この日語られたこと、考えたこと④ ~個人と社会は何をすべき?参加者の意見~

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今回のイベントでは、参加者に以下のようなワークシートをお配りし、「今後、福島で甲状腺がんが多発する可能性が考えられる。他の健康リスクも高い。この状況に対して今、私達は何ができるのか?何をするべきなのか?」に対して、個人でできる/すべきこと、そして、社会でできる/すべきこと、を記入していただきました。
 
いただいた意見やアイデアを内容ごとに分類して紹介します。トークイベントの内容はこちらのブログ()をご参照ください。
 
 
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■適切な判断のために個人として必要なこと

個人としてできること・すべきこととしてまず挙げられたのが「放射線や統計に関する基礎的な科学的知識を身につける」ことでした。

<記入いただいた意見>

●自分自身が科学的な議論にしっかりついていけるよう、リテラシーを高める。(20代)

●放射能、放射線、健康影響について書籍や論文やインターネットでいろいろ調べて知り、議論し考える。放射線が健康影響を与えること自体は確かなので、自分も周りの人も被ばくを極力少なくするよう努力する。(50代)

●まずは正しい知識を得る。(20代)

●放射線は難しいと避けずに、自分も理解する努力をする(40代)

●そもそも、甲状腺がんはどんながんでどこまで危険なのかを知る(危険じゃない?!)。(30代)

●放射線に対して、不必要に怖れない。(20代)

●正しく怖れることがいかに難しいことかを知る。(60代)

●自分が何を知らないのかを知る。知らなきゃ何も始まらない。(30代)

 

 

また、「情報を多方面から集め、その信頼度を見極めて自らが判断する」とする意見もいくつか出されました。おもに新聞やテレビ報道、インターネット、ツイッターなどのメディアから情報収集する方が多いと思いますが、中にはデマや偏った情報である可能性もあります。情報をすぐに鵜呑みにせずに、自分で判断する習慣をもつことが大切だというものです。

<記入いただいた意見抜粋>

●多方面からの情報を収集し、すぐに危険だ、安全だと判断せず、冷静に対応すべき、できるようにする。(10代)

●信頼できる情報を収集し、整理する。(20代)

●さまざまな意見を聞き、自分ができることをする。(40代)

●偏った情報だけで判断しない。(50代)

●マスメディアや無根拠説にだまされず、事実と論理から判断する習慣をつける。(50代)

●適切に判断するために必要な情報を収集し、理解する必要がある。(50代)

●放射線についてどの程度で危険なレベルなのかと冷静に判断する。(50代)

●問題について理解し、関心を持つ。(20代)

●過小評価と過大評価を避ける。(20代)

●事実を並べてみて、思い込みや先入観によって、事実からかけ離れた認識をしていないか冷静になる。(20代)

●常に疑問を持ち続ける。(60代)

●他人の意見をむげに否定せずに建設的な議論をする。専門家に対して、冷静に接すること(健全な懐疑は必要)(40代)。

●今起きていることを記録・分析して将来に役立てられるようにする。我々は同じ過ちをやってしまうかもしれないからです。(40代)

●正しい判断によって行動はすばやく。早く対策をとれば、被害は少なく抑えられ、経済損失も抑えられる。(60代)

 

 

さらに、必要な情報を収集して「ゼロリスクを求めるのではなく、自分でリスクを選択するという姿勢を持つこと」が重要だと感じた方もおられました。私たちはどこにいても、運動不足や野菜不足などの生活習慣による病気のリスクや、大気汚染など環境による病気のリスクなど、健康を脅かすさまざまなリスクに囲まれて生活をしています。あるリスクを抑えるための対策が、別のリスクを増やしてしまう状況下では、リスクを選択する必要があるとした、越智医師のトーク内容に共感した意見が挙げられました。

<記入いただいた意見抜粋>

●リスクを自分でも考えて選択する。科学というものを参考にした上で、これからの行動を決めたい。(10代)

QOLを考えて選ぶ。←がんリスク=放射性物質と思いすぎない。健康にもゼロリスクを求めない(20代)

●放射線のリスクはどうする?できるだけ避けるのが良いが、正しい情報を自分にあてはめてストライクゾーンを自分で決める。自分とは大人も子どもも。(40代)

●絶対安全を求めない。(20代)

●選ぶことを明言しよう。(20代)

●情報提供を受けた上で、被ばく回避行動をどこまでとるのか"選択"(禁煙リスクとは異なり、被ばくは個人が責任なく、選択の余地無くさらされたリスクである)(30代)

●余計な心配をしない(60代)

 

 

そして、「不安な気持ちを自分でコントロールするための心がけも必要ではないか」とする意見が挙げられました。

<記入いただいた意見抜粋>

●自分の心配や不安を書き並べてみて、それがリアリティのある不安なのか見直してみる。(20代)

●がんリスクは気をつけて避ければ良いが、精神的なものはどうするか?日頃から外とのコミュニケーションを心がけてとじこまらない。(40代)

●かわいそうと思いすぎない。前向きに考える。(20代)

 

 

 発がんリスクを低減するために「できる限り被ばく量を低く抑える(ALARAの原則)とともに、他の発がんリスク要因を減らす努力をする」という具体的な意見が出されました。

<記入いただいた意見抜粋>

●線量の高い場所に近づかない。(10代)

●被ばくを可能な限り避ける。(60代)

●キノコや牛乳等の食品に気をつける。(10代)

●甲状腺がんに関しては正直、ヨウ素初期被ばくのダメージは取り戻しようがないので、代謝を落とさないようにするしかないとあきらめています。(40代)

 

 

 

■適切な判断のために社会として必要なこと

 個人の適切な判断のために、社会がどのように機能しなければならないのか、また社会の意思決定には何が必要かという視点からの意見も数多く寄せられました。

そのうちのひとつは、個人として必要なこととして挙げられていた、適切な情報を集めることに対応する、「社会として適切な情報提供が行われることが大切」というものでした。

<記入いただいた意見抜粋>

●各選択肢のリスクをすばやく提示(見やすくする)(10代)

●きちんとした情報提供を行う。(10代)

●福島県民の方々へのきめ細やかな情報提供と最大限のサポート。(20代)

●適切な情報提供(科学者が「安全だ」と一方的にアナウンスすることはリスク、コミュニケーションではない)(30代)

●正しい情報は数字で見られるが、うのみにしないようにわかりやすくリスクも説明してほしい。(30代)

●問題の周知。(20代)

●科学を正確に、かつ分かりやすく説明していく。(40代)

 

 

また「リスクがあることを前提として、予防原則に則った制度をつくること。そして、それらの基本的な考え方を、人々に認識してもらうことが大切である。」という意見が出されました。

<記入いただいた意見>

●教育をしよう!!子どもに、大人にも、政治家、メディア...自分で選ぶことの大切さ、政治・国ばかりに頼りすぎたら×!!(20代)

●予防的(疫学的)な考え方にのっとった政策を進める。(40代)

●災害のリスクは多種多様。後出しの対策は絶対に間に合わない。(30代)

●放射線に対しても、絶対安全を求めすぎない。規制もすべきでは?「不安→すぐ規制」をやめる(事故後すぐは仕方ないけど)。(20代)

●きちんとリスクを認識できる立場から、意思決定を行う。(20代)

●科学的な考え方を否定もせず、全面依存(盲信)もしないで政策を進める。⇒予防原則を政策に埋め込む。(科学的因果関係が不確実でも疫学的措置をとる)(40代)

●ゼロリスクは無理としても、できる限りましな社会を作ることをあきらめない。(40代)

 

 

さらに、「被災者や当事者の声に配慮した政策をとることが大事である。」との指摘もなされました。

<記入いただいた意見抜粋>

●「人権」の観点からいわれなき被ばく、生業の損失、共同体の破壊に対する、福島県の人々の怒りを聞く姿勢。(いわれない被害であるなら、どれほど低線量被ばくであっても抗議する権利がある。その権利をうやむやにしたまま自己責任論、自由論を唱えない。押しつけない)(40代)

●福島の人と話をし、現状と地元の人の気持ちを(理解というとおこがましいが)知ること。少しながら実行しているが、それから得た思いを伝える。(60代)

●現地にいる人に対する想像力をはたらかせること。(40代)

●福島への理解を意識高く。地域への活性化の試作を、勇気を持って行うことが大事だと思う。(50代)

●行政の対策もすばやく!しかしインフラばかりにお金をかけてほしくない。人間の感情に配慮した対策を。(60代)

 

 

■甲状腺がんの多発の可能性に対する社会としての対応

将来の甲状腺がん多発の可能性に対しては、具体的に次の3点が挙げられました。

「甲状腺がんの基礎知識の普及」

<記入いただいた意見抜粋>

●そもそも、甲状腺がんはどんながんでどこまで危険なのかを知る(危険じゃない?!)。は社会にも知られるべき。甲状腺がんって何?放射能/放射線って何が違うの?根本的な疑問解決されない。(30代)●甲状腺がんは予後の良いがんであるため、大きな抜本的な対策は必要ないと思われる。ただ最悪を期した対応はとるべきでそれを冷静に行う。(10代)

 

「検診の継続および受診率低下を防ぐこと」

<記入いただいた意見抜粋>

●甲状腺がんの検査の定期的な継続。(10代)

●とにかく県民調査、甲状腺がん検査の受診率、特に10代後半で被ばくして20代を越えてくる一番受診率が低く、発症率が高くなる世代の受診率向上が真っ先に優先してやるべき。(50代)

●甲状腺がん検査などに、個人が関心を持つよう啓発。(60代)

 

「被ばくと甲状腺がんの因果関係について、科学的な調査を継続すること」

<記入いただいた意見抜粋>

●甲状腺がんの追跡調査をきちんとして、疫学的なものを明らかにすることを支援する。(20代)

●福島の事故と甲状腺がんの発症率との因果関係と数字を明確にする(50代)

●甲状腺がんの福島の現状の流布。(20代)

 

 

■甲状腺がんにとどまらない市民の健康状態に対する社会としての対応

参加者との議論は、甲状腺がんだけでなく、福島県民の直面する健康リスク全般についても及びました。そして、「震災によって生じた健康影響を全体的に把握し、社会の健康リスクを下げるための対策および健康管理が必要」との意見が挙がりました。

<記入いただいた意見抜粋>

●被災地域で住民の健康状況が悪化していることをしっかり認識し、国として福島オリジナルの健康促進対策を講じるべき。(20代)

●予防策はとりながらも、「起きたこと」一つに着目するのでは無く、全体として対応策、影響を緩和することに金をかけるようにしたい。(20代)

●福島は関連死が多い。社会としてはがんに対する施策よりも自殺を含めた孤独死や関連死に手当をする必要がある。行政はもう少し俯瞰した政策をするべき。(60代)

●今後起こる固形がんの増加に対して、被爆者手帳の交付等で健康管理する必要がある。(60代)

●コミュニティやくらしを立て直す努力をしていきたい。(60代)

  

 

■福島の復興に向けての政策について社会がすべきこと

さらに、県民の健康問題だけにとどまらず「もとのコミュニティを維持しつつも、県外避難を個人が選択できるような仕組みを作るべき。そのための議論が必要。」との意見も挙がりました。

<記入いただいた意見抜粋>

●被ばくが増える帰還策をやめて、ふるさと住民票のような災害にも使える新しい政策を全国的に実行する。(50代)

●避難を選択することができるように今からでも避難できように住宅の提供をしたり、避難住宅の延長などを行う。(10代)

●その"個人の選択"に対して、どの範囲にどのような支援を講じるのか議論する(強制避難のように国家がどこまで強制介入するのかの問題ではない)

●避難・滞在・帰還"のいずれを選択しても社会として支援すべき範囲はどこまでだろうか

●今回の支援不足を踏まえた避難計画の策定し、追跡調査体制を作る(30代)

●(社会として、「「共同体の生活様式全体をもって共同体ごと移転する」という理想を立て、どれだけそこに近づけられるかという観点から政策を立てる。」)その実行に必要な)税負担(40代)

 

 

■福島の教訓を世界に発信

自然災害ときっかけとした巨大な事故から私たちは何を学び、何を後世に残すのか、といった視点から、「知見や教訓を国際的に共有して、地球全体の減災に取り組む」必要があるとの意見が挙げられました。

<記入いただいた意見抜粋>

●越智先生のおっしゃる経験を教訓に原子力事故だけではなく、起こりうる災害に対する計画と対策を、国をあげて考え、実行すべき。これらの検討についても国際的に情報共有し、地球社会として減災に取り組むことは日本の役割なのではないか?(60代)

 

 

 以上、参加者から寄せられた意見を整理して紹介しましたが、実は最初に設定した設問の枠に収まらないその他の意見も、多数ご記入いただきました。震災と原発事故に関して、実に多様な文脈が存在していることを改めて教えていただく機会となりました。

 

さて読者の皆さんは、いかがだったでしょうか。参加者のアイデアを読んで、共感すること、共感しないことは人それぞれだと思います。でも今までの自分にはなかった考えや、少しでも自分の考えや心がけが変わるようなアイデアに出会えたのではないでしょうか。

 

個人としてできることとして、すぐに実行可能なこともありますし、正しい情報を提供できる場所を作るなど、社会として仕組みづくりが必要であることもあります。

 

何が個人には足りないのか、社会には足りないのかを洗い出し、どうすれば足りないものを補えるのかをアイデアを出しながら考える──この議論を様々な立場の人(今回は研究者、医師、一般の方)と行うことで、これまで見えなかったことが見えてきたり、社会が変わったりするきっかけになると思うのです。

 

今回は、ファシリテーターのリードが不十分だったので、参加者のさまざまなアイデアをイベント内で引き出し、議論することができませんでした。しかし、アンケートの結果から参加者の7割は"新たな発見・気づきがあった"と回答し、参加者の5割は"考え方やものの見方に何か変化があった"との回答が得られました。程度に差はあっても参加者の中で"変化"が起こっているのを感じることができました。

 

この気づきや意識の変化をさらに多くの人々と共有して、問題解決に向けた対話の場をさまざまに創出していきたいと思っています。

この日語られたこと、考えたこと
➀ 低線量被ばくの発がんリスクと福島の甲状腺検査の結果の解釈
➁ 震災によって起こった健康被害
③白熱したディスカッション
個人と社会は何をすべき?参加者の意見(この記事です)

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