こんにちは!科学コミュニケーターの石田です。
私は2016年~2017年、高校生向け対話型ワークショップエネルギー編を実施するために種子島高校に通っていました。(報告ブログはこちら→種子島で対話型ワークショップをしてきました!)
未来館のコンテンツをもっと広めたいけれど、種子島のような遠方に科学コミュニケーターが通うには限界がある...
ということで、未来館はテレビ会議システムを使用した遠隔授業に取り組んでいます!
その取り組みの一つとして2018年2月、中学生向けの団体プログラム「エネルギーの選択」を徳島県那賀町立鷲敷中学校3年生のみなさんに実施しました。授業に至るまでの経緯や授業の様子をご報告します。
時はさかのぼり2017年。徳島県企業局から徳島県の中学校に遠隔授業をしてみませんか?というお話を頂き、まだ試作段階のものでよければということで遠隔授業を行うことになりました。
遠隔授業ならではのメリットは何だろう...?それはなんといってもなかなか会うことができない人の話を気軽に聞くことができることだと考えました。そこで、知識のインプットよりもなかなか会えない人と顔を合わせることを重視しよう、それをきっかけに新たな視点を手に入れてもらおうということを目的にし、未来館の科学コミュニケーターだけでなく徳島県企業局の方にもつないで参加してもらうことに!効果的な遠隔授業になるようにプログラムの構成も未来館での団体プログラム「エネルギーの選択」を元にカスタマイズしました。
【遠隔授業内容(60分)】
<事前課題>
プログラムのテーマは「エネルギーの選択」。ここではエネルギーを電気とします。
生活の中で電気に困ることはほぼなく、電気について改めて考えたことはないと思われる生徒たちに「電気について大切にしたいこと」を事前に考えてきてもらいました。
未来館が設定した電気について大切にしたいことは以下の5つ。
この5つの大切にしたいことの中で自分は特にどれを大切にしたいだろう?ワークシートを使って整理してもらいます。各項目は5点満点で、全体で25点満点になりますが、シールは15枚しかありません。何が大切か考え抜いてもらいシールを貼ってきてもらいます。
遠隔授業開始
① 宿題の共有
自分の宿題ワークシートを見せながら、班内でそれぞれが思う大切にしたいことについて話し合ってもらいます。
「お金」は我慢できるので、「環境」や「ずーっと」を大切にしたいです。「環境」を維持できなければそもそも私たち生きていけないし!
うーん...でもやっぱり「お金」も大事じゃない?
いや「環境」よりまず「安全」じゃない?
考えが似ている班もあれば意見が割れた班もありましたが、「環境」や「ずーっと」を大事にしたいと考える子が多いようでした。みなさん同じ中学生、意見は似てくるのかもしれません。
② 各発電の方法やメリットデメリットについて学習
未来館とつないで火力発電、原子力発電、再生可能エネルギー発電の方法やメリット、デメリットについて学習します。
どの発電方法にもメリットデメリットがあるという客観的事実を知ってもらいます。また、各発電の特性を理解しておくことがエネルギーの選択に必要であることを伝えます。
③ エネルギーについて大切にしたいことをほかの人にも聞いてみよう!
まずは徳島県企業局の方が考える大切にしたいことをお話してもらいます。徳島県企業局は徳島県の人たちの未来(環境、ずーっと)が大切だと考え、水力発電や太陽光発電など再生可能エネルギー発電に力を入れています。
徳島県企業局の方以外にも立場が変わると大切にしたいことが変わるかもしれません。例えば病院の人はどうでしょう?救急車で怪我をした人が運び込まれたとき、電気が使えなかったらどうする?「いつでも」や「安全」が病院の人にとっては大切なのかもしれません。
生徒たちはふと気づきます。人それぞれ大切なものは違うんだ!
その気づきを踏まえて、もう一度班内で話し合ってみます。
話し合いを通して、自分の中での大切なことが変わった子もいたようです。
最後にワークショップを通して気づいたことや感想を発表してもらいました。その内容について未来館と徳島県企業局からフィードバックを行いました。
みなさん自分の言葉でしっかりと発表していて徳島県企業局の方々も未来館の私たちも感心しきりでした。発表を聞くと班内で話し合って自分の考えをより強めた子もいれば、ほかの子の話を聞いて少し考えを変えた子も。どちらでももちろん構いません。エネルギーの選択に正解などないのですから。
しかし、正解は決まっていなくてもエネルギーは選択していかなければなりません。そのために大切なことを未来館は以下の2つと考えています。
① 科学的事実をもとに考える
② 違う考えの人と「対話」する
このメッセージを告げてワークショップは終了です。
遠隔授業はテレビ越しとなるため、直接顔を合わせられる授業に比べて伝えられる内容は限られます。ですが、遠隔授業だからこそ普段会えない人に会えます。このワークショップで伝えたかった「様々な立場の人がいて、人それぞれ大切なことが違う」ことは様々な人の話が聞ける遠隔授業だからこそ効果的に伝えられたのではないでしょうか。
直接伝えるべきこと、遠隔授業で伝えるべきことを整理して未来館は遠隔授業が持つ可能性にこれからも取り組んでいきたいと思います。
未来館は過去にも遠隔授業に取り組んでいます。ぜひほかの事例報告もご覧ください。
危険をさがして地震に備える~団体プログラム「地震の国で生き残れ!」遠隔授業実施報告(リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)
【ご興味・ご関心をお持ちの学校団体の方へ】
(リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)
中学校向け団体プログラム「エネルギーの選択」は通常は未来館のみで実施しております。(所要時間90分。定員15名)
課外学習などで未来館に訪れた際に実施したい場合は、団体予約受付担当までお問合せください。
この実施報告のようなインターネットを通じた遠隔授業にもご関心をお持ちでしたら、同じく団体予約受付担当までお問い合わせいただければ幸いです。