さよなら、ASIMO先輩

みなさん、こんにちは。

二足歩行ロボット・ASIMOに初恋を捧げ、ASIMO先輩の卒業セレモニーでは号泣していたタイプの科学コミュニケーター、長島です。

みんな大好き!なASIMO先輩が、2022331日に未来館を卒業してしまいました。 “ASIMO先輩ロス”のあまり、デスク周りにASIMO先輩グッズを配備しまくっている筆者ですが、いつまでも悲しみに浸っているわけにはいきません。今日は(涙を拭いながら)ASIMO先輩のことを改めてご紹介しつつ、ASIMO先輩の卒業に関わるよしなしごとを、徒然なるままに書きつづりますね。

愛されて、20年

ASIMO先輩が未来館に入職したのは2002年のこと。ただの「展示物」ではなく、わたしたちと同じ「インタープリター(現在の科学コミュニケーター)」として、前館長の毛利衛から辞令を受け取りました。2020年に科学コミュニケーターとなった筆者からすれば、大先輩なのですよ。

20年間、ASIMOの稼働を記録した日誌たち。その数量に圧倒されます。(撮影:森嶋 夕貴)

それから20年、15787回もの実演を行いました。その間にお会いしたお客様の数は200万人以上! 長野県の総人口と同じくらい、多くの方にご覧いただきました。

皆さんからの「ASIMOへ」

それだけ多くの方から愛されていたASIMO先輩。20221月に卒業が発表されると、たくさんの方が会いに来てくれました。未来館で準備したASIMO先輩へのメッセージボードには、500件以上ものメッセージを頂戴しています。ほんの少しだけ、ご紹介しますね。

特設パネルには500以上ものメッセージが。皆さんのASIMO先輩への愛情がひしひしと伝わってきますね。(撮影:科学コミュニケーター 佐野)

ASIMO先輩の卒業を祝ってくださったり、優しい愛情を向けてくださったり。

“ASIMO今までありがとう 未来館卒業おめでとう

“I love you ASIMO また、あおうね

またどこかであおうね

“あしもへ ぜったいにあしもをわすれないよ”

“ASIMO大すきだよ

ASIMO先輩のこれからを思う声もありました。

“ASIMOどこいくの?

あしもそつぎょうおめでとう。げんきでね

ASIMO 20年以上、お疲れ様でした。会えなくなるのはさびしいけど、家にはたくさんのASIMOのぬいぐるみがいるので、これからも毎日一緒だよ”

筆者と同じように、動揺と喪失感を隠しきれないお声も。

アシモ様 言葉が見つかりません。お疲れ様でした。

そして、ASIMO先輩が皆さんに及ぼした影響の大きさを物語るようなメッセージもたくさん頂きました。

“ASIMOのおかげで今があります。夢をくれてありがとう!

初めてASIMOに会ったときのトキメキが忘れられず、エンジニアになりました。ASIMOがいなければ今の私はありません。20年間ありがとう!!

“ASIMOへ 夫とまだ結婚する前、デートで未来館に来て、ASIMOに出会いました。いまは小学生の息子がASIMOが大好きで、今日はASIMOに会うために名古屋から来ました。ありがとう!忘れないよ

もうアシモよりも背が高くなってしまった アシモ今までありがとう!大好き!

国際展示場でASIMOとサッカーをした日のことは今も覚えています。あれから20年近くが過ぎ、そろそろ理学学士になれそうです。理数科目が嫌いな私がサイエンスの世界に残っているのは、あの日があったからです。定規は今も使ってます。ありがとう。

“ASIMO卒業おめでとう!2007年にキミとはじめて出会い、今では大学でロボットと共生していくための勉強を始めました。キミと同じ時代に生まれて、キミに出会えて本当に良かった!ありがとう、ASIMO!”

“ASIMOへ 僕がASIMOを越えるロボットを作ります。

未来館の準備したメッセージボード以外にも、ASIMO先輩へのあふれる愛から、花束やお手紙を未来館まで届けてくださった方もいらっしゃいました!

心を込めて書いていただいたであろうお手紙には、笑顔でASIMO先輩と並ぶイラストや、ASIMO先輩がきっかけで夢を見つけた、という素敵な報告を添えてくださっていました。

涙なしには読めないお手紙の、ほんの一部をご紹介します。

ダンスを見せてもらうととっても元気がでてきます

“ASIMOいままでありがとう

アシモは、私にとって、かけがえのないそんざいです。会えなくなってしまうけど、私の中ではずっとアシモが一番です!!!

お手紙やメッセージボードだけではなく、SNSTwitter)にASIMO先輩の未来館卒業をテーマに、とっても「エモい」イラストをあげてくださった方も。未来館が閉まった夜に、未来館の展示場内でASIMO先輩のご近所さんだったセラピーロボット・パロのもとへ、ASIMO先輩がこっそりとお別れの挨拶をする、というストーリー。筆者は号泣しながら「どうして『♡』は1回しか押せないんだ……」と憤っておりました。

ASIMO先輩へのたくさんのメッセージを拝見しながら、老若男女関係なく、本当に多くの方から愛されていたのだなぁと感慨深く思っております。一つ一つ異なっていて、そして心温まるようなASIMOとの物語。全てをご紹介できないのがもったいなくて、申し訳ないくらいです。お寄せくださった皆さん、本当にありがとうございます。


2022317日の「未来館卒業セレモニー」から、331日までの間、ASIMO先輩は「未来館卒業記念」の特別実演をしてくださいました。

その中でも紹介されていましたが、ASIMO先輩を通して培われた技術は、ASIMO先輩とは違った形で私たちの生活の中で活用されようとしています。

例えば、ASIMO先輩のバランスをとる技術はバイクの転倒防止技術として応用開発されていたり。ASIMO先輩の走っている時に滑らないようにする技術は車の横滑り防止技術として応用されていたり。そして、ASIMO先輩の器用な指先は、現在開発中のアバターロボットに活かされる予定だとか。

ASIMO先輩がいない寂しさは残れども、先輩の名残を感じながら、皆さんも一緒に未来のロボットに思いを馳せてくださると嬉しいです。

未来館卒業セレモニーを終えて、お部屋に戻るASIMO先輩(撮影:森嶋 夕貴)

そして、動くASIMO先輩にはもう会えないですが、20228月までは、日本科学未来館で開催中の特別展「きみとロボット ニンゲンッテ、ナンダ?」で静かに立っているASIMOには会うことができます。

筆者のようにASIMO先輩ロスに耐えられず、日常生活に支障を来しそうな方はぜひ、「きみとロボット」展にいるASIMOに会いに来てくださいね。

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