先日、行われたWorld Wide Views。私は、ファシリテーター(議論の進行役)の一人として参加しました(World Wide Viewsについては、寺村の記事 (リンクは削除されました)や私の前回の記事 (リンクは削除されました)をご覧ください)。
World Wide ViewsとCOP11(生物多様性条約第11回締約国会議)に向けて、未来館の中でも生物多様性に関するいくつかイベントが計画されました。同僚の科学コミュニケーター寺村、本田のサポートのもと、私が主担当を勤めたのが、5階展示フロアーで行う15分のサイエンスミニトークの制作です。
3人での作戦会議の結果、生物多様性の中でも、生態系と食事の関係に焦点を当てることにしました。
昨日、みなさんは夕飯に何を食べましたか? 肉料理でしょうか? それとも魚料理? たとえば豚は肉になる前は何を食べていたのでしょう? 豚の食べる穀物を育てたのは何でしょうか?
穀物が育つ土の中には、微生物など様々な生き物がすみ、栄養分を作っています。こうやってたどっていくと、私たちの食事のほとんどが、自然界の生き物同士のつながりによって支えられていることが分かります。こうした生き物のつながりを「生態系」と呼びます。
食べ物や水、酸素など、人間の役に立つ生態系だけを科学技術で作り出す研究も行われていますが、コストや時間を考えると、これらの技術のみで70億人の生活を支えることは今のところ、現実的ではありません。生態系を保全しながらその恵みを使っていくことが、現段階で人間にできる、最も効率の良い方法なのです。
3人で話し合いながら、スライドを完成させました。未来館では、新しいミニトークをお客さまに披露する前に、館内のチェックを受けねばなりません。そして、そのチェックの日。
結果は…。
「うーん、ストーリーの組み立てがすっきりしなくて、何が言いたいのかよく分かりませんね。作り直してもらいましょうか」
このコメントを受けて、ストーリーの修正に入っているとき、新たな作戦として、ホワイトボードが浮かび上がりました。
「これを使えばお客さんに自由な雰囲気で発言してもらえる!!!」
これまでに作ったスライドは思い切ってお蔵入りさせました。ホワイトボードを使い、絵を描いてお客さまとお話ししながらミニトークを展開します。そして、いただいたご意見をボードにどんどん付け加えるのです。
スライドを用いながらのお話しで、お客さまに「どう思いますか?」とうかがうと、「正解があるのではないか」、「スライドに用意してある答えを言わないといけないのではないか」などと考えてしまわれることがあります。今回は、はじめからホワイトボードを使うことで、生態系について身近な生活と関連づけて自由に考えていただくことを狙いとしました。
まず、思い出していただいた前日の夕飯から、肉、魚に応じて食べ物が私たちの口に入るまでの生き物のつながり(生態系)を描いていきます。
ここで新たなる問題が。
「時間が足りない!」
ミニトークの制限時間は15分ですが、すべての情報をホワイトボードに描いていると、30分もかかってしまいます。
そこで、お客さまとのやりとりの部分だけを書き込み、情報提供の部分は、あらかじめ用意した手書きパネルを、ぺたぺた貼っていくことにしました。
ここで浮上してきた課題は、私の画力です。
……いわしに見えない?
……まだ似てない?
……さっきの方が良かった?
これでどうだ!
こうして、パネルが完成しました。
2回目の館内チェックはぶじ合格!
そして、とうとうお披露の日がやってきました。
休日だったこともあり、たくさんの家族連れが集まって下さいました。いちばん前の席のおじいちゃんおばあちゃんとお孫さんたちは、絵を描き始めると「何か楽しい時間が始まりそう」とニコニコ。
ミニトークの最後には、いよいよお客さまからのアイデア募集。
「未来になっても食べ続けたい大好きな食べ物は何ですか?」
「現在、私たちは生態系の恵みを、生態系が回復するよりも速いスピードと量で食べています。生態系の恵みをずーっとおいしく楽しく食べ続けるには、私たちはどうしたらいいでしょうか?」
この正解のない問いに、どのくらい意見を言って下さるか、心配していました。実際には、たくさんの方からアイデアをいただきました。うれしかったのは、小学生のお子さんが自分から手を挙げて好きな食べ物や「私たちにできること」を話してくれたことです。
毎回、いただいたご意見は、すべて記録を取りWorld Wide Viewsの特設Facebook (リンクは削除されました)でもご紹介しています。
こちらのミニトークは、10/8~)10月21日(日)まで、毎日11:45~12:00 (リンクは削除されました)に実施しております。
ぜひ、みなさまのご意見をお聴かせ下さい!