飛んでけ!「みんなの」はやぶさ2!

イラスト:池下章裕、提供:JAXA

「はやぶさ2」が無事に旅立ちましたね!

良かった!いやあ、良かった。

こんにちは、志水です。

12月3日、種子島宇宙センターからH-IIAロケットに載せられた小惑星探査機「はやぶさ2」が宇宙へと旅立ちました。 12月8日現在、探査機は太陽電池パネルを広げ、6年にも渡る長い旅路のスタートを無事にきったようです。

そう!旅は、まだ始まったばかり。

どうせなら、これからの活躍を楽しみに待ちたいですよね。

「TVで騒いでいたけど、はやぶさ2は何をするんだっけ?」

そんなあなたにぴったりのお話、ありますよ(小声)。

題して、「宇宙を知る、はやぶさ2を知る」。

打ち上げからさかのぼること3日、「はやぶさ」や「はやぶさ2」の開発にも携わった、(独)情報通信研究機構・鹿島宇宙技術センターの布施哲治(ふせてつはる)先生に、はやぶさ2への期待をお話しいただきました。

当日も惑星柄のネクタイをされた布施先生。
未来館ショップにも置いてほしいなあ。
布施先生(左)には、未来館の開館当初(2001年)からお世話になっています。
お話をいただいた回数は、なんと24回(以上)!

はやぶさ2の目的は、「小惑星『1999 JU3』から砂を地球に持ち帰ること」。 では、小惑星とはどのような天体なのでしょう?

ずばり、名前の通り、「小さな」「惑星」。 惑星である地球や火星のように太陽の周りをぐるぐる周っています。

国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト提供

ごましおのように見える白い点が小惑星。 分かっているだけでその数なんと約40万個以上! 多くの小惑星は火星と木星の間にある「小惑星帯」というところに存在します。

それだけ小惑星があるなら、1つぐらい私にくれたっていいじゃなーい(志水、心の声)。

というわけで、布施先生からこんな問題が出されました。

Q.小惑星帯の中にある小惑星のうち、本当にあるのはどれ?
  1. 東京
  2. 志水正敏(しみずまさとし、筆者です)
  3. 布施哲治(ふせてつはる)

正解は・・・・

「東京」と「布施哲治」は実在します!

いいなあ、布施先生。

アマチュア天文家の方が発見した小惑星に、名前をつけてもらったそうです。

私も星になりたいなあ(深読みはしないでください)。

さて、今回の目的地である小惑星「1999 JU3」は、小惑星帯より地球に近いところ(火星と地球の間)を周っています(何らかのきっかけで地球に突入したのが「隕石」です。詳しくは、ほんだの記事をどうぞ)。

とはいえ、地球にすむ私たちにとって、遠いところであることにはかわりはありません。なぜわざわざ小惑星に「行く」必要があるのでしょうか?

答えの1つが、「地球からはよく見えないから」。 「1999 JU3」は1kmにも満たない小さな星。 地球からでもレーダーや望遠鏡を使って観測をしますが、はっきりとした形や性質はわからないのだそう。「東京から富士山の頂上にあるテニスボールが見える」すばる望遠鏡でも、小惑星は点にしか見えません。

そして、もう1つの答えが「小惑星の砂と隕石と比べることで、隕石が貴重な資料になるから」。もし小惑星の砂と、地球で採れた隕石が同じものでできているなら、今後隕石から他の小惑星のことを推定することができますよね。実際、初代「はやぶさ」が持ち帰った小惑星「イトカワ」の砂とある種の隕石を比較すると、性質がよく似ていたそうです。

参加してくれた女の子から鋭い質問。

女の子:「イトカワの砂はどのように保存されているのですか?」

布施先生:「僕も入れないようなところに厳重に保管されているのです。」

はやぶさ2の両翼には、大きな期待がかけられているのですね。

でも、こんな風に、小惑星に行って、砂を持って帰ってこられるようになったのも、地道な研究の積み重ねによるのです。 布施先生が見せてくださったのは、今から約30年前に作られた冊子。

そんな昔から小惑星探査が考えられていたとは。

表紙には、宇宙飛行士が小惑星を削っている様子が描かれています。

布施先生はこんなことをおっしゃっていました。

「宇宙探査には時間がかかります。だからこそ、子供たちやそのご家族に関心をもってもらいたい。そしていつかは、宇宙探査に携わってほしいですね。」

今回のサイエンティストトークにもたくさんのお子さんが参加してくれました。この中から、未来の「はやぶさX」をつくる研究者がでてくるかもしれませんね。

「...でも、うちの子は宇宙とは違うところに興味があるみたいだし。」

と思った、そこのお母さん!

布施先生はこんなこともおっしゃっていました。

「宇宙探査にはさまざまな人が携わっています。例えば、ロケットの打ち上げにも、保険がかけられていますから、保険会社の人が宇宙探査に関わる、なんてこともあります。」

はやぶさ2にも多くの方が携わっています。部品をつくる人、つくるための機械をつくる人、はやぶさ2を運ぶ人、はたまたロケットの保険を担う人。はやぶさ2は「みんな」のものなのです。是非みなさんもはやぶさ2と自分のつながりを探してみてくださいね。そして「みんな」で6年間の長い旅を応援しましょう!

最後に:

先生と打ち合わせをするために、茨城県の鹿島を訪ねた日のこと。 せっかく鹿島に来たので、と鹿島神宮に寄ったところ、こんなお守りを見つけました。

鹿島立(かしまだち)とは旅立ちのこと。 武士や防人が出発の際に鹿島神宮にお参りしていたことから、この鹿島立守は旅の安全にご利益があるそうです。

はやぶさ2の打ち上げ成功にも、ちょっとだけ役に立てたかな? 私が見つけた、はやぶさ2と自分のつながりでした。


サイエンティストトーク:「宇宙を知る、はやぶさ2を知る」

講師:布施哲治氏(情報通信研究機構 鹿島宇宙技術センター 主任研究員)

企画・ファシリテーション:志水正敏、本田隆行(日本科学未来館科学コミュニケーター)

開催日時:平成26年11月30日(日) 13:45~14:45

開催場所: 1階 コミュニケーションロビー

参加人数124名(ニコニコ生放送視聴者数のべ3800名)

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