こんばんは!梶井です!
未来館の化学チームの予想は、残念ながら外れてしまいました・・・
しかし、「ザ・ 化学!!」と言いたくなるような研究が化学賞を取りましたね!
それでは、2016年の化学賞はこちら!
-分子マシンへの貢献-
分子マシンってなんだ・・・?と思われたかもしれません。
例えば、私たちの身の回りは洗濯機、車、ミキサー、etc・・・色々な機械で囲まれていますね。
もしも、それらを分子の世界で創れたら・・・?
でも、分子の世界ってナノメートル(0.000000001 m)の世界です!!どうやってそんな機械を作るのでしょうか!
上のお三方こそが、そんな難問解決に貢献されている方々です!!
では、それぞれの方がどんなことをされたのかをみていきましょう。
変な分子を創りたい!
1960年代、こんな2つの輪っかが絡み合った分子ができることが分かりました。
でも、数打ちゃ当たる戦法で作っていたので、収率がとても低かったんです!
そんな中、Jean-Pierre Sauvage先生はこんな分子に目をつけました。
銅イオンが接着剤のようになって、輪っかと半円みたいなものをつなげている・・・
あれ?繋げれば、似たようなのできない?
ということで、繋げて、銅イオンを外すと・・・
似たようなのができた!!
なんと、収率40%!!
このように、金属イオンを接着剤のように用いて、輪っかにしやすい状態を予め作っておくことで、外れないものを作ることができることが分かりました。
似たような発想で、両端に大きな障害物がある棒に輪っかをはめることで、輪っかが棒から取れない分子、ロタキサンが作られました。
これをされた方がSir J. Fraser Stoddart。
うん、確かに面白い形をしているけど、「これが何の役に立つの?」という疑問を持たれる方、たくさんいらっしゃると思います。
この上の2つの分子のミソは、輪っかが固定されていない、つまり限られた空間ではありますが、動くことができるということなんです。
もしも、輪っかの動きを私達が制御できたらどうなるか・・・
例えば、Jean-Pierre Sauvage先生は、こんなのを作りました。
伸びたり縮んだり。伸びたり縮んだり。
この動きに似た動きをするもの、何かご存知ではありませんか?
そう、筋肉です!
私達の世界のものと似たようなものを、分子の世界で再現できる可能性が出てきたんです!!
最後の一人の受賞者Ben Feringa 博士のご紹介をします。
Ben Feringa博士は世界初分子のモーターを作ることに成功した方です。分子でつくるモーターとは分子が自ら回転することで、動力を作り出す物のことです。以下の図1でくわしく説明します。
まず、黒い部分と緑の部分は同じ構造をもつ2つの分子です。1つの分子には3つのベンゼン環と1つのメチル基(メチル基の化合式:CH3-)という官能基でできています。この2つの分子もさきほどご紹介した分子たちと同じくつながっていないが、はずれない性質をもっています(1)。紫外線を与えると、上の黒い部分は180度回転します(2)。ここで、黒い部分と緑の部分のベンゼン環は熱によってお互いに貫通して、さらに回転します(3)。そして、メチル基はストッパーになって逆戻りを防げます(4)。
この研究のすごいところは、一般的にこのような分子は180度回転してもすぐ逆戻りをしてしまいます。ところが、この研究でできている分子は、すばらしいストッパーをつけたことで、同じ方向に回転し続けられます。そして、分子の自らの力で動力を生み出すことができます。実際にBen Feringa博士は分子で四駆自動車をつくりました(図2)。サイズはなんと髪の毛の1000分の1の細さです。乗れるのはナノの世界の住民だけだと思いますが。
2016年のノーベル化学賞は変な分子でつくる世界最小のマシンに与えました。この分野の研究はコンピューターのメモリーや光に反応するセンサーなどの応用は期待されていますが、まだ実用までは遠いことが事実です。この分野の研究は大きな意味をもっています。受賞者のBen教授のお言葉でブログを終了したいと思います:
「化学の力は新しいものへの理解を向上するだけではなく、これまでに世に存在していなかった物を作り出すところです。」