いぶき2号打上げ間近!地球観測衛星を使いこなそう

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街で迷いそうになったらスマホで自分の現在地をチェック。この後、雨が降りそうかも?と思ったら天気予報をチェック。日頃何気なく使っているこうした情報がどこから来ているか、考えたことはありますか?

位置情報はGPS衛星、雲の様子は気象衛星「ひまわり」、というように地球をめぐる人工衛星から送られてきています。人工衛星というと遠い存在のように感じるかもしれませんが、私たちは毎日の生活で、気づかなくても人工衛星をすでに使っています。しかし、それだけではなく、人工衛星から得られるデータをもっと使いやすく、多くの人が使えるようにするための整備が今、進められています。

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10月29日に打ち上げられる予定のいぶき2号(CG)©JAXA

みなさんこんにちは、科学コミュニケーターの片平です。

これからいろんな場所での活躍が期待される人工衛星。みなさんだったらどんな衛星を使って、どんなものを観測したいと思うでしょうか?

人工衛星の中には、太陽や月、火星といった地球以外の天体を探査する探査機や宇宙の彼方を観測する宇宙望遠鏡などもありますが、今とりわけ注目されているのが地球の地形や大気など、私たちの暮らす地球を宇宙から観測する、地球観測衛星です。

これからいろんな場所での活躍が期待される地球観測衛星を、みなさんならばどんなことに使いますか?未来館ではこの夏休みに「地球観測衛星を使いこなそう!」と題した特設コーナーを設置して、みなさんがどんなふうに地球観測衛星を使うのか、意見を集めました!

20181023_katahira_02.jpg参加してくれたみなさまのアイデア(一部)ありがとうございました!

なるほどと思わせる回答や、思わず笑ってしまう珍回答、様々な回答が集まりました!
せっかくのこのアイデアたち、人工衛星を使うプロにも見てもらおう!と言うことで、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究者に話を聞いてきました。

みなさんのアイデアを見てくださったのは、JAXA地球観測研究センターの大木 真人さん、衛星広報担当の山下 裕史さんのお二人です。

20181023_katahira_03.jpgみなさんからのアイデアを吟味する山下さん(左)、大木さん(右)

人工衛星を使うプロフェッショナル、大木さんから見て気になった来館者のアイデアはあったのでしょうか。大木さん、そして同席してくださった広報担当の山下さんが悩みに悩んで100を超えるアイデアの中から選んだのがこちらの3つです。

その1 開発者:あゆりさん 衛星:マグマーン
用途:マグマやプレートの動きをみることができ、火山や地震が起こる瞬間をキャッチし、知らせてくれる。

20181023_katahira_04.jpgのサムネイル画像

大木さんのコメント
地下を直接見るのは難しいですが、地表の動きを見て予測することが可能です。私が良く取り扱うだいち2号のデータでは、最近でも火山噴火の兆候があった箱根や霧島山新燃岳の様子を観測したデータが実際に利用されています。衛星の特徴である、広い範囲を満遍なく観測できる利点をよく考えてくれていると思います。

参考URL 「だいち2号」とCOSMO-SkyMedによる霧島山新燃岳の観測結果について
https://www.eorc.jaxa.jp/ALOS-2/img_up/jdis_pal2_shinmoedake_20180319.htm

 

その2 開発者:Satoshi ueno さん 衛星:肉サーチ31
用途:「発見」「あれはなんだ?」衛星が家畜の種類を識別、「健康状況も確認!」

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大木さんのコメント
食べられるお肉を調べられる!という純粋な欲求で衛星の使い方を考えてくれました。動物を調べる、ということは人工衛星を利用する1つのアイデアです。これまでに人工衛星で南極のペンギンの群れを発見した研究※などがあります。現在の技術でSatoshi uenoさんのように1頭1頭の動物を調べるのは難しいですが、だんだん近づいています。もしかしたら将来......と感じさせるアイデアですね。

※150万羽の巨大ペンギンコロニーが人工衛星によって南極で発見
参考URL(英語)https://www.nature.com/articles/s41598-018-22313-w

 

その3 開発者:ゆきぴょんちゃん(小5) 衛星:つばめ×しきさい×いぶき2号
用途:ヒートアイランドの様子を可視光・ガス・熱の三種類で見る

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大木さんのコメント
光学衛星(写真を撮るように見える)のつばめ、と熱の情報が得られるしきさい、そしてこれから打ち上げられる温室効果ガスを観測する衛星いぶき2号。それぞれの衛星の特徴をきちんと理解して、ヒートアイランドの問題を解決する3つの衛星を使う提案をしてくれました。やはりこれも現在の技術では建物1つ1つを調べる、というわけにはいきませんが、街や国といった単位では調べることができそうです。

 

みなさんから頂いたデータを見ながら、「これは出来そうだ」「衛星の長所をよく考えてくれている」などなど、つぶやきながら真剣に選んでくれました。「マジメに選びすぎですかね。」と大木さん。いえいえ、ありがとうございました!

私から、ここに描かれた衛星のような技術は将来実現するのでしょうか?と聞くと、実は大木さんは人工衛星から得られたデータを使う立場として、将来どのような衛星を開発すればよいのかを考える会議にも出席していて、今日のアイデアもいつか取り込めたら......。と言っていました。みなさんが想像したアイデアがいつの日か実現されるとしたら楽しみですね!

ところで、大木さんはどんな衛星データをどのように使っているのでしょう?

 

大木さんがおもに使っているのはSAR((サー)と呼ばれる種類の人工衛星のデータです。SARというのは、人工衛星からマイクロ波を地表面に斜めに当て、地表面から跳ね返ってきた波(後方散乱波)を受信することで観測する仕組みです。マイクロ波は雲を透過することができ、また太陽の光がなくても観測できるため、雨の降っている場所や夜でも観測することができます。ただし、跳ね返ってきた信号の強さの情報だけが得られるので、写真と違って、何が写っているのか、理解するには技術が必要です。

20181023_katahira_07.jpgSARの仕組み

例えば、こちらの画像はだいち2号が撮影した平成30年7月豪雨後の岡山県周辺の画像です。水色が画像解析によって抽出された浸水域を表しています。

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※この画像は、国土交通省からの要請を受け、JAXAが緊急観測を行い、関係省庁、防災関係機関、および自治体に提供されたものです。
https://www.eorc.jaxa.jp/ALOS-2/img_up/jdis_pal2_heavyrain_westernjapan_20180711.htm

 

だいち2号からはSARで得られる信号強度の強さによって白黒(白=信号が強い、黒=信号が弱い、だいち2号に届いていない)でデータが表されます。白黒のデータの中から、浸水域を表す水色の部分を解析したのが大木さんです。

画像下部の海にあたる部分をご覧いただくとわかる通り、水面は黒く表示されます。これは、平たんな水面にあたった信号はそのまま反射してしまい、信号を発しただいち2号には届かないためです(下図)。では、黒い部分が浸水した場所か、というとそうではありません。海はもちろん、池や川もあります。さらに画面中央の網目状に白い部分の見える黒い領域、これは田んぼです。大木さんは過去のだいち2号のデータと今回得られたデータを比較して、白黒の画像の中から川や池、田んぼだった領域と豪雨の被害で浸水してしまった場所を解析します。他にも、衛星から得られるデータだけでなく、地形図などを見ながら斜面の角度から水の溜まらない部分、など様々なデータを人工衛星のデータと一緒に使いながら実際の浸水域と考える部分を特定しています。

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SARで水面を観測すると信号は衛星に届かない(画像では黒く表示される)

災害での救助や支援に役立てるための緊急観測ですから、「なるべく早く情報を提供するため、データ解析は一刻を争います」と大木さんは言います。そのために、日頃から「解析の高速化や自動化の研究も行い、衛星のデータがより活きるような仕組み作りを目指しています」とのことでした。この緊急観測とその解析でも、過去のだいち2号のデータとの比較を行っています。こうした平時の解析の積み重ねがなければ、緊急時の対応もできません。

 

最後に大木さんは、衛星データを使うコツと言うか、心構えを教えてくださいました。

「私たちはJAXAで働いているので、衛星のデータが活用されて、みなさんの役に立ってくれるとうれしいですが、それ以上に必要な情報を得るためには、衛星だけにこだわらず他の様々なデータも組み合わせて使います。そして、解析したデータが正確だったのかどうか、現地に行ってみることもしますし、より詳しい専門家の力を借りることもあります。衛星だけではなく、他のデータや人の力も借りながら必要な情報を得ること、それが本当に大事なことではないでしょうか。」

なるほど、確かに私たちも遊びに出かけるときには、天気予報の雲の画像だけではなく、出かける先がどんなところか、電車やバスは利用できるか、色々な情報を組み合わせて考えますよね。人工衛星のデータも、そんな風に組み合わす新しいデータの1つとして考えられるかもしれませんね。

 

そこでお知らせです!私たちに新しいデータを届けてくる新たな温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」が10/29(月)に種子島宇宙センターから打ち上げられます!「いぶき2号」は世界中の二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスを観測する地球観測衛星です。

いぶき2号について詳しくはコチラ  http://www.satnavi.jaxa.jp/project/gosat2/

未来館では打ち上げが行われる10/29(月)13時頃に、みなさんと打ち上げを見守るパブリックビューイングに加え、このアクティビティ「地球観測衛星を使いこなそう」も実施して盛り上げていきたいと思います。ぜひ、一緒に地球観測衛星を使うアイデアを考えながら、いぶき2号の打ち上げを見守りましょう!

 

※開催時刻、開催日は、打ち上げ状況により変更、または中止することがあります。また、やむを得ない配信の不具合が起きた場合、中継が実施できなくなることがあります。ご了承ください。

 

詳細は下記イベントページをご覧ください。
「いぶき2号」打ち上げパブリックビューイング!」 http://www.miraikan.jst.go.jp/event/1810191423437.html