天然酵母からパンを焼くべく、意気揚々と発足した「発酵部」。
今回は2回目のレポートです。
何はさておき、天然酵母が取れた様子をご覧いただきましょう。
どうだ、シュワシュワしてるでしょう?何かいそうな感じがしますよね!
「......って、これ本当に天然酵母のおかげ?」「泡と天然酵母に関係はあるの?」
そんな声が聞こえてきたとかこないとか。
ビンの中でいったい何が起きたのか?今回は、私の観察日記を公開します。
(夏休みの自由研究をお考えのみなさん、観察日記のコツもお教えします。)
前回は、さまざまな食材から天然酵母をとる準備まで行いました。
(酵母とは?ということに関しましては、前回の記事をご覧ください。)
レーズンなどの食材を、殺菌した瓶に入れ、水を加えました。
☆観察日記のコツ①☆
使った食材の重さや品名を記録しておこう!
酵母のような微生物は、ちょっとした環境の違い(水の量や、食材がつくられた会社)で、育ち具合が変わってきます 。もし失敗したときに何がいけなかったのか、分かるようにメモをしておきます。ちなみに、レーズンや酒粕はこんな感じ。
●レーズン
・レーズン(オイルコーティングされていないもの) 150g
(本当は商品名も書きますが、今回は省略)
・水(ペットボトルに入った飲料用) 150g
●酒粕
・酒粕 60g
・水(ペットボトルに入った飲料用) 200g
・砂糖 小さじ3
さて、準備ができたら、酵母を育てましょう!
......といってもやることは、ただひたすら待つだけ。 一日に一回ふたを開けて、空気を入れ替えます。そして軽く振ってやるだけ。
地味。ひたすらに地味。
そこで、二つ目のコツはこちら!
☆観察日記のコツ②☆
日記を書くのが楽しくなるようなルールをつくろう!
毎日観察を続けるには、楽しくなるような工夫が必要。そこで、発酵部では、各食材に担当者を決めて、「マイボトル」として育てることにしました。誰のボトルが一番早く酵母がとれるか、競争です!
また、観察日記はできるだけ短く、簡潔に書けるように表を工夫しました。
気温の記録も忘れずに!酵母の育ち具合は温度に大きく左右されます。30度を超すようだと、カビが生えやすくなるので、涼しい場所に移動しましょう。
......と、こんな感じで9日間、観察日記をつけてみました。 早速、酒粕とレーズンに着目して、写真とともに振り返ってみましょう。
☆観察日記のコツ③☆
写真はこまめに撮ろう!
●2日目 レーズンは水を含んで大きくなりましたが、あまり変化はみられません。一方、酒粕のビンからは、お酒の香りがほんのり漂っています。
「酒粕は日本酒の搾りかすだから、日本酒の匂いがするのは当然でしょ?」
確かにそうなのですが、ここでするお酒の香りは、酒粕の中の酵母がエタノール(お酒の成分)を作り出したものなのです。
酒粕の中には、日本酒をつくるときに働いた酵母が含まれています(お酒に使う酵母の名前、覚えていますか?サッカロマイセス・セレビシエです)。この酵母が、糖分を食べて、エタノールと二酸化炭素を出します。さらに、エタノールは酵母以外の雑菌の繁殖を抑えてくれるので、ますます酵母が育ちやすい環境ができるというわけです。
詳細に書くと、砂糖は主にスクロースという糖からできています。このスクロースが酵母の中の酵素によって分解され、グルコース(図のC6H12O6)ができます。ここからさらに反応が進み、エタノールができあがる、というわけです。
●4日目 レーズンには変化は見られません。一方、酒粕からは泡が大量に発生して、「かさ」が増えています。ふたを開けると、消毒液のような強いエタノールの香りがしています。
志水:よし、酒粕のビンでは酵母が育ったようだな。どんな酵母がとれたか、顕微鏡で見てみよう。
あれ、なんか小さくないか......。
酵母は菌類。大きさは通常5~10マイクロメートル。それに比べて、酒粕のビンの中にいた微生物は1~2マイクロメートルといったところでしょうか。前回の記事でご紹介したドライイースト(サッカロマイセス・セレビシエ)と比較しても、ご覧のとおり。
志水:ま、とりあえずパン生地をつくってみるか。
今から思えば、この判断がいけませんでした。
小麦粉、砂糖、水と混ぜて一晩。
翌日、科学コミュニケーターが働く部屋に入ると、酸っぱい匂いが部屋全体に広がっています......。
どうやら酒粕のビンの中では、酵母によってエタノールが作られた後に、別の細菌が増えていたようです。その細菌が、砂糖から乳酸などの酸をつくってしまったようです。(エタノールの濃度が高い環境でも生育できる細菌もいます。)
当然、こうなりました。
☆観察日記の仲良く過ごすためのコツ☆
他人に迷惑をかけたら、すぐ謝ろう。
さてさて、レーズンの方はどうなったのでしょう?
●9日目 レーズンに泡がびっしりついています。また、ビンを開けるとエタノールの香りがします。酵母(らしきもの)が育った証拠です。
記事の初めにご紹介した映像は、このビンを開けるときに撮影したものです。 二酸化炭素の泡が勢いよく飛び出してきました。
ビンの底には茶色の塊がたまっています。酵母が沈んだものです。
さて、この酵母(らしきもの)を顕微鏡で見てみましょう。
大きさからいって、酵母に間違いなさそうです。ただ、ドライイーストとは違い、楕円形です。
どうやらサッカロマイセス・セレビシエとは違う酵母がとれたようです!
その正体は何なのか?次回のブログでは、「天然酵母」の正体に迫ります。乞うご期待!
☆観察日記のコツ④☆
「これは何だろう?」「どうしてだろう?」という疑問を見つけよう!