こんにちは、はじめまして!
10月に未来館に来ました、熊谷香菜子です。
突然ですが、みなさん
“ウミウシ”って知ってますか?
そう聞いたときの返答として、
「ああ、あの海にいる・・・ナマコみたいなやつ?」これが6割くらい。
「ぶよっとしていて、むらさきの汁を出すやつでしょ?」これが3割。
そして、「知ってるよ」と明確に返ってくるのは1割に満たないというのが、私の実感です。
私は大学時代、そんなマイナー生物であるウミウシの研究をしていました。
マイナーだけど、ウミウシってとっても魅力的な生き物なんです。
今回は自己紹介をかねて、私とウミウシとの出会いからお話します。
私がウミウシと出会ったのは大学1年目の初夏。天気が悪く、風の冷たい日のことでした。
所属した理学部生物学科では、1年目に各研究室を回って研究内容を聞く授業がありました。付属の臨海実験所で研究していた先生の回では、実際に実験所に行って磯を歩くことになりました。
関東某所の太平洋に面する実験所です。目の前の海では、黒々とした岩に波がぶつかって、ざぱーんと音を立てています。そのしぶきは、雨に混じって私の顔にも降りかかってきます。寒さと海への恐怖心でちょっとびびっていたのを覚えています。
しばらく磯を歩いていると、遠くで「見つけた!」という声がしました。磯はすべりやすいので気をつけながら近寄ると、何人かが先生の手の中を見つめていました。
見るとそこには、体長3cmくらいの“青くて綺麗な何か”がいました。
それは、海水の中でふにゃ~っとのんきに動いていました。
なんだこれは!?
はじめて見るへんな生き物に、私の心はときめきました。触ってみたい!
先生に頼んでウミウシを手に持たせてもらいました。
すると!
それは手の中で、へちょっとつぶれてしまったのです!
がーん!!なんてこったぁ!!
・・・・・・これが、私とウミウシとの衝撃的な運命の出会いでした。
私がこの出会いで衝撃を受けたポイントは、2つあります。
1つ目は、綺麗な色。
黒い岩だらけの関東の磯に、原色バリバリの生き物が現れたことが驚きでした。ウニもヤドカリも、そんな派手な色はしていません。カニやエビだって、ゆでる前はあんなに赤くありません。
ウミウシは、とっても綺麗な色をしている種類が多いです。冒頭の質問で、ウミウシを知っていると答えた人は、たいてい「ウミウシって綺麗だよね!」か「なんであんな色をしているの?」と言います。
これじゃ目立って敵に見つかっちゃうんじゃないの?いえいえ、大丈夫なんです。磯は、陸から見ると黒くて地味に見えますが、潜って中から見てみると案外カラフルな世界です。そして、多くのウミウシは自分のえさと同じような色をして、えさの上にいるのです。黒が背景の写真では目立ちますが、海の中ではあんまり目立ちません。ヒョウが動物園では目立っても、サバンナでは風景にまぎれてわかりにくいのと同じですね。
ウミウシの色については不思議なことがたくさんあるので、またの機会に記事にしたいと思っています。
ちなみに、ウミウシと聞いて9割ぐらいの人がイメージするものは、アメフラシです。アメフラシは、はじめに登場したアオウミウシとは別のグループに分類されます。が、アメフラシもウミウシの仲間に入れることがあります。そもそも、どこまでをウミウシと呼ぶかの範囲に確固とした定義がないので、範囲をどう決めるかによって変わります。ウミウシの基本の姿は、小さくてカラフルなアオウミウシタイプです。
衝撃ポイントの2つ目は、弱さと強さのギャップ。
ふにゃ~っとのんきに動いていたウミウシが、私の手の中でへちょっとつぶれてしまって、とても驚きました。なぜつぶれてしまったのか? それは、受け取るときに手から海水がこぼれて浮力がなくなり、ウミウシは身体にかかる重力を支えきれなくなってつぶれてしまったのです。あの時、手の上でつぶれてしまったウミウシは、海水中に戻すと元通りになって再び動き出しました。
浮力の助けを借りないと自分の重さを支えきれないだなんて……よ、よわい。
しかし、そんなウミウシがすんでいるのは海の中。
その日は波が高く、波が岩にぶつかる様子はまるで映画の前のあの映像のようでした。台風が来たら、海の中はもっとすごいことになるはずです。あんなにふにゃふにゃで弱々しいのに、荒波の中で生きているたくましさ。
このギャップに、やられました。
ウミウシの世界は知れば知るほど、「なにそれ!?」と驚くようなことがたくさんあります。見た目のかわいさだけじゃない、とても魅力的な生き物です。
そんなウミウシが大好き!な私です。
未来館にウミウシはいないですが、展示がどうやったらウミウシにつながるかを考えています。見つけたら、ここでもお伝えしていきますね!