「シアワセはもちろん色々な形があるけど、ちゃんと全員が感じるシアワセもあると思うことができたので、見つけたいです。」(お客様の感想より)
みなさん、こんにちは。
冒頭の言葉は、イベントのアンケートに記載されていたお客様の感想。今回は、12月22日(土)のサイエンティストトークに引き続き開催されたワークショップ「footbone in アナグラ ―空間情報科学×スポーツ―」のイベント報告です。
今回のイベントは、ゲーム分野の犬飼博士先生、空間情報科学分野の柴崎亮介先生、スポーツ分野の宮地力先生をお招きし、3つの異なる観点から、「アナグラのうた」と「eスポーツグラウンド」についてお話をしていただくという豪華なイベント。
そして同時進行で、「アナグラのうた」を制御している機材室の壁にイラストレーターの寺田克也さんにワークショップにちなんだライブドローイングをしていただきました。その様子はワークショップ中もちゃんと、アナグラの壁に投影され、館内に中継!!
写真は手を振る寺田さん。この後、2時間弱のあいだずっとペンを持ったまま、すさまじい絵を描かれました(完成した絵はブログの最後にありますのでお楽しみに)。
話のはじまりは、犬飼先生による「アナグラとは」というお話。アナグラの魅力はその世界観にありますが、1000年後の未来という設定です。そしてアナグラは空間情報科学を研究していた博士達がいた"研究室"です。
「この展示には物語語りがある。でも実際に展示しているのは"サイエンスフィクション"ではなく、現実の"サイエンス"です」と犬飼先生。1000年後という設定や物語があっても、展示としては"サイエンス"だけ。たしかにアナグラに入ると、現実のことを考えるし、そこからフィクションでは決してない未来のことを考えます。みなさんはこの展示に入り、どのようなことを感じましたか。
そして、展示のサブタイトル「消えた博士と残された装置」についても触れ、"消えた博士"も実は展示されている!とのお話がありました。
さて、みなさんは、どうして博士が消えてしまったと思いますか?
空間情報科学の研究に失敗してしまったから?
老化で病気になった?
博士も空間の一部になったから?
ってか、展示してあるってどこに?
意地悪な質問かもしれませんが、この質問に答えはありません。なぜならば、これは空想だからです。そしてみなさんに空想してもらうための"種"として"消えた博士"が展示として存在しているのです。でも、空想だからこそ、消えた理由についてそれぞれが自由に考えることでき、それがサイエンス(空間情報科学)と自分との関わりをリアルに感じさせてくれるのかもしれませんね。
その後はeスポーツグラウンドのプロデューサーでもある犬飼先生から「eスポーツグラウンド」についての解説。eスポーツグラウンドは、「センサーなどで取得した身体の動きの情報をもとにした新しい遊び。そして情報社会の核であるコンピューターを使った遊び」。将来はサッカーグラウンドの大きさまで拡大し、オリンピック競技になる可能性があるかも......。そんな未来がくると観客の楽しみ方もまた変わってくるのでは!? 早くそんな競技をやってみたいし、観てみたいですね!
そんなeスポーツグラウンドの話を聞くと、自然と身体を動かしたくなります。そこで、いよいよアナグラの中で「footbone」体験です!
ルールは非常に簡単。9人1チームでチームをつくり、3チームの対抗戦! アナグラの中にいる9人の動いた距離の合計×骨を蹴った回数がポイント。これが一番多いチームが勝ち。簡単でしょ?
footbone ルール動画
骨!?
そう骨。骨を蹴るから"footbone"なんです。では、骨とは何か?
それは......これです。
紫色のバーチャルボーンがアナグラの中に登場しているのがわかりますか? この骨が現れるには条件があります。アナグラに入ると、自分の足下に「ミー」という分身が現れます。上の写真の手前左の足下にある網目模様の入ったオレンジの丸がミーです。人間同士が近づくと、足下のミーは手をつなぎます。3人以上のミーが手をつないで、それが輪になると、骨が現れます。骨が現れることも、その条件も今まで秘密にしていましたが、ここで解禁! 次回、アナグラに入ったときにはぜひ試してみてください。
この骨を蹴るfootboneで優勝したのは、一番最後にチャレンジしたチームでした。9人合計で動いた距離は502m。骨を蹴った回数は186回。順番が後になると、ほかのチームのプレイを上空カメラの映像でみることができます。この映像を見て、コツを覚えたり、作戦を練ったり。やはり作戦タイムは重要ですね! 情報共有パワーを感じた瞬間でもありました。
盛り上がったところで話は、スポーツに。「eスポーツグラウンドはスポーツなのか、そもそもスポーツって何か、そして未来のスポーツとは」という宮地先生のお話。
スポーツの明確な定義はないそうですが、新しいゲームがスポーツとして浸透するには、スポーツの「かっこよさ」「偶然性」「楽しさ」「むずかしさ」という要素が大切だというお話がありました。スポーツ好きの私は大いに納得! その点では、eスポーツグラウンドはまだまだ進化する可能性がたくさんあるということですね。
さらにお話は、スポーツの街構想という未来の展望へ。楽しむ、団結力を高める、身体を動かすなど、スポーツがもつ多様な価値をいろいろな側面から楽しめるように、さまざまな業種をつなげた街の構想が考えられているそうです。
そして、話はfootbone(アナグラの中)で使われているセンサ技術と、そこから得られる情報について。ここからは柴崎先生の出番です。
まずは、駅やショッピングモールを備えた大規模ニュータウンである越谷レイクタウンや、都心に近いJRの大崎駅のプラットフォームでの人の流れについて柴崎先生から解説をいただきました。一日の中でも、時間によって人の流れの向きはまったく異なります。こうした人の流れの情報は、ショッピングモールの新しいサービスをつくったり、駅のホームの事故を防ぐ新しい設備の導入に役立てることができます。情報が新しい価値を生む、それが新しいビジネスに繋がると感じた方も多かったようです。
このようにセンサ技術が進歩し、さまざまな情報が得られるようになりましたが、その情報を生かして、もっと利便性を高めたり、達成感を味わえるようにしたり。そしてスポーツやゲームとまではいかなくても、"楽しいシアワセ"をつくれたらさらにいいよね!という先生のお話に、会場も共感していた様子でした。
以上のお話や体験を元に、参加者の皆さんには「スポーツ特区ダイバにおける未来のスポーツ」を考えるというワークに挑戦していただきました。町やそこの住民が抱える課題を改善するようなスポーツを考えるというもの。
なかなか難しそうなワークですが、いろんなアイデアが出ました!
- 「現代人には時間がなく、睡眠時間が短いという問題」を改善する、睡眠中の身体活動が評価基準になるスポーツ「エクストリームスイミン」
- 「環境破壊による食糧不足」を改善する、畑作がヤングトレンドになるスポーツ「HATASAKU」
- 「町が汚いという問題」を改善する、ゴミ拾いがポイントになるスポーツ「ゴミ拾E」
などなど。
「それはゲームとしてルールがおもしろいからすぐやろう」(犬飼先生)
「スポーツとしては身体のひねる角度を点数の評価に加えたらどうか」(宮地先生)
「現在は技術的に測れないけど、いずれデータとしてセンシング可能になるだろう」(柴崎先生)
など、3人の先生方からも様々な角度からご意見をいただきました。
3人の先生方の研究分野はそれぞれ異なりますが、共通するキーワードは「楽しむ」という言葉。シアワセをつくるには、楽しむことが原動力になるし、それで笑顔を作るために先生方は日々研究を続けているんだと私は再認識しました。
そして皆さんに挑戦してもらったワークの一番の肝は、"どんな課題を解消し、どんな未来をつくりたいか"ということ。犬飼先生が「アナグラのうた」を"空想"をしてもらうための展示といっていたことが、このワークにも繋がっていると感じました。
さて、みなさんはどんな未来を、つくりたいですか(空想しますか)?
ゲームもスポーツも、そして空間情報科学も、自分がつくりたい未来をつくるツールでしかありません。その未来をつくるために何をツールにするかは自由。ただ「楽しむ」という原動力をどのように入れていくか、そして自分がつくりたい未来が、世界や社会やまわりの人にどのような影響をもつのかを考えることが、非常に大切なのではないかと思います。
みなさんもぜひ「アナグラのうた」で、"空想"を楽しみながら、未来に思いを馳せてみませんか?
最後は圧巻の寺田先生の絵。
2時間弱に及ぶライブペインティングの模様を5分に縮めた動画があります。ぜひご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=46g1B8Jcq9U(リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)