アントシアニンの謎に迫る ~推理~

事件は会議室で起きてるんじゃない。

鍋の中で起きてるんだ!!

どうか、事件解決にご協力ください!


食用菊変色事件

■発生時: 2012年 冬のはじめ

■現場:   鍋の中

■被害者: かきのもと (食用菊)

■被害状況:

事件発生当時、鍋の中には菊の花びらと500ml程の水のみ。煮沸により、100℃近い温度だったと考えられる。本来、菊の花びらは色鮮やかな赤色のおひたしとなり、食卓に並ぶはずだった。しかし、調理人が加熱時に酢(少量)を添加し忘れ、色が茶色く、見た目も味もマズくなった。

■容疑者: アントシアニン (食用菊に含まれる色素) 悪いのは調理人では?

■担当刑事の報告:

菊に含まれる紫色の色素、アントシアニンは中性では紫色を示すが、酸性で赤、アルカリ性で青と、連続的に変色する性質を持つ。したがって、酢は味付けだけでなく、色を赤くするためにも必要不可欠だった。よって、アントシアニン(の性質をよく知らなかった調理人)を容疑者として検挙した。

※詳細については、調理人のブログ「はじめまして!新潟人です!」をご参照いただきたい。 (リンクは削除されました)

■未解決事項:

① 変色する色素を持つにも関わらず、(生の)菊の花は紫色をキープできるのは、なぜか?

② 酢を加えなかったことで赤くならないにしても、茶色くなったのは、なぜか?


まずは未解決事項①。アントシアニンという変色する色素を持つのに、なぜ咲いている菊の花の色は変わらず紫色なのだろうか・・・と、ここに粟島係長、音田巡査部長、輪九指導員が登場。

粟島 「そんなぁ~。なぜ空は青く、菊は紫か?って話をしていたら、キリないっすよ!しかも担当刑事の報告に、中性なら紫って書いてあるじゃないですか。逆を言えば、紫ってことは菊の花びらが中性だってことでしょ。」

…確かに、弱酸性がお肌にやさしいと言われるように、生き物の細胞は、たいがい中性に近い。植物細胞も例外でなくアントシアニンを含む菊の花が紫色なのは不思議じゃない…

輪九 「いや、問題の本質はそこじゃない。なぜ安定に色を維持できるのか、が問題だ。ちなみに空が青いのはな…」

音田 「わかりました!とりあえず②から考えましょう!」

では、未解決事項②。酢を加えずに茹でた菊の花びらが茶色くなったのは、なぜか。

粟島 「アントシアニンって色素は、色んな顔を持ってるんですよ。酸性で赤、中性で紫、アルカリ性で青ってコロコロ…てことは、茶色になることもあるんじゃないの?」

音田 「そこは既に調査済み。茶色くなるpHはないそうよ。」

粟島 「pH!・・・って何だっけ?」

音田 「酸性度、もしくはアルカリ性度のことよ。理科の実験でリトマス紙使って計ったでしょ。」

輪九 「よーし、こうなったら科捜研に協力要請だ。粟島、行ってこい!」

粟島 「えー、オレっすかー!?」

ということで、粟島警部補は物的証拠もないまま、科捜研こと科学捜査研究所の坂木のもとへ。

坂木 「事件を再現するには、食用菊を入手してもらえないと確かめようがないですね。」

粟島 「そこをなんとか!」

坂木 「ん~可能性としては、茶色くなったのは酸化したからじゃないでしょうか。」

粟島 「酸化って?」

坂木 「空気に触れて皮をむいたリンゴが茶色くなるのと一緒ですよ。」

粟島 「あ~なるほど。」

坂木 「それにアントシアニンは紫色の色素ですが、水和により退色した可能性もあります。」

粟島 「は?睡魔、退職?」

坂木 「退職じゃなくて、退色。色が消えるということです。アントシアニンは、水和反応、つまり、水がくっつくことで、色が消える性質があります。」

粟島 「色が消える!?しかも水で?」

坂木 「アントシアニンには発色団と言って、我々の目にアントシアニンの色が見えるために必要な構造があります。しかし、水がアントシアニンにくっつき、発色団の構造を破壊することで、紫や赤、青といったアントシアニンの色が消えるのです。しかも、この反応が起こるのは、中性の時。つまり、酢を入れて酸性にしなかったことが原因でしょう。」

粟島 「なに~!?アントシアニンが色を消して姿をくらませたというのか!」

坂木 「落ち着いてください。透明じゃなくて、茶色くなったんですよ。あくまで仮説ですが、酢を加えずに茹でてしまったことで、水和されて退色し、次第に空気に触れて茶色くなったと考えられます。粟島さんが食用菊を調達してくれれば、確かめられるのですが…」

さて粟島は、食用菊を調達し、仮説を証明することができるのか!?

・・・つづく・・・

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