みなさま、明けましておめでとうございます。
2012年は、昨年気づき築いた絆をさらに深め、明るい年にするようがんばっていきます。
今年も、どうぞよろしくお願いいたします。
昨年12月23日に東北大学の蔡安邦(さい あんぽう)教授をお迎えしたサイエンティスト・トーク「2011年ノーベル化学賞 これが準結晶だ!!」は満員御礼の大盛況で終わりました。
「難しい内容だから、みんな集まってくれるかしら」という私の心配を通り越しての盛況ぶり!ありがとうございます。
遅くなりましたが、ここでイベントのご報告をしたいと思います。まずはこちらをご覧ください。
それぞれ3つの図では点々がある規則で並べられています。点と点をつなぐとある秩序が見えてきます。これはイベントの冒頭で出されたクイズです。どんな秩序が見えるでしょうか。実は「秩序とはなにか」が準結晶という存在を通して見えくる、というのが先生の一番伝えたかったこと。クイズの答えは下で発表します。
クイズを交えながら、準結晶の解説だけでなくこんなお話も交えながら進みます。
これは、シェヒトマン博士(2011年ノーベル化学賞受賞者)の70歳記念パーティの様子。
真ん中の女性は数学者(奥様ではないそう)。
このように分野をまたいで研究者たちが交流しているアカデミアの世界も少し紹介していただきました。
ところで男性二人のネクタイに注目してみてください。見たことある!
そう、準結晶の原子配置になっています。
記念で何人かの準結晶研究者おそろいで持っているものだそう。
また、準結晶と数学の意外な関係についても触れられました。
準結晶の構造にはτ(タウ)(τ=(1+√5)/2)という無理数が深く関わっています。
例えば準結晶の回折図(原子の並びを見るため電子線やエックス線で投影してみる図)でできる5角形の一辺の比はτ倍、(1+τ)倍・・・という風に増えていきます。これは「黄金比」として知られていて、自然界の存在する『美しい」と思える物の配置や構造には、この黄金比が隠されているといわれています。
例えば現代美人の顔のパーツの配置、またレオナルド・ダ・ビンチの名作の数々にも同じように黄金比が含まれています。
先生は、準結晶の構造の中に見えてきた数学がこの研究の面白みのひとつだ、とおっしゃっていました。
さて、上のクイズの回答はこちら。
真ん中の図をご覧ください。ある規則性が見えてきませんか?
一見何の規則性もないような点の集合は、実は、太いひし形と細いひし形に囲まれた図形「ペンローズパターン」の頂点をとったものだったのです。
これは5回対称や10回対称をもつ準結晶の構造を理解するうえでとても重要なものです。
「秩序は一見してもわからない」といえるのではないでしょうか。
お話の中で「美しい」という言葉を何度も使っていた蔡先生。最後に、「作った準結晶の構造は美しい。その美しさのためにかれこれ27年間研究してきました」と締めくくりました。
参加者の中には「おぉ」と感嘆の声をもらす人も。
材料系の研究者の多くはどうしても実用化を重視してしまう中で、物質構造そのものを追求する基礎研究もおろそかにしてはいけない。
今回のノーベル賞授賞は、実用的な意味ではなく我々に新たなものの見方を示したという意味での貢献が称えられたのではないか、ともおっしゃっていました。
先生のお話の後、予定時間が過ぎていても途中退出する方はひとりもおらず、「準結晶の作り方」に関するものなどたくさんの質問が次々と出ました。先生を悩ませる質問もしばしば。
参加者の皆さんが準結晶の世界に入り込み、それぞれから湧き出した好奇心をこうして目の当たりにできたことが、イベント成功の証でしょう。と私が内心で小躍りして喜んでいたことを最後にお伝えしておきます。
次回はイベントのその後についてご報告いたします。
リンク:
未来館HPイベントアーカイブ (リンクは削除されました)
ブログ「キーワードは秩序~12月23日にサイエンティスト・トーク開きます~ (リンクは削除されました)
続:10分でわかるノーベル賞2011~化学賞~ で、準結晶って? (リンクは削除されました)
10分でわかるノーベル賞2011〜化学賞〜 (リンクは削除されました)
イベントの映像はこちら