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こんにちは!
あけましておめでとうございます。科学コミュニケーターの雨宮です。

2015年は、科学に関するいろいろなニュースがあり、とても賑やかでしたね。

特に10月に発表されたノーベル賞では、日本人の研究者がお二方も受賞され、みなさまもメディアで目にする機会も多かったのではと思います。
その授賞式も12月に行われ、「ああこれで2015年の大きなニュースは終わりかな」と思っていたのも束の間...

なんと!
12月31日、「2015年最大級」と言っても過言ではないビックニュースが飛び込んできました!

113番目、115番目、117番目、118番目の4つの元素が新たに確認され、そのうち113番目の元素の命名権を、日本の理化学研究所(以下:理研)が獲得したのです!!

紅白歌合戦の合間にも放送されたこのニュース、くわしく見ていきたいと思います。

◆そもそも113番目元素ってなんのこと?

実は113番目元素の命名権獲得に関しては、この元素を発見した10年ほど前から話題になっていましたが、とくに盛り上がったのは昨年の8月頃からでしょうか。

その時に、113番目元素とはどんなトピックなのかをブログにまとめておりますので、
今回のニュースで初めて「113番目元素」とういう言葉を耳にした方は、まずこちらをご覧ください。

113番目元素の発見からの略歴をまとめると、こんな感じになります。

20160107_amemiya_01.jpg

この通り、実はロシアとアメリカの共同研究チームも、113番目元素に関する研究を行っているのです。
(むしろ発見の報告は、米ロのチームのほうが早かったのです。)

そして、理研と、米ロの研究グループが、それぞれ発見者は自分たちだと主張しあっていました。

その上で、命名権の付与先を決定する化学の国際学会であるIUPACは、
113番目元素を発見したのは、理研であると認定しました。

◆どうして理研に命名権が与えられたの?
それでは、理研のチームは、他国の研究に比べ何が優れていたのでしょうか。


命名権を獲得した今、もう一度整理すると、
「理研の方が確実性が高かったから」
と言えるでしょう。

ここで、113番目元素を合成し、確認するために踏むべきステップをごくごく簡単に紹介します。

ステップ①

亜鉛(原子番号:30)の原子核を加速器を用いて光速の10%ほどまで加速し、ビスマス(原子番号:83)の原子核に衝突させる。

ステップ②

衝突によって、ごくまれに113番目元素が合成される。
 (原子核の大きさは1兆分の1cmと非常に小さいので、そもそも衝突の確率が低く、さらに衝突したとしても融合する確率はわずか100兆分の1程度です。)

ステップ③

合成された113番目元素は、アルファ粒子を放出しながら崩壊する。

ステップ④

崩壊により原子番号の小さい既知の元素になった粒子を検出し、はじめに生まれた元素が113番目のものであることを確認する。

どの研究チームも、大まかに言うと①〜④の手順を踏み、113番目元素を確認しています。

理研の研究チームが2004年と2005年に確認した113番目元素は、次のような崩壊経路をたどったものでした。

20160107_amemiya_02.jpg
図:理研の研究チームが1回目と2回目に確認した崩壊経路

先ほどのステップで言うと、③と④の様子のことですね。
未知の113番目元素が、4回のアルファ崩壊を経てドブニウムになり、その後分裂しています。

ここまででも十分に科学的価値のあることなのですが、国際学会から「2回の合成確認では確度が高くない」という評価を受け、命名権獲得には至っていなかったのです。(ロシアとアメリカの共同も同じ理由で獲得できませんでした)

...しかし!理研の研究チームの粘り強い努力により、2012年に3回目の合成が確認されたのです!
しかも、3回目に確認された113番目元素は、1回目や2回目とは異なる、このような崩壊経路をたどりました。

20160107_amemiya_03.jpg


図:理研の研究チームが3回目に確認した崩壊経路

未知の113番目元素が、4回のアルファ崩壊の後ドブニウムになり、【さらにその後2回のアルファ崩壊を起こした】のです!


もともとドブニウムは、自分で核分裂を起こすことも、アルファ崩壊をすることも確認されていたので、3回目の113番目元素発見は、その確度の高さを証明する絶好の証拠となりました。

ということで、理研は他の研究チームより「確度が高い」ことを理由に、命名権を獲得したのです。

◆113番目元素の名前は何になるの?
さあ、それではみなさまお待ちかねの「新元素の名前は何になるの?」ということについてのお話です。
まだオフィシャルな報告はないので、何になるのかはわからないですが、
命名の際に守るべきルールや慣例はちゃんとあります。それがこちらです。

●ルール:英語表記の元素名の終わりは、必ず「〜ium」であること。
   例:ナトリウム(Sodium)、カルシウム(Calcium)
●慣例①:元素の発見者や、科学界で大きな功績を残した人名になぞらえることもある。
   例:Es(アインスタイニウム)、No(ノーベリウム)
●慣例②:元素を発見した国名や地名になぞらえることもある。
   例:Fr(フランシウム)、Cf(カリホルニウム)

また、当然なのですが、元素名とともに元素記号名も決めなければなりません。


そう考えると、候補の一つとささやかれている「ニッポニウム」は、既に使用されている「Np」「Ni」という元素記号名を避けなければならないので、可能性は低いかも知れません。

慣例①バージョンだとすると、今回理研の研究チームを率いた森田先生はもちろんのこと、仁科芳雄先生や湯川秀樹先生、朝永振一郎先生など、日本の名だたる科学者の名前からとることだって考えられます。
今回のニュースを期に、素晴らしい功績を残した偉大な科学者に思いを馳せるのも良いですね。

今後の命名に関する流れとしては、
・理研内で検討
 ↓
・国際学会であるIUPACに元素名と元素記号名を報告
 ↓
・IUPACが承認
 ↓
・新元素名が確定

となるようです。


確定するまでには1年ほどかかるかもしれないということなので、楽しみに待っていましょう。

◆この研究は今後どうなる?


森田先生が率いる理研の研究チームは今後、未だどの研究チームも確認していない119番目の元素を合成していくようです。

今回の113番目元素は、344マイクロ秒(1マイクロ秒は、100万分の1秒のこと)というほんのわずかな時間で崩壊を迎えてしまいましたが、119番目、120番目...と、ひとつひとつ発見を積み重ねていくことで、「安定の島」と呼ばれる領域の元素を作り出すことができると言われています。

「安定の島」とは、量子学的な効果によって、原子番号は大きいが、寿命がきわめて長い元素が存在する領域のことです。
理研の研究チーム曰く、「安定の島」の原子核を合成することは、138億年の宇宙の歴史の中では存在しなかった元素を人類が創り出すことになるかもしれないほどのチャレンジです。
もしかすると、私たちの生活を信じられないくらい豊かにする元素を合成することになるかも知れませんね。

そういった意味でも、
「これから113番目元素がどんな名前になるのか」ももちろん注目ですが、
「まだ見ぬ元素発見に向け不撓不屈の努力がなされているこれらの研究分野そのもの」
にも、大注目ですね!

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この記事への1件のフィードバック

とうとう113番元素の命名権、日本に決まりましたね!!
これこそ、永遠に名前が残る偉業ですね。
「何の役に立つの?」とか「生活がどう変わるの?」なんて野暮な質問は...

どんな名前になって元素記号がどうなるのかがまずはお楽しみ。
ニッポニウムは小川正孝博士が同族元素のレニウムを発見して申請したけど、
誤認とされて取り消された経緯があるので、どうでしょうね...

なぜ日本の研究チームに命名権が決まったのかは今後IUPAC発行の雑誌に
掲載される予定ですが、まだ公式発表がないと言うことを明記しておいた方が良いかと思います。

それから日本の研究チームが2回じゃだめ、3回合成できたからOKとなったような
感じに説明されているかと思いますが(読み違えていたらごめんなさい)
正確にはそうではないようです。
新元素認定の判定基準の一つとして、報告時期の早さだけではなく、崩壊しながら既に発見された核種(元素)にたどり着くことと言うのがあります。

先の2回の元素合成では、崩壊しながら既に発見された核種にたどり着く前に核分裂で割れてしまったので保留にするとIUPACは報告しています。

米ロの研究チームは日本チームよりも早くから数多くの113番元素を合成していましたが、これも既知の核種にたどり着いていなかったので保留となっていました。

日本チームは待ちに待った3回目で核分裂しないでアルファ崩壊し、既に存在が確実とされている核種にたどりつきます。これが「確度が高い」ということのようで、IUPACを納得させる決定打になったのではないかと言われています。

今後、113番元素やその他の元素がどんな化学的・物理的性質を持つのかにも研究が進むと面白いでしょうね。

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