僕の家にはテレビがありません。
いま流行の女性アイドルグループのメンバーや最近のお笑い芸人、そして人気ドラマ等の情報が全く入ってきません。周りの人と芸能ネタなどの話をすると、正直苦労するときがあります。でも一番苦労したのは、今年の3月11日の震災が起こった後のときです。
テレビからの情報は全く入ってこない状態で、唯一の救いとなったのは携帯電話。そのときは携帯電話でアクセスできるソーシャルメディアやネットの限られたニュースを見て情報を入手していました。
ガソリンスタンドの近くを通ればたくさんの車の列、コンビニエンスストアへ行けばペットボトルの水やトイレットペーパーがない! テレビのニュースや週刊誌などでは取り上げられていたようですが、テレビを見ない、週刊誌を読まない私はまさに情報から断絶されていたわけです。テレビからの情報がないだけでここまで苦労したのは、生まれて初めてだったと思います。
アメリカ同時多発テロが起きたとき、私はアメリカ西海岸にいましたが、友人から電話で教えてもらった直後にテレビをつけた記憶があります。
みなさんは緊急時にどのようなメディア媒体からどういった情報を入手しますか?
私は同期の科学コミュニケーター佐尾、川崎とともに、サイエンスアゴラ2011で、ワークショップ「サイエンスクライシス ~情報のウラオモテ~」(11月20日開催)を企画しました。非常時の情報の取り扱いをテーマにしたものです。
3月の震災のような非常時に、どう行動するのが適切なのかを判断するには、情報が必要です。一方で、情報を発信するメディアとしては、新聞やテレビ、週刊誌、インターネットのソーシャルメディアなど、さまざまなものがあり、それぞれに特徴があります。こうした情報メディアの特徴をとらえ、非常時の情報とのつきあい方、特に科学に関する情報とのつきあい方を、参加者同士で話し合うことが、このワークショップの狙いでした。
ワークショップの前半部では、架空のシナリオを使ったロールプレイング形式です。参加者の皆さんには、まず、写真のようにグループに分かれていただきました。内容を簡単に説明すると、自分たちが住んでいる近くの化学工場で大事故が発生します。その事故現場からは有毒なガスが飛散しています。その状況のなかで病院へ子どもを連れて行く、毒ガスで汚染された野菜を使って料理を作るといったことを判断する設定となっていました。
グループごとに、それぞれ1種類の情報メディアから得られた情報が配られます。政府の記者会見の様子を伝える新聞や、生々しい事故現場付近の現地レポート、専門家による解説記事など、グループによって情報はさまざまですが、各グループには1つのメディアからの情報しかありません。あなたはグループのメンバーと話し合いながら、どう行動するかを決めなくてはなりません。
私が見ていて印象的だったのは、同じ情報をもとにしていても、判断は人によってさまざまであった点です。意見が完全に分かれて、白熱した議論を展開しているグループもありました。
ワークショップ後半部では、配られた情報メディアの特徴について話してもらいました。メディアごとの特徴は、参加者の皆さんに伝わるように発表し、その後、非常時や緊急時の情報の取り扱い方に関して皆さんで議論しました。たくさんの意見が出ました。参加いただいた皆さんは、情報メディアの特徴を理解すること、複数のメディアから情報を得ること、そして、その上で判断することの大切さについて、さまざまな想いを抱いたようでした。
この企画の準備段階からを振り返って、企画者である私たち3人も、情報の取り扱い方について深く考えさせられました。それまであまり意識していなかった科学情報の取り扱い方について、今回の震災で直面することになりました。ワークショップの架空シナリオのような形で、再度、それを体験し、振り返ることが、次へとつながるのだと痛感しました。
今後の緊急時・非常時での情報とのつきあい方で、今、できること──。
私の場合、それはテレビを買うことです。
テレビを買って緊急時に備える。
ソーシャルメディアや新聞、そしてテレビの特徴を理解しながら、上手につきあっていけるようになりたいものです。
次のブログでは、「風邪」についてお話しをしたいと思います。
皆さんの学校や職場では流行っていませんか?
寒くなってきたのでお身体にお気をつけください。