エボラ出血熱って何?まずは情報あつめから

8月8日にWHO(世界保健機関)が、西アフリカで流行しているエボラ出血熱について公衆衛生上の「緊急事態」を宣言しました。

これは、現在の仕組みになった2005年以来、2009年の新型インフルエンザ、今年5月のポリオに続く、3回目の緊急事態宣言となります。

今回のエボラ出血熱の感染は、ギニア・シエラレオネ・リベリアなど西アフリカの国々を中心に起きています。8月9日までの集計で、死亡者数が1000人を超えるといった事態に陥っています。このことをうけ、WHOは「エボラ出血熱の歴史の中で最も深刻」で、「世界的に流行する可能性がある」と報告。感染が確認されていない国に対しては、空港などで高熱を出している人がいないかなどの監視の強化を勧告、同時に各国に対して感染地への支援を呼びかけました。

赤い部分が、主な流行地域であるギニア、シエラレオネ、リベリア

今、西アフリカでエボラ出血熱が猛威をふるっています。 このような文面をみると、不安になる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、厚生労働省のHP(※1)によると 「日本国内でエボラ出血熱が流行する可能性は、現時点ではほとんどありません。」 となっています。(2014年8月11日現在)

流行する可能性が低いのには理由があります。 エボラ出血熱は原因と対策が分かっている病気です。 正しい知識を持って対応すれば、必要以上に怖がらなくてもよい病気です。 また、今回のエボラ出血熱の大流行は西アフリカ特有の事情も絡んできます。

それらを知ることで、 なぜエボラ出血熱が日本に流行する可能性が低いのかを一緒に考えていきましょう。

(2005) Charting the Path of the Deadly Ebola Virus in Central Africa. PLoS Biol 3より転載

エボラ出血熱とは、エボラウイルスが引き起こす感染症です。 エボラウイルスに感染してしまうと、2~21日間の潜伏期を経て、高熱、頭痛、下痢、発疹といった症状があらわれ、多くの場合、50%~90%の確率で死にいたります。ヒトからヒトへと感染しますが、インフルエンザやはしかなどと異なり、同じ部屋にいるからといって感染するようなことはありません。症状のでている人の体液(排泄物、血液、汗、母乳、吐物など)にはエボラウイルスが含まれているので、これに触れると傷口や粘膜からウイルスが入り込んで感染します。治療法も見つかっていないため、なおさらやっかいな存在です。

ですが、エボラ出血熱は、感染の広がる力はそれほど強くありません。

というのも、症状の出ている人の体液からしか感染しません。そのため、患者や患者の体液に触れないようにすること、医療従事者が看護などのために触れるときは、手袋やマスクなどで防いだ上で、手洗いを徹底するなど感染症対策をしっかりすることで、感染を防ぐことができるのです。

エボラ出血熱は、1970年代からアフリカ中央部でたびたび発生していました。致死率は高いのですが、上で紹介したように対応は可能なので、感染が大きく広がることはありませんでした。このため、西アフリカではエボラ出血熱が発生した報告がなく、地元の人や医療関係者にエボラに対する知識があまり知られていなかったのです。アフリカでよく見られるマラリアの症状(高熱、頭痛、吐き気)と似ていたため、エボラ出血熱と判断するのが遅れたことが原因の1つです。また、西洋医療よりも地域の伝統療法に頼る人が多い点も感染を拡大する一因になりました。

さらに、人が国境を越えて行き交うことが流行に拍車をかけたと考えられています。

国境なき医師団の医師によると(国境なき医師団HP参照 ※2) 「現地の人にとって国境とは、私たちが思い描くような厳重なものではありません。こちらの国境はさえぎるものがなく、人々が自由に行き来しています」と述べています。

症状の出ている人が国をまたいで移動することで、様々な場所での感染リスクが高まります。こういった事情が絡みあって、今回の西アフリカでの流行拡大をもたらしてしまったと考えられます。

「エボラ出血熱が日本に上陸する可能性はないのか?」と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

今のところ日本に上陸する可能性は低いと考えられています。

繰り返しになりますが、エボラウイルスは発症した患者さんの体液などに直接接触がなければ、まず感染することはありません。蚊から感染が広がることもありません。冬に猛威をふるうインフルエンザのように空気感染はしないため、被害は地域限定的です。

WHOは流行地で感染するリスクの高い人として、医療従事者、患者の家族や近親者、死亡した患者の葬儀で遺体に触れる参列者、熱帯雨林の動物の死体に直接触れる人(エボラウイルスはオオコウモリやサルにも感染します)を順に挙げています。

いかがでしょうか?医療支援のために派遣されている方々を別とすると、上のカテゴリーに当てはまる日本人は少ないことがわかると思います。旅行で西アフリカを訪れる人もいるかも知れませんが、一般的な旅行では感染する機会がまずないこともわかります。

それでも感染した人が日本に来る可能性はゼロではありません。空港などでは高熱を出している人がいないかをチェックし、感染の疑いがある人が見つかれば直ちに適切な医療施設に運ばれる態勢を整えています。一般の人が患者と接する機会はほとんどないと思われます。

日本よりも西アフリカとの人の行き来が激しい米国では、「感染した人が米国に入るのを避けることはできないだろう」とアメリカ疾病管理予防センター(CDC)は見ています。しかし、「米国で大規模な拡大は起きないと確信している」とも同センター長は述べています。感染者が米国に入ってきてもすぐに隔離して、医療を施す態勢が整っているからでしょう。

このように医療体制が整っていれば、感染が広がるとは考えにくいことがわかります。

ここまでエボラ出血熱の情報について語ってきましたが、 一つ書き忘れていることがありました!!!!

ご挨拶が遅れましたが、

科学コミュニケーターの樋江井と申します。

学生時代はアジア、ヨーロッパ、アメリカ大陸を旅していました。 旅といえば、現地のご飯を食べ、お腹をくだしながら移動していたことを思いだします。 日本のように衛生環境の整っていない国も多かったため、お腹事情に関しては散々でした。

でも今の季節、日本でも衛生環境を気にかけないといけないんです。

食中毒!

これが怖いです。

帰宅したときや食事の前などは手をよく洗う。 BBQの時はお肉をしっかりと加熱する。 などなど、衛生環境を清潔に保ちつつ、残りの夏を楽しんで下さい!

私も手洗いを心がけます。

出典

※1厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/ebola.html(リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)

※2国境なき医師団
https://www.msf.or.jp/news/detail/voice_1449.html(リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)

参考

○CDC(アメリカ疾病管理予防センター)
https://www.cdc.gov/(リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)

○WHO(世界保健機関)
https://www.who.int/en/(リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)

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