祝・12年連続日本人受賞!2018年イグノーベル賞 速報!

こんにちは。
科学コミュニケーターの綾塚達郎です。
本日、日本時間7:00から行われたイグノーベル賞授賞式の速報をお送りいたします!

(朝からイグノーベル賞のためにスタンバイ!)

イグノーベル賞は、「笑い、そして考えさせられる」業績に対して送られる賞です。

1991年からはじまったこの賞は、実は日本人が数多く受賞している賞でもあります。
昨年はイグノーベル生物学賞を受賞しております。

科学コミュニケーターブログ
祝!11年連続!イグノーベル賞日本人受賞!!雌雄の役割が入れ替わった昆虫の研究(
https://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/20170915IgNobel.html

この受賞により、2017年まで11年連続受賞。
2018年イグノーベル賞において、12年連続受賞は達成できるのか!?

祝!日本人12年連続受賞!

今年もやりました~!

Medical Education Prize
Akira Horiuchi [JAPAN],
for the medical report
"Colonoscopy in the Sitting Position: Lessons Learned From Self-Colonoscopy."

受賞されたのは、

昭和伊南総合病院 内科診療部長・消化器病センター長
堀内 朗 先生

医療教育賞です!

受賞内容は大腸内視鏡検査の方法についてです。
その方法の様子がこちら。

下記は、堀内先生のスピーチの日本語訳です。

ありがとうございます。大変光栄です。まず、内視鏡に、それから日本の内視鏡メーカーさんに感謝します。私の内視鏡手技、実際にごらんにいれたいと思います。椅子、椅子を持ってきて下さい。できるだけ近づいて、しっかりみてください。

自分で自分の大腸・内視鏡検査をしました。このように座った状態で行います。なるべく近づいてよくご覧ください。細い径の内視鏡を使います。このように左手で内視鏡を持ち、操作します。右手は(持った内視鏡を)こうして自分の大腸に入れます。この手技はおかしいと思うかもしれませんかもしれませんけれど......

もっと具体的に内容をお伺いしたい...、と思っていた矢先、今年も例の少女がやってまいりました。

(画像右手のワンピースの少女がミス・スウィーティープー)
「もうやめて!飽きたの!もうやめて!あきたの!」

今年は約90秒経過すると、ミス・スウィーティープーがスピーチを止めに入っていたようです。
全体的にミス・スウィーティープーに警告された受賞者が多かったです。
(中にはキャンディーで買収しようとしたものの、失敗している受賞者もいました。)

堀内先生の受賞内容に戻します。

先生の大腸内視鏡検査に関する論文要旨(※)を見てみました。
大腸内視鏡検査は、専用機械を大腸に挿入するため、寝そべって行われるのが一般的だそうです。
今回はその新しい方法として、小児患者に対して座ったまま行える方法を開発した、とのことでした。
ちなみに、使用する内視鏡は直径10.3mmほどのものを使うそうです。

※論文タイトル:「Colonoscopy in the sitting position: lessons learned from self-colonoscopy by using a small-caliber, variable-stiffness colonoscope」
(https://www.giejournal.org/article/S0016-5107(05)03012-9/abstract

授賞式では語られませんでしたが、堀内先生は特に臨床分野での研究論文執筆や手法の開発、普及などでもご活躍されているようです。

考えさせられたポイント

私は、大腸内視鏡検査を受けたことはありません。
ですが、今回の受賞式を通して、内視鏡検査にどのような苦労があるのか、という一端を知ることができました。
この研究は、「体位について研究する余地がある」というメッセージでもあると思います。
少なからず伴う苦痛をいかに減らせるか、ということが医療現場で日夜研究されていることを、この賞から感じたのでした。

さらに、この方法を「自分で試している」というのも感慨深いです。
患者の苦痛を目の前で見てきたからこそ、こういった行動につながるのでしょうか。

例えば、兵庫医科大学皮膚科学准教授・夏秋優先生の著書「Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎」では、色んな虫の毒を自分の身体で試した結果を紹介しています。

まさに執念ですね。

2018年イグノーベル賞、受賞内容一覧

下記の通り、2018年イグノーベル賞の一覧を載せます。
皆様、おめでとうございます!

【医学賞】

ジェットコースターに乗ることによって腎臓結石を取り除く
Marc Mitchell, David Wartinger
for using roller coaster rides to hasten the passage of kidney stones.
http://jaoa.org/article.aspx?articleid=2557373

【人類学賞】

動物園で人間がチンパンジーの真似をするのと同じくらい、チンパンジーも人の真似をしている証拠を集めた
Tomas Persson, Gabriela-Alina Sauciuc, and Elaine Madsen
for collecting evidence, in a zoo, that chimpanzees imitate humans about as often, and about as well, as humans imitate chimpanzees.
(https://portal.research.lu.se/portal/en/publications/spontaneous-crossspecies-imitation-in-interaction-between-chimpanzees-and-zoo-visitors(ffa51ced-b5e1-4cde-b73b-2554e89004a6)/export.html)

【生物学賞】

ワインの専門家はワイングラスに入ったたった1匹のコバエでも確実に匂いでかぎ分けることを示した
Paul Becher, Sebastien Lebreton, Erika Wallin, Erik Hedenstrom, Felipe Borrero-Echeverry, Marie Bengtsson, Volker Jorger, and Peter Witzgall,
for demonstrating that wine experts can reliably identify, by smell, the presence of a single fly in a glass of wine.
https://link.springer.com/article/10.1007/s10886-018-0950-4

【化学賞】

ヒトの唾液が物の表面の汚れを落とすのに優れていることを計測で示した
Paula Romao, Adilia Alarcao, and the late Cesar Viana,
for measuring the degree to which human saliva is a good cleaning agent for dirty surfaces
https://www.jstor.org/stable/1506167?seq=1#page_scan_tab_contents

【医療教育賞】

堀内朗(長野県駒ヶ根市の昭和伊南総合病院)
for the medical report, "Colonoscopy in the Sitting Position: Lessons Learned from Self-Colonoscopy."
(https://www.giejournal.org/article/S0016-5107(05)03012-9/abstract)

【文学賞】
ややこしい製品を使う際に、たいていの人は取り扱い説明書を読まないことについて
Thea Blackler, Rafael Gomez, Vesna Popovic, and M. Helen Thompson
for documenting that most people who use complicated products do not read the instruction manual.
(https://academic.oup.com/iwc/article-abstract/28/1/27/2363584)

【栄養学賞】

人間の共食いで得られるカロリーは、伝統的な肉料理から得られるカロリーよりも明らかに低いことを計算で示した
for calculating that the caloric intake from a human-cannibalism diet is significantly lower than the caloric intake from most other traditional meat diets.
James Cole
(https://www.nature.com/articles/srep44707)

【平和賞】

自動車の運転中に大声を出したり罵ったりすることの頻度、動機、効果の計測
Francisco Alonso, Cristina Esteban, Andrea Serge, Maria-Luisa Ballestar, Jaime Sanmartin, Constanza Calatayud, and Beatriz Alamar
for measuring the frequency, motivation, and effects of shouting and cursing while driving an automobile.

(https://www.researchgate.net/publication/312626920_Shouting_and_Cursing_while_Driving_Frequency_Reasons_Perceived_Risk_and_Punishment)

【生殖医学】

男性器が正常に機能していることを1列の切手シートを使ってテストする方法を記載した論文「切手を使う就寝中のペニスの勃起検査」
John Barry, Bruce Blank, and Michel Boileau
for using postage stamps to test whether the male sexual organ is functioning properly--as described in their study, "Nocturnal Penile Tumescence Monitoring with Stamps.
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7355543)

【経済学賞】

パワハラ上司に対する仕返しとして、ブードゥー人形を使う呪術を行うことの効果の研究
Lindie Hanyu Liang, Douglas Brown, Huiwen Lian, Samuel Hanig, D. Lance Ferris, and Lisa Keeping
for investigating whether it is effective for employees to use Voodoo dolls to retaliate against abusive bosses.
(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S104898431730276X)

おわりに

日本科学未来館では、このブログに加え、イグノーベル賞について様々なイベントを行っております!

9月はイグノーベル賞がアツい!
皆様、ぜひ一緒に盛り上がっていきましょう!

9月15~17日の土日祝 科学コミュニケーター・トーク
「笑い、そして考える 2018年のイグノーベル賞!」
(https://www.miraikan.jst.go.jp/event/1808271323215.html)

9月23日(日)科学コミュニケーター・トーク特別版
「仕掛け人にあえる!きける! イグノーベル賞って何!?」
(https://www.miraikan.jst.go.jp/event/1808281023224.html)

ニコニコ生放送「イグノーベル賞のすべて!~ 仕掛け人マーク氏に聞く 【日本科学未来館×ニコ生】」
出演:マーク・エイブラハムス氏、未来館の科学コミュニケーター
(https://live.nicovideo.jp/watch/lv315221697)

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