未来館もケパランもアップデート!
未来館は2026年10月1日から2027年4月22日まで施設設備工事のため休館するのですが、8月26日のお知らせにて、来春のリニューアルオープンで公開する展示を発表しました。
この中に、オリジナルパートナーロボット「ケパラン」のアップデートと書かれていたことで、驚いた方もいらっしゃるでしょう。
実は、ケパランは半年間の休館期間で大きく成長しようとしています。具体的には、ケパランが自ら移動して周囲に積極的に働きかけられるよう、歩行機能の向上に取り組むほか、機体のサイズアップや機能の拡充を進めます。機体のサイズアップにあたっては、ケパランの成長を反映したデザインを採用。また、周囲の状況を正確に把握するセンサーとそれを活かすソフトウェアを強化し、より豊かで主体的なコミュニケーションの実現を目指します。
つまり、文字通り一回り大きくなった姿でリニューアルオープン後にまたみなさんとお会いできるはずです。これ以上詳しくは現時点(2026年9月)ではまだ言えないのですが……。今後少しずつお伝えしていきますので、楽しみに待っていてくださいね。
さて、ケパランの現在の機体がアップデートされるにあたって、このブログでは2023年11月から常設展示で活躍した現在の機体の、ロボットとしてのしくみを記録として残していきます。モフモフしてかわいい見た目が印象的なケパランですが、その裏にはさまざまな技術や工夫が詰め込まれています。
ケパランとは、どんなロボットなのか?
ケパランは、人とロボットの関係性を考えるきっかけとなることを目指して、未来館にやってきました。公開からこれまで、「みんなで育てる」をコンセプトに、来館者の皆さんからいただくご意見を参考にしながら、感情表現やさらなる動作などを開発し、搭載してきています。
ケパランは、トヨタ自動車株式会社の協力のもと、同社の未来創生センターが開発するマスコットロボットの技術を基盤につくられています。以下では、現在の機体のケパランがどのようなロボットなのかを知っていただくために、「動き」「物体認識とリアクション」「毛皮と排熱」の観点から仕組みをご紹介します。
センサーと動作
ケパランは身長約70cmとコンパクトなサイズながら、内部には34対の関節とモーターを備えています。それぞれの関節には、モーターの位置や動きの速さを正確に制御するための装置が組み込まれており、小さな身体でも二足歩行や片足立ち、自立歩行といったダイナミックな動作が可能です。お腹の下のほうには体の傾きを計測するセンサー、足裏にはかかっている力を計測するセンサーが備わっており、これらで姿勢に関するデータを1秒間に1000回測ることでバランスをとっています。
物体認識とリアクション
ケパランの目と言ったら、このつぶらな瞳!

……ではあるのですが、外界を認識するための本当の目は、展示台に設置されたこの広角カメラです。

新しく見たものにすぐに反応できるように、1秒間に20回のペースで映像データを取り込みながら、来館者が手を振っている様子や展示に設置されたアイテムなどをケパランは認識します。そして、その状況に応じたリアクションを自動的に選択して返します。あらかじめ画像データを学習させることで、物体認識の精度を上げています。
また、来館者にケパランとの意思疎通がとれていると感じてもらい、短時間で心を通わすことを目的とした機能も備わっています。例えば、ケパランはステレオカメラを利用して対象までの距離を計測し、人や物の移動を追跡して、その対象がどれくらいの時間ケパランの視野内にいたかという情報も取得しています。つまり、「どの人や物が近づいてきたか」「どれくらいの時間そこにあるか」といった情報を把握しているのです。これらの情報をもとに、対象の種類、距離、滞在時間をスコア化し、総合スコアが最も高い対象……つまりケパランが一番気になる相手に優先的に反応する仕組みを備えています。
さらに、ワンパターンにならないよう、リアクションの動作は60種類以上用意されています。
毛皮と排熱
毛皮で覆われた愛らしいデザインでロボットらしさをやわらげ、まるで生き物のようにも感じられる点が、ケパランの大きな特徴といえます。
しかし、ケパランの内部には多くのモーターや制御機器が搭載されており、そこから発生する熱を外に逃がす「排熱」をしなければなりません。全身を毛皮で覆う構造は本来、排熱の面で大きな課題となります。しっかり排熱するためには、どこから外の空気を取り入れ、体内の熱い空気を外に出すかという効率的な空気の流れ(エアフロ―)をつくることが重要となります。そこで、ケパランの外装を制作したアーティストとロボットエンジニアがともに検討を重ね、パーツを分けて毛皮をつくるなどデザイン性とエアフロ―性能を両立できるような外装設計を行いました。 また、空気を出す排気口も毛皮の隙間に配置することで目立たないようにしています。これらの工夫によって内部温度は約60℃に保たれ、安定した稼働を実現しているのです。
今までのケパランのあゆみ
ケパランダンス&ケパラン音頭
常設展示での実演では、常設展示「ナナイロクエスト」のテーマソング「ナナイロカラフル」のダンスに加え、2025年から夏季限定で皆さんと一緒に盆踊りのように踊る「ケパラン音頭」を披露してきました。YouTubeでは、ほかにも有名楽曲に合わせて踊るショート動画を公開しています。
ケパランがダンスを覚える方法ですが、人がレッスンをして振り付けを教えている……のではありません。実は、モーションアクター(キャラクターの動きや演技を体で表現し、その動きをモーションキャプチャーで収録する職業)の方にダンスを踊っていただき、それをデータ化してインストールすることで習得しています。
振り付けの動きのデータを、ケパランの身体で踊りやすいように再度エンジニアが調整することで、なめらかでダイナミックなダンスを実現しています。
【Tell Your World】ロボットが踊ってみた【ケパラン】 https://youtube.com/shorts/cZw9QUfPKxc?si=zNRv7W2FGUrn_yYl
うごかせ!ケパラン
2025年の夏に開催した、ケパランを用いたプログラミングワークショップイベントです。
参加者はこのイベントのために開発されたプログラミングツールを利用して、PCの画面の中のケパラン3Dモデルを動かすプログラムを作成します。その後、なんと展示フロアにいるケパランにも自作のプログラムをインストール。それぞれのプログラムに従って本物のケパランが動いてくれました。
このイベントではカメラ認識に加え、通常時には設定されていないマイクによる音声認識も用いながら、参加者の声に反応してリアクションを返すケパランを見ることができました。
何よりプログラミングの中で、「どうすればケパランともっと魅力的なやりとりができるか」をそれぞれが工夫し、ケパランへの思いを込めた動きを作ってくれたのが印象的でした。
こうした試行錯誤を通じて、参加者がロボットと人間の関係性を考えるヒューマン・ロボット・インタラクションの基本的な考え方に自然と触れることができたイベントでした。
ぬいぐるみ販売開始
ケパランお披露目当初からご要望の声も多かったぬいぐるみを、2026年3月から未来館ミュージアムショップで販売しています。
みなさんのお手元でもケパランを可愛がっていただけるようにと製作したものですが、それ以外にも大切な役目があります。
まず、先述の物体認識とリアクション機能の拡張として、ケパランがこのぬいぐるみを認識したときの反応を追加することができました。実は、未来館にいるケパランにぬいぐるみを見せると、特別なリアクションを返してくれます。これまではあまり表立って紹介してきませんでしたが、これもケパランに込められた小さな遊び心のひとつです。
また、このぬいぐるみは視覚障害がある方への情報保障にも貢献しています。これまで展示フロアでは物体認識とリアクションを解説した音声ガイドに加え、サポートアイテムとしてケパランの毛皮を用意していましたが、実際のケパランの姿かたちを確認することはできませんでした。ぬいぐるみができたことによって、触察を通してケパランの姿を伝えやすくなり、より多くの方にケパランを身近に感じていただけるようになりました。
おわりに
ケパランは、愛らしい見た目の裏側に高度な制御や認識の技術など、人との関わり方を考えるためのさまざまな工夫が詰め込まれたロボットです。展示でのやりとりやダンス、ワークショップなどを通じて、多くの来館者にとってロボットを身近に感じるきっかけになったのではないでしょうか。そしてその歩みは、「みんなで育てる」というコンセプトのとおり、来館者のみなさんとの関わりのなかで築かれてきました。
現在展示中のケパランは、みなさんとの経験や思い出を糧に休館中に成長し、新しい姿でまた皆さんとお会いすることになります。来年の春を、ぜひ楽しみにしていてください。