こんにちは。 アサガオ係の科学コミュニケーター、渡辺です。
今回の記事のタイトルは「かんさつたいせつ」 = 観察大切。
みなさんは、最近、何かを観察していますか?
わたくしの場合は、自宅から駅までの通勤路で出会う、ネコの観察。
勝手に"デブネコ"と名付けたネコの行動を観察するのが、日課となっております。
観察しすぎて、いつもの電車に乗り遅れることもあります... が、
"デブネコ"と友達になりたいがために、
人目も気にせず、座り込んで観察しています。
観察の甲斐あって、少しは意思疎通が図れるようになったかも!?
みなさんも、よく考えてみると、生活の様々な場面で、
観察をしているのではないでしょうか。
わたしは、アサガオ係として、未来館の変化アサガオを育てていますが、
そもそも変化アサガオとは、江戸時代から受け継がれてきたものです。
400年近くも前から受け継がれてきた背景には、
アサガオを栽培してきた人々の 注意ぶか~い "観察" があります。
たとえば、最近未来館で咲いたこちらの変化アサガオ。
名前は、青爪龍葉紅覆輪総風鈴獅子咲牡丹
「あおつめりゅうばべにふくりんそうふうりんししざきぼたん」 といい、
花弁の部分が、獅子咲き という変異をした変化アサガオです。
この写真のアサガオ、種ができないんです。
・・・ とお客様にお話すると、
「えっ? じゃあ、このアサガオは種から育てたんじゃないんですか?」
と聞かれます。
答えは、「はい。種から育てています!!」。
ん?? 種が出来ないのに種があるってどういうこと~??
そうですよね、普通に考えると、訳がわかんないですよねぇ。
《種が出来ない変化アサガオの維持》
以前、ブログ記事(朝の顔、変な顔)(リンクは削除されました)でも少しご紹介しました が、
アサガオの花や葉の形や色などは、遺伝子によって決められています。
遺伝子は、遺伝の法則に従って、子孫へと受け継がれていきますので、
例えば、獅子咲き の遺伝子も、自家受粉によって、下の図のように遺伝します。
M→元の野生型遺伝子
m→突然変異によって獅子咲きを引き起こす遺伝子を示し、
"mm" を持つアサガオが、獅子咲き になります。
獅子咲きでは種が出来ないのですが、Mmを持つ丸咲きのアサガオが自家受粉すると、
MM、Mm、mmと、3タイプの遺伝子型を持つ種が出来ます。
外見ではこのような遺伝子型の違いは区別できませんが、
このうちmmの種が、獅子咲きのアサガオとなるのです。
上の図のように、種全体からすると、1/4がmmとなり、獅子咲きになる計算です。
MMでもMmでも、人間の目では同じに見える丸咲きのアサガオですが、
獅子咲きのアサガオは、Mmを持つアサガオからしか生まれません。
ですから、実際の手間を考えると、獅子咲き のアサガオが咲くのは、
1/4 よりも低い確率になるでしょうね。
ちなみに、遺伝の法則として有名な"メンデルの法則"が発表されたのは、1865年。
(再発見されて知られるようになったのは1900年)
江戸時代(1603-1863)の人々は、遺伝子や遺伝の法則などは知らなくても、
日々の注意深い観察と記録に基づいた経験則によって、
獅子咲き のような変化アサガオを維持したのでしょう。
さて。
毎日の変わらぬ日常に、変化が欲しいと願うあなた!!
いつもより目を大きくして、周りの物や人などを、
改めて観察してみてください。
もしかすると・・・
近所で新種の生き物を発見したり!?
嫌いな人が、実はイイヒトだったり!?
好きな人の、好きなモノがわかったり!? するかもしれません。
この記事を最後まで読んでくださったみなさまに、
"観察" で、イイコトありますように ♪