PM2.5って何? 2.5μmのおはなし

ブログをご覧の皆様、こんにちは。科学コミュニケーターの野副です。これまで、UNI-CUBやガンダムの話題を続けてきましたが、今回はいつもと違うお話です。……と書きつつも、例によってこれなぁに?という写真から始まります。さて、下の写真に写っているものは何だと思いますか? そう、最近ニュースでよく聞く例のアレです。

これは、2013年2月20日に鹿児島上空にて、航空機観測で集めた「PM2.5」の電子顕微鏡写真です。「PM」は「Particulate Matter」の頭文字を取ったもので、日本語に訳すと「粒子状物質」となります。「2.5」はその直径を意味していて、2.5μm(マイクロメートル)以下の粒子を微小粒子状物質として定義しています。2.5μmがどのくらい小さいかというと、よく比較されるのは髪の毛の太さです。髪の毛の直径が80~100μmくらいなので、PM2.5はその30~40分の1になります。

写っているのはほどんどが2.5μm以下の粒子ですが、形は様々ですよね。実は、その直径で区別しているだけなので、一言でPM2.5といっても様々な種類があります。写真を撮った気象研究所の足立光司研究官によると、詳しい解析はまだこれからとのことですが、硫酸塩、すす、有機物などを含んだ粒子であるとのことです。

このように様々な種類があるのは、PM2.5の発生源がいくつもあるからなんです。最初から粒子として出てくるPM2.5ではその発生源として、焼却炉やボイラー、自動車の排気ガスなどが挙げられます。実は、たばこの煙などにもPM2.5がたくさん含まれているんです。でも、発生源はこれだけではありません。

「揮発性有機化合物」というガス状の物質が大気中で化学反応を起こして、二次的にPM2.5が生じる場合もあります。「揮発性有機化合物」は見慣れない言葉かもしれませんが、実は身近なところにいっぱいあります。塗料や接着剤を使ったときにクサイって思ったことありませんか? あのニオイの主成分が揮発性有機化合物なんです。また揮発性有機化合物は植物からも出ています。オレンジやみかんの皮を剥いたときに感じるあのニオイの主成分も実は揮発性有機化合物。植物から出たガス成分がPM2.5になるなんて、ちょっと意外ですよね。

この図は、大気中にある他の粒子とPM2.5を比較したものです。「SPM」は「Suspended Particulate Matter」の頭文字を取ったもので、日本語に訳すと「浮遊粒子状物質」となり、直径が10μm以下の粒子状物質のことです。PM2.5は花粉と比べるとすごく小さいため、のどの奥まで通りやすく、肺の奥まで入り込んでしまいます。そのため、濃度が高くなってたくさん吸い込むと、肺の病気にかかる可能性が最大で数%高くなると考えられています。このような粒子状物質は小さくて軽いため、発生源から遠いところまで運ばれ、地上に落ちることなく大気中に浮かんでいます。

SPMの環境基準は1972年に設定されていて、国による対策が早くから進められてきました。それに対してPM2.5への対策が行われ始めたは比較的最近です。そもそも私たちの体への影響をアメリカを中心として調べ始められたのが1990年頃から。日本で環境基準が定められたのは2009年のことです。

そのPM2.5の濃度が、大気汚染の少ない地域で高くなったことから昨今、ニュースでたくさん取り上げられていました。ですが、実は長期的に濃度を見ると昨年の 同じ時期と大きな違いはありません。また、PM2.5の濃度を一年間の平均値で比べると、2001年に都市部で約23μg/m3(一立方メートルあたり約 23μgのPM2.5が浮遊)でしたが、2010年度には約16μg/m3に減少しています(環境省の「微小粒子状物質暴露影響実測調査報告書」から抜粋)。道路の 近くで測定した濃度では、近年の自動車の排ガス対策や燃費向上が進んだことにより2001年の約30μg/m3から2010年度の約16μg/m3と、半分くらいまで減少しています。ただ、現在でも測定場所によっては、国が定めた環境基準を上回る地点もあります。また、全国的な評価を行うには、まだまだ測定地点が少ないとも言われており、政府は測定地点の整備とともに排出量削減の対策を進めています。

このお話、ちょっと続きます。次回は、科学コミュニケーターの長倉が「どうやって測定しているの?」ということについて解説してくれます。長倉さん、頼んだよ~!

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