安全とは? =リスクとの向き合い方の詳細補足③=

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そもそも、「安全」とは、何でしょうか?

リスクが完全にないこと、でしょうか?

だとしたら世の中に安全なものなど何もないことになってしまいます。



リスク評価の研究がご専門の岸本充生教授(東京大学公共政策大学院)は、次のような考え方を紹介しています。


「安全とは、許容できないリスクがないこと」

(出典:ISO/IEC(2014)"Guide 51, Safety aspects --Guidelines for their inclusion in standards":主に工学分野の国際規格として用語を使うための指針の中での「安全」の定義です)

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※本記事は、3月6日に行ったサイエンティスト・トーク「未知の災害ダメージを『想定外』といわないために」報告記事の項目別の詳細(4本中3本目)です。全体像については、「『想定外』と言わないための、リスクとの向き合い方」をご参照ください。http://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/20160325st.html



これまでの記事で紹介してきたように、

「ハザード(現象)」×「システム・状況(=曝露×脆弱性)」という考え方によって、多種多様なダメージを想像することができました。

それらを「ダメージの大きさ」と「発生可能性」で二軸のマップにすることで、総合的に、効果的にリスクを減らす材料となることを学びました。



しかし、実際には、「どのダメージ」に対して「どの程度」の対策を取るのか、考えなくてはなりません。

そのときに、大切になるのが「安全とは何か?」です。



自分や家族、会社、社会などのリスクマップをつくって、考えてみてください。

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リスクマップ上にあるさまざまなダメージのうち、許容できないものはどれでしょう?

そのダメージは、「ハザード」×「曝露×脆弱性」で決まるものでした。

ダメージを受ける側の曝露や脆弱性を改善し、リスクを許容レベルまで下げることはできるでしょうか? そのための事前対策や、発生時に備えた準備としてできることは、どのようなことでしょうか? その際に、かかるコストや、新たに生じるリスク、失う利益はどの程度あるでしょうか?



科学的に評価してきた材料と、価値観に基づき、落としどころを見いだしていきます。



【実際にリスクを許容している"隕石衝突"の例】

実際に許容しているリスクの例として、個人レベルの隕石の直撃を考えてみます。

インド南部で2016年2月、男性が隕石の直撃で死亡した(真偽は不明)との通報を機に、「人が隕石の直撃で死亡する確率はどのくらいなのか?」がインターネット上でちょっとした話題となりました。計算上、おおむね「数十万~数百万分の1」となるようです。

「宝くじより高い? 隕石に当たって死亡する確率」ナショナル・ジオグラフィック日本語版
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/021200052/

「死」は個人レベルで最大のダメージ。では、それを避けるための対策を取るでしょうか?地下のシェルターのような住宅から極力出ずに暮らし、外出時も極端に頑丈なヘルメットと鎧で身を包めば、可能性をさらに下げることができるかもしれません。

でも、ほとんどの人は、その選択をしないでしょう。対策を取ることによって被る不便さの方が明らかに大きくなりそうです。危険な隕石を事前に把握して対処する方法も考えられなくはないですが、個人でできる限界を超えてしまいます。

隕石衝突は、ダメージこそ大きくても、発生確率が極小。リスクは決してゼロではありませんが、個人レベルでは「許容する」ことを選んでいるのです。

極論すれば、「安全」という境地に達するには、ある種の「諦め」が必要なのかもしれません。



【もっと大型の小惑星になると...】

同じ隕石でも、地球環境を激変させる「大型隕石(小惑星)の衝突」になると、確率はさらに下がる一方で、地球スケールでの大ダメージになります。

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可能性はわずか。でも被害は甚大...©NASA



そして、「リスクを許容できるか否か」を考える主体も、「個人」から「国際社会」に上がります。コストを掛けて「事前に把握して対処」し、リスクを下げることも可能になるかもしれません。(実際に国連の場で、地球に接近する小惑星を監視し、場合によっては軌道を変える手段を準備する構想も近年、始まりました。)

わずかな発生可能性ながら甚大な被害をもたらす「小惑星の衝突」に対して、人類はどの程度の投資をして備えるべきなのでしょうか。このような、大きなスケールで考える際に大切なことを、次の記事にまとめます。

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関連記事一覧


「想定外」と言わないための、リスクとの向き合い方 =本編=
http://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/20160325st.html
ダメージ=ハザード×(曝露×脆弱性) =詳細補足①=
http://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/20160325post-661.html
ダメージの「大きさ」と「発生可能性」を見える化 =詳細補足②=
http://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/20160325post-662.html
安全とは? =詳細補足③=
→この記事です
科学的な整理と、価値観を踏まえた合意形成 =詳細補足④=
http://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/20160325post-664.html

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