2017年ノーベル生理学・医学賞発表!
体内時計の分子メカニズムの発見

このエントリーをはてなブックマークに追加

今年は残念ながら日本人の受賞とはなりませんでした...が!!

とってもおもしろい研究が受賞しました!

誰にでも関係する体内時計のしくみを明らかにした研究です。

アメリカに行ったら体内時計が狂って時差ボケだ...。朝なかなか起きられないからカーテンを開けて朝の光を入れて目覚めを良くしよう!寝る前にスマホのブルーライトを浴びると寝付きが悪いっていうよなぁ...。

このようにみなさんの身体には体内時計が存在し、光がその調整に深く関わっていることは感覚的に分かっている方は多いのではないでしょうか?

20171003_ishida_01.jpg

みなさんと同じくずっと体内時計の存在は認識されていました。しかし、体内時計の仕組みがどのようなものなのかはずっと分かっていませんでした。その長年の謎を明らかにしたのが、今回ノーベル生理学・医学賞を受賞されたJeffrey C. Hall博士、Michael Rosbash博士、Michael W. Young博士(3人ともアメリカ)なのです!

20171003_ishida_02.jpg

ジェフリー・ホール(Jeffrey C. Hall)博士 メイン大学(アメリカ)

マイケル・ロスバッシュ(Michael Rosbash)博士 ブダンダイス大学(アメリカ)

マイケル・W・ヤング(Michael W. Young)博士 ロックフェラー大学(アメリカ)

写真提供:ノーベル財団

1729年に、フランスの科学者が植物のミモザを光のあたらない場所に置きっ放しにしても、昼夜のリズムに合わせて、葉を開閉させていました。これは、外からの光に頼らずに、生物が自分でリズムを作り出す仕組みをもっていることを示しています。この報告が、最初のきっかけになりました。

それでは今回の受賞テーマとなった研究内容をご紹介していきましょう。

1971年、Seymour Benzer博士とRonald Konopka博士(残念ながらお二人とも他界されているので受賞とはならず...)が体内時計はある特定の少数の遺伝子が制御しているのではないかと予想しました。これはなかなか斬新な発想です。体内時計の制御って複雑そうなイメージがありませんか?いろんな遺伝子や物質が複雑に関与していそうです。

Konopka博士とBenzer博士はある特定の少数の遺伝子が制御していると信じ、突然変異を誘発する物質をショウジョウバエに食べさせ、その2000匹の子どもを観察しました。すると、3匹ショウジョウバエに24時間リズムの乱れが見られました。体内時計に異常があるかもしれないハエを見つけたのです。

時は流れ1986年。Hall博士とRosbash博士のグループ、そしてYoung博士がこの3匹の突然変異を起こしたショウジョウバエでperiodという遺伝子に変異を起こしていることを発見しました。(実はHall博士とRosbash博士のグループとYoung博士はライバル関係です。競い合った結果がこの大発見につながりました)。

このperiod遺伝子、どのように一つ一つの細胞の体内時計を制御しているのでしょうか?

period遺伝子が活性化し、period mRNAが作られ、PERタンパク質が生産されます。そして、PERタンパク質は細胞質内に蓄積されていきます。すると、もう十分に貯まったよ!もういらないよ!ということでperiod遺伝子の活性が抑えられ、PERタンパク質が作られなくなります。しばらくするとPERタンパク質が少なくなり、また作らなきゃ!ということでperiod遺伝子が活性化されPER遺伝子が生産されるようになります。このサイクルの流れを「負のフィードバック」と呼びます。

20171003_ishida_03.jpg

図の提供:ノーベル財団プレスリリース



しかし、サイクルを説明するうえでperiod遺伝子だけでは説明できない部分がありました。細胞質で増えたPERタンパク質はどうやってperiod遺伝子の活性化を抑えるんだろう?という点です。その疑問を解決するtimeless遺伝子を1994年にYoung博士が発見しました。

timeless遺伝子が生産するTIMタンパク質。これがPERタンパク質と結合することで核内に移動し、この複合体がperiod遺伝子の活性化を抑えていました。

PERタンパク質のサイクルにTIMタンパク質の役割も加えて、わかりやすくサイクルを例えてみました。

period遺伝子という設計図を元にPERタンパク質という商品が作られます。どんどんこの在庫はたまっていきます。もうこれ以上在庫はいらないと生産元に伝えたい!ということで登場するのが伝票の役割を果たすTIMタンパク質です。伝票(TIMタンパク質)がPERタンパク質にくっつくことで、生産元に送り返すことができます。すると、生産元は「PERタンパク質が送り返されてきたからもういらないのだな!」と分かり、PERタンパク質の生産をやめます。しばらくすると在庫のPERタンパク質が品切れし、生産元に送られなくなるとまたPERタンパク質を作り始めます。

20171003_ishida_04.jpg

このHall博士、Rosbash博士、Young博士によるperiod遺伝子、timeless遺伝子の発見が、細胞の体内時計のしくみを説明する突破口となりました!!その後この発見が元となり、体内時計のサイクルに関わる様々な遺伝子が発見され、より詳細なしくみが分かってきています。period遺伝子やtimeless遺伝子をはじめとする様々な遺伝子が関わることで約24時間のサイクルを刻んでいるのです。

このサイクルは光に関係なく刻まれますが、光によってリセットされることが分かっています。そのため、朝起きるときに太陽の光を浴びると目覚めが良くなるわけです。

このような分子的な体内時計を持っているのは実験対象となったショウジョウバエだけではありません。単細胞のシアノバクテリアから哺乳類であるマウス、人間も分子的な体内時計を持つことが分かっています。

そして、体内時計はホルモン分泌や睡眠などさまざまな生理現象に大きく関わります。体内時計のしくみが詳細に分かることで、ホルモン分泌や睡眠の障害を治療する薬が開発されるかもしれません。また、まだ臨床研究の段階ですががん細胞への治療も期待されています。がん細胞は体内時計が乱れていると考えられています。そのため、通常の細胞が抗がん剤を分解しやすい時間を狙って抗がん剤を投与すれば、通常の細胞では抗がん剤が分解され、体内時計が乱れ抗がん剤を分解できないがん細胞では抗がん剤が留まりよく効くことが期待されます。

このように体内時計と生理現象、健康との関わりを研究する時間生物学が急速な発展を見せています。3人の先生方の研究はまさに時間生物学の基礎を作った重大な発見なのです!

※コメントをする際は「ブログへのコメント投稿について」をご覧ください

※「名前」は、ハンドルネームでも構いません

コメントを残す