「人工知能で何したい?」のウラにある「人間ってナンなんだ?」という問い

こんにちは!科学コミュニケーター、漆畑文哉です。

今の仕事はやりがいはあるけれど、忙しすぎる。「あなたにもっとももふさわしい仕事を提案してくれるAI」があるというのだけれど......。──いま、未来館では「ハロー!AI社会 ~人工知能で何したい?」と題したネットアンケートを実施しています。みなさんはもうご参加くださいましたか?「恋愛」「職業選択」「選挙」「結婚」「子育て」「医療」「防災」「介護」「死後」から気になる未来を選んでいただき、あなたの気持ちや考えを伺っています。各ストーリーでどんなAIが登場するのかも必見です。

2020年2月19日時点で、すでに多くの回答をいただきました。ご協力くださいましたみなさま、誠にありがとうございます!!!

受付は2020年2月24日(月)の17時まで。まだ参加していない方はぜひ率直な声をぜひお聞かせください。

https://miraikan-opinionbank.svy.ooo/ng/answers/74c242cea5b7edbba3baab4fa765ec/

前回このブログでは、アンケートを行うに至った背景をご紹介しました。

https://blog.miraikan.jst.go.jp/detail/20200214post-30.html

今回はアンケートの中間結果(2020年2月19日時点)を一部ご紹介します。紹介するのは、特に参加者からの注目度の高い「医療」、意見が真っ二つに分かれている「死後」、使いたいけど使った未来は良いことばかりでもなさそうな「職業選択」の3つです。

あなたのAIとの向き合い方は他の人と同じでしょうか? それとも違うのでしょうか? ちょっと覗いてみましょう。

圧倒的に関心が高い「医療」

まずは、冒頭でご紹介した9つの気になる未来の中で圧倒的に多く選択されている「医療」についてご紹介します。

「医療」のストーリーでは「医者のかわりに簡単な問診を行ってくれるAI」が登場します。

「このAIを使いたいですか?」という質問に対し、95%以上の方が「使いたい」「どちらかと言えば使いたい」を選んでいます。

医療が注目されている背景には、現在世界的な問題になっている新型コロナウイルスの感染拡大も関係ありそうです。実は筆者も先日体調を崩してしまいまして、新型肺炎だったらどうしよう、病院に行ってもよいかな......と、真剣に悩みました。こんなときに問診AIがあったらいいな......と思いました(結果的には普通の風邪だったようです)。

ちなみに、問診ではなく「相談のAI」なら、すでに活躍しています。たとえば2月7日にLINEが厚生労働省の要請を受けて、「新型コロナウイルス感染症情報 厚生労働省」LINE公式アカウントを開設しています。新型コロナウイルスに対する発生状況や予防法、相談などをAIのチャットボットが24時間対応しています。医療とAIの協働はすでに始まっています。

なお、日本科学未来館ではがん医療を中心に、医療とAIの可能性について専門家と一般参加者とで考えるトークセッション&ワークショップ「どう変わる!?がんとの向き合い方──人とAIでひらく新たな医療」を3月8日(日)に実施します。こちらのイベントにもぜひご注目ください。詳細は下記のURLをチェック!

https://www.miraikan.jst.go.jp/event/2003081325434.html (リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)

意見が真っ二つに分かれている「死後」

「AIを使いたい」という意見が多い「医療」に対し、使いたい人と使いたくない人の意見がほぼ真っ二つに分かれているのが「死後」です。

「死後」のストーリーでは「亡くなった人の言動を再現できるAI」が登場します。意見が分かれているのは、亡くなってしまった誰かとAIを使ってまた話したいか、という質問に対してです。

「話したい」を選んだ理由は単純な興味という方もいれば、慰めのため、戦争体験を後世に伝えてほしい、といったように多様な理由が挙がっています。「話したくない」の理由も、過去に囚われたくないという方もいれば、死者への冒涜に当たるという方までさまざまです。「死後」のストーリーを選んだ方の中には、2019年のNHK紅白歌合戦に登場した「AI美空ひばり」を思い浮かんだ人もいるでしょう。

もし本当に故人の言動を再現する技術ができたら、どこで誰がどのように使うのか(もしくは使ってはいけないのか)慎重に話し合っていく必要があるかもしれません。

使いたい!......けど、使った未来はあまり明るくない?「職業選択」

最後に、「医療」とも「死後」とも違う結果が現れているストーリー「職業選択」をご紹介します。

「職業選択」では、「あなたに最もふさわしい仕事を提案してくれるAI」が登場します。このAIを使いたいかという質問に対し、「使いたい」「どちらかといえば使いたい」という方は80%近くいます。「参考程度」や「適性を知りたいから」という理由を挙げた方が多いです。

一方、「AIが一人ひとりにふさわしい仕事を提案するのが当たり前になった社会では、どのような良いことや悪いことが起こると思いますか?」という質問に対しては、良いことよりも悪いことが多く挙がっています。たとえば以下のようなものがあります。

モチベーションが下がってしまう
自分のしたいことができなくなってしまいそう
考えるのをやめてしまいそう
そもそも「ふさわしい」って何?

特に最後の「ふさわしさ」については、定義するのが難しそうですね。ただ現実的には、企業や団体の人事担当者は何らかの基準で採用する人としない人を分けています。適性検査もすでに広く活用されています。AIを使う/使わないという話以前に、振り返ってよく考えなければならない事柄もあるのかもしれません。

また、仕事提案AIを使いたいという方の中には「『ライス』ワークと『ライフ』ワークは別に持ちたい」という意見もありました。仮にこの方のような考え方に立つならば、仕事提案AIを使うからと言って必ずしも「自分のしたいことができない」とはならないのかもしれません。

そもそも「仕事」あるいは「職業」「労働」とは、私たちにとってどういう意味をもった行為なのでしょうか? あなたの価値観次第でAIに対する捉え方やあなたの選択が変わるかもしれません。逆に、AIの登場によって私たちの仕事に対する認識や価値観それ自体も変わっていくかもしれません。

あなたは、どう思いますか?

来たるAI社会で私たちが本当に問わなければならないことはなに?

今回は9つ用意したストーリーのうちの3つのみ、簡単な中間報告をいたしました。アンケートは2020年2月24日(月)の17時までの受付を予定しています。まだ参加していない方は、ぜひ率直な声をぜひお聞かせください。

https://miraikan-opinionbank.svy.ooo/ng/answers/74c242cea5b7edbba3baab4fa765ec/

アンケートで得られた皆さんの声は、ご協力いただいているAI研究者と"見える化"し、未来館WEBサイトをはじめ、さまざまな形で社会に発信、発表していく予定です。引き続きご期待ください!

【参考】

株式会社LINE, 新型コロナウイルスに関する問合せに対応するLINE公式アカウントを開設, https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2020/3075

厚生労働省, 新型コロナウイルスの更新情報, https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics_shingata_09444.html

【Miraikanフォーカスについて】

このアンケートは科学と社会にまつわる未来館注目のテーマ「Miraikanフォーカス」の関連企画として実施します。今年度は、人工知能とこれからの社会をテーマに、「ハロー!AI社会 人工知能ってナンなんだ? そういう私ってナンなんだ?」というタイトルのもと、各種イベントや展示を実施しています。詳細は下記のURLをご覧ください。

https://www.miraikan.jst.go.jp/resources/miraikanfocus/

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