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夜空に浮かぶ星は、なぜ光っているのでしょうか?
その正体は、「核融合エネルギー」。
実は、私たちの"産みの親"と言えるほど、縁が深いんです。
こんにちは。福田です。未来館で、サイエンティスト・トーク「1億度のプラズマを閉じ込めろ!地上に太陽をつくる核融合研究の最前線」が開かれます。さらに、自然科学研究機構 核融合科学研究所が主催するイベント「Fusionフェスタ」もあります。今回のブログは、イベントに合わせて取材した、岐阜県土岐市の同研究所のレポートです。
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冒頭で「核融合は私たちの"産みの親"」だと書きました。一体、どういうことなのでしょうか?夜空に浮かぶ星の光は、静かに瞬いていますが、実際には、核融合反応が活発に起こっています。そして、水素から鉄までの原子を作っているんです。つまり、私たちの体を作っている主な原子は、どこかの星の核融合反応で生まれたんです!
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地球から1番近い恒星の太陽も、核融合エネルギーで光っています。つまり、私たちが使っているエネルギーのほとんどは、元をたどれば核融合エネルギーに行き着くんです。そして、このエネルギーを地球上で使う仕組みが「核融合発電」。つまり、地上に太陽をつくろうとしているんです!
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太陽の中心はどうなっているのでしょうか? よく表面は6000℃、黒点は4000℃と聞きますが、中心は1500万℃もあります。想像もできませんが、そんなところに行ったら、ただじゃ済みそうにありませんよね。太陽の中心では、水素原子が、プラスの電気を持つ原子核と、マイナスの電気を持つ電子に、バラバラになっています。このように高温でバラバラになった状態のことを「プラズマ」と呼んでいます。このバラバラになった原子核同士が、高速で衝突してくっついたときに、莫大なエネルギーが生まれるんです!
(ちなみに原発の「核分裂」は、ウランという巨大な原子が分裂したときにエネルギーが発生します。同じ「核」という文字が着きますが、原理は異なります)
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取材した研究所では、将来の核融合炉の実用化に向けて、高温プラズマの実験を重ねています。それでは早速、研究所の中に入りましょう。最初は「制御室」です。 足を踏み入れた瞬間、そのパソコンの画面の数に驚かされました。長い机の上に、隙間がないほどにびっしりと200台以上並んでいます。装置のいろんな場所の温度や密度など、100種類以上のデータを検出しているそうです。
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突然、前にある大きな画面が、白く輝き出しました。
「今2000万℃くらいですね。でも壁に触れると、冷やされて一瞬で消えてしまう」
研究所の竹入康彦教授が、説明してくれました。画面に映っていたのは、核融合炉の中。高温のプラズマが、光を放っていたんです!
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2000万℃! 太陽の中心の1500万℃を超えています! 実は、地上で核融合反応を起こすためには、1億℃以上必要だと考えられているんです。さらに、竹入教授は「壁に触れると消えてしまう」と言いました。ってことは・・・そうなんです。プラズマは宙に浮かせて閉じ込めないといけないんです! 太陽は地球の33万倍ある質量による重力で、プラズマを閉じ込めています。地上では、磁石の力を使ってプラズマを浮かせて閉じ込めるんです!
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この研究所にある「大型ヘリカル装置」は、2重らせんの円形の超伝導コイルを使って、ドーナツのような形をしたねじった磁場を作り出して、プラズマを閉じ込めています。装置の中を見てみましょう。確かに! ねじれてますね!
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「この10cmほどの間で、-270℃と1億℃の温度差があるんです!」
突然、竹入教授が装置に手をかざして言いました。超電導コイルは、-270℃に冷やして電気抵抗をゼロにした導線に、大量の電気を流して強い磁石を作るものです。一方、核融合炉の中のプラズマは1億℃です。その2つが、たった10cmの距離で共存しているというのです! これには驚きました。
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いよいよ、実験装置がある部屋に入ります。中心にある、円柱の形の部分が、核融合炉です。その周りにはプラズマを加熱するための装置が5台。また超電導コイルを冷やすための液体ヘリウムの配管もあちこちに。加熱と冷却のための装置や配管が、すき間を縫うように収められていました。
サイエンティスト・トークでは、「今どこまで実現していて、何が足りないのか」、「どの程度のリスクがあるのか」などを整理。さらに、関心が高い「原発と核融合はどう違うのか」という話題にも切り込みます。「暴走事故は起こる可能性はあるのか」、「放射性物質が漏れ出したらどの程度のリスクなのか」。ベネフィットとリスクを見極めた上で、核融合発電が切り開く未来について、来館者と一緒に考えます。現在、小道具を作成しながら、準備をしています。