2025年12月7日、未来館にて「3Dフードプリンターが描く未来のコース料理 ~技術×人で生まれる新たな食の可能性」を実施しました。
このイベントでは、3Dフードプリンターを用いた研究を行う山形大学の古川英光先生が、イタリア料理店「アル・ケッチァーノ」オーナーの奥田政行シェフとコラボ。3Dフードプリンターという技術でつくった食材に、人の手や創造性を加えることで、料理に変身させます。素材を生かすことを大切にする奥田シェフは、3Dフードプリンターの食材をどのようにアレンジするのでしょうか?
本企画は3Dフードプリンター実証実験シリーズの第3弾。毎回大人気で、今回も定員32名(16名×2回)を大幅に超えるご応募をいただきました。
このブログでは、イベントへの参加が叶わなかった方のためにも、3Dフードプリンターでつくった食材を用いたコース料理が一体どんな内容だったのか、その体験をくわしくレポートしていきます。
人生初の食レポ(?)、がんばります!
3Dフードプリンターってなに?
そもそも、3Dフードプリンターとはどんなものなのでしょうか?
3Dフードプリンターは、文字通り食べ物を“印刷”するプリンターです。3Dプリンターは聞いたことがあるかもしれませんが、その“インク”がペースト状の食材になっている、というわけです。
ペースト状の食材を少しずつ積み重ねることで、データ通りの形を再現できるのみならず、その“インク”を調整することで栄養バランスまで設計できることから、「未来の食」を支える技術として注目されています。
3Dフードプリンターを使えば、今までになかった新しい食べ物だって、生み出すことができてしまうのです!
未来のコース料理を、いざ実食!
今回は、そんな3Dフードプリンターでつくられた「未来の食材」を奥田シェフがアレンジし、イベント参加者で実食します。
いただくのは、前菜、スープ、メイン、デザート、飲み物の5品。いったいどんな料理に仕上がったのでしょうか?
前菜 奇跡の出会い ~豆腐とチーズのテリーヌ風~
1品目は前菜。豆腐とチーズを併せた料理ということですが、繊細な形をしていて、人の手でつくるのはとっても難しそうです。豆腐のペーストを3Dフードプリンターで印刷して、形をつくっています。
豆腐とチーズ、意外と合いますね! 味だけでなく、豆腐ペーストのやわらかさと、散りばめられたアーモンドのかたさの相性も抜群です。
3Dフードプリンターの食材だけでは、食感があまり感じられなかったり、均一になってしまったりしがちですが、奥田シェフのアレンジによりアーモンドが加わることで、だいぶ印象が変わります。
テクノロジーに人の手を加えることで、より良いものが生み出せるんですね。
スープ 雪どけの魔法 ~味と色が変わる不思議なスープ~
続いてはスープ、と聞いていましたが、現れたのは大きなお皿にちょこんと座った雪だるまでした。このふわふわとした雪だるまが、まさに3Dフードプリンターでつくられているとのこと。
見た目だけでも十分かわいいのですが、これはスープ。なんと、ここにコンソメスープをかけて、雪だるまを溶かして食べていただくのだそうです。
スープをかけると、スープの熱で雪だるまがどんどん溶けていきます。
最終的にはスープと混ざり合い、雪だるまはいなくなってしまいました。全体的にピンク色になって、なんだか泡立っているようにも見えます。
さて、いただいてみると……なんだかシュワシュワします!
実は、雪だるまに含まれていたクエン酸と重曹が反応して、二酸化炭素が発生していたようです。だから、炭酸水のようなシュワシュワ感があったのですね。
さらに、雪だるまにはカレーオイルとごま油が閉じ込められており、その風味がコンソメスープの塩味に合わさって、今までに経験したことのない不思議な香りと味の組み合わせを楽しめる一品でした!
メイン Tako-de~su ~スシですが、あなたの知っているスシではありません~
料理名の「タコで~す」というのは、元プロボクサーでコメディアンの「たこ八郎」さんの登場をイメージしているらしいですが(すみません、私は元ネタがわからず……)、そんなノリとは裏腹に、おしゃれな「タコのお寿司」が登場。
奥田シェフのアレンジにより、タコはオイルで味付けされ、シャリにはゆずが加えられていて、醤油を付けずに食べるそうです。
お察しの通り、この「タコ」は3Dフードプリンターでつくられたものです。2貫のタコのお寿司がありますが、左側のタコにはまったくタコが含まれず、右側のタコは少しだけ含まれているとのこと(味の違いはというと……なんとなく違う気はするものの、私が味音痴だからなのか、言われないとどちらがタコ入りか、そうでないかがわかりませんでした泣)。
3Dフードプリンターでつくられたタコも面白かっただけでなく、ゆずの香りがさわやかで、料理としてもとってもおいしかったです。
デザート やさしさをかたちに ~見た目も味も心に響くハートスイーツ~
メインの後はデザート。カスタードをハート型にアレンジしたというスイーツをいただきました。
3Dフードプリンターを使えば、カスタードのようなやわらかい素材も、好きな形に、再現性高く、つくることができるんですね。
今回も、3Dフードプリンターで単調になってしまいがちな食感を補うため、ピスタチオでアレンジされていました。カスタードとの相性もよく、安定のおいしさでした!
飲み物 人生初のコーヒー ~苦みと甘味、それが人生~
さて、最後の締めはコーヒー。といっても普通のコーヒーではなく、クリームが乗ったスープ皿にコーヒーを「かけて」、スプーンですくって飲むという斬新なスタイルです。
こちらには3Dフードプリンターでつくられた素材は使われていませんが、クリームがその“インク”となりうる材料なのだそう。
では、早速コーヒーをお皿に注いで、飲んでみたいと思います。
コーヒーをスープのようにスプーンで飲む体験は初めてでしたが、とても面白かったです。
3Dフードプリンターの技術を見せるだけではなく、体験としてもみんなを楽しませたい!という古川先生の熱い想いが感じられるラストでした。
食材を“印刷”できたら、どんな料理を食べたいですか?
今回、実際に未来の食材を使ったコース料理を食べてみたら、未来の食についていろいろな想像が広がりました。
3Dフードプリンターを使えば、だれでも見た目が美しい料理をつくれますし、食材に合わせて料理をするのみならず、たとえばお肉の脂身の量を調整するなどして料理に合わせた最適な食材をつくったり、不足する栄養素を追加して栄養バランスの整った食材をつくったりできるかもしれません。
ちなみに、私は料理が得意ではないので、3Dフードプリンターを使うことで、手間のかかる料理も簡単においしくつくれたら、すごくいいなと思います。
イベントでも、参加者の皆さんからいろいろなアイディアが集まりましたが、こうしたアイディアをもとに、3Dフードプリンターの研究開発が進んでいきます。みんなで未来をつくっている感じがして、とてもわくわくしますね。
なお、このイベントの舞台裏は、ファシリテーターを務めた科学コミュニケーターの出沢が、追って紹介する予定です。こちらもぜひお楽しみに!