2026年10月5日(月)、6日(火)、7日(水)の3日間、ニコニコ生放送にて「科学コミュニケーターと楽しむノーベル賞2026」を配信しました。未来館は2026年10月から、施設改修のため半年ほどの休館期間に入っていますが、今年はそんな休館中の配信となりました。
毎年恒例となっているこの生配信ですが、実は科学コミュニケーターたちは、本番のおよそ3か月前から、番組づくりの準備やリサーチを始めています。いったい、どのようにして3日間の生配信はつくられていくのでしょうか?
そこで今回は、今年のノーベル賞生配信の総合司会を務めた私が、「科学コミュニケーターと楽しむノーベル賞2026」ができるまでの舞台裏をご紹介します。私自身も2024年、2025年の2年間、化学賞担当として番組制作に携わってきたので、その経験も踏まえながら、各賞メンバーの頑張りをお伝えしたいと思います。
7月上旬ごろ:担当決定、キックオフ!
ノーベル賞の受賞者発表は10月のはじめですが、未来館でのノーベル賞生配信の準備は7月頃から始まります。各賞の担当メンバーと司会が決まったら、全体のスケジュールを確認し、「ノーベル賞の発表がもっと楽しみになるようなお話」をテーマに、受賞発表までの約1時間の配信で取り上げる内容を検討していきます。
番組で扱うトピックの決め方は各賞によって異なりますが、近年注目されている研究や担当メンバーの専門分野などを考慮しながら、視聴者のみなさんに楽しんでいただけそうな話題をリサーチします。
7月下旬ごろ:番組テーマ決定
この時期には、各賞の番組テーマの方向性が決まってきます。番組を通したメッセージや、テーマの面白い部分、特に伝えたい部分について、軸となる部分を整理していきます。未来館OB・OGのアドバイザーとも相談をして、意見やコメントをもらいながら、番組の全体像を決めていきます。ここが一つの山場なので、スピード感は大切にしつつも、みんなでイメージをあわせながら丁寧に進めていきます。
生理学・医学賞チームは、「細胞内相分離」を大きなテーマに選び、分担してリサーチを進めていました。「相分離」というちょっと聞き慣れないかもしれない言葉をどのように説明するかがポイントになりそうということで、チーム内でも議論を重ねます。
8月ごろ:番組構成・演出検討、コンテンツ作成開始
テーマが決まってきたら、番組構成や演出を考えていきます。どのような順番で話せばわかりやすいか、どんな事例を取り上げるとよいかなどを検討しながら、内容を具体化していきます。
番組を楽しく見ていただくためには、内容はもちろんのこと、演出も重要です。遊び心も大切にしながら検討していきます。たとえば、化学賞チームは、「グリーンケミストリー」をテーマにするということで、いろいろと緑色のものを集めながら、演出を考えていました。
9月ごろ:取材、実験準備、そして受賞者候補のリサーチ
いよいよ、番組で使用するスライドや動画の作成をはじめていきます。わかりやすさを重視しつつも、研究の面白さに迫りつつ、より専門的な情報も盛り込みながら、バランスを意識してコンテンツをつくっていきます。
チームによっては有識者の先生に取材に伺い、インタビュー動画を撮影・編集したり、番組で実験をする場合は予備実験を行ったりします。本番を想定しながら、どのように見せていくかを考えていきます。
そして、ノーベル賞担当の科学コミュニケーターの仕事は、番組づくりだけではありません。ノーベル賞受賞者の発表の瞬間をみんなで楽しむことがコンセプトの番組なので、受賞者が発表されたら、その研究内容について即興で生解説をすることになっているのです……!
そのため、各賞のメンバーで受賞候補者やその研究内容を分担してリサーチし、発表に備えて「予習」を進めます。受賞者を予想することは非常に難しいですが、発表された研究について、みなさんに、なるべくわかりやすく情報を届けるために、科学コミュニケーターはできる限り準備をしていきます。
9月末~10月頭:リハーサル実施
本番1~2週間前には、通しのリハーサルを行い、番組全体の進行や時間配分について確認します。科学的に正しく、わかりやすく伝えられる内容になっているかもしっかりとチェックしつつ、進行についても簡単なすり合わせを行います。
なお、生配信当日には、「裏方」としてノーベル賞を担当する科学コミュニケーターやスタッフもいます。受賞者の発表があったら、受賞者の名前やテーマの日本語訳、プレスリリースの翻訳・要約、図の印刷やフリップの作成などを行い、出演者をサポートしてくれるのです。裏方リハーサルでは、発表の瞬間に慌てず、なるべく早く情報を届けられるように役割分担をし、過去のノーベル賞受賞発表の瞬間の映像に合わせて、事前に各自の動きを確認します。
あとは、各チームリハーサルを踏まえて修正を行い、体調管理を万全にして、本番に臨むのみです!
配信当日:最終調整、本番!
そして、いよいよ生配信当日です。特設スタジオのセットアップを整えて、最終準備を行います。
番組の開始は午後5時半ですが、日中には音声を担当する未来館のテクニカルスタッフや、撮影・配信にご協力いただくドワンゴのスタッフも含めて、番組全体の進行を最終確認します。カメラワークの確認をはじめとして、細かな部分の調整を行います。
そして、本番に向け、スタンバイ……! マイクのチェックなどを行っていきます。番組開始時刻が近づくと、「○分前」の声かけも入ります。
そして、いよいよ本番。5、4、3、2、1……!
1時間半の配信が終わると、まずはひと息。……と言いたいところですが、初日の生理学・医学賞、2日目の物理学賞は、翌日以降の番組で行う5分間解説の作成が待っています。また、受賞発表直後に取材が入ることもあるため、必要に応じて担当の科学コミュニケーターが準備や対応を行います。
そして、自然科学分野の発表が3日間すべて終わると、ようやくひと安心。スタジオを撤収し、科学コミュニケーターにとっての「ノーベル賞の季節」もひと区切りとなります。
来年もお楽しみに! 過去の動画も見られます
このブログでは、未来館のノーベル賞担当メンバーが、生配信当日までどのような準備をしているのか、その舞台裏をお伝えしてみました。番組は90分間ほどですが、それをできる限り良いものにするため、科学コミュニケーターは努力を惜しまず、全力で取り組んでいます。
一方で、ノーベル賞生配信に関わるのは、各賞の担当メンバーだけではありません。当日、裏方としてサポートする科学コミュニケーターやスタッフ、テクニカルスタッフ、ドワンゴのスタッフなど、多くの方が関わって、ニコニコ生配信が行われています。そんな、まさに「舞台裏」で活躍してくださっているみなさんにも、本当に感謝です! 改めまして、いつもありがとうございます!
来年以降もノーベル賞ニコニコ生配信は続いていくと思いますが、舞台裏を知ると、より楽しめる部分もあるかもしれません。動画はニコニコ生放送のほか、未来館公式YouTubeにも残っているので、過去の配信を見返して楽しむこともできます。
未来館は2026年10月現在、リニューアルに向けた準備のため休館しています。休館期間中も、再開に向けてさまざまな準備を進めています。毎年異なるメンバーでつくっているノーベル賞生配信も、年ごとに少しずつ違った雰囲気がありますので、ぜひ過去の動画もご覧ください。
そして、来年もまた担当メンバーが変化しての番組づくりになると思います。来年はどんな番組になるのでしょうか……? 今回のブログで紹介したような「裏側」を踏まえながら、次回以降のノーベル賞生配信もぜひ楽しんでご覧いただけたら嬉しいです。