小さな世界の熱~い戦い

こんにちは!梶井です!

10月5日に発表された今年のノーベル化学賞は、分子マシンという分野が受賞対象となりました。
分子を精密に制御し、ナノメートルの世界で機械のような分子を作っている分野です。

日本でも、九州大学の新海征治先生をはじめ、多く方が研究をしています。

さて、化学賞の発表後に、ノーベル財団がFacebookにある記事を投稿したことをご存知でしょうか?その記事に梶井の心は鷲づかみにされ続けています。

その内容とは・・・

第1回 国際ナノカーレース開催!!!

ナノカーレース特設サイトURLはこちら。
http://nanocar-race.cnrs.fr/indexEnglish.php (リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)

(○_○) !?!?

速報ブログでも、「分子で作ったモーター使って、世界最小の四輪駆動自動車なんかも報告されてますよー」という紹介をいたしました。

↑分子で作った車、ナノカー。
(Nobelprize.org)

しかし、ナノカーでレースまでしようとは・・・!!なんてことだ!!!

まず、日程と開催地です。

当初は今秋に開催予定だったのですが、延期になり2017年の春に、フランスのトゥールーズにある材料精緻化・構造研究センター(CEMES)で行われます。
CEMESは、フランス国立科学研究センター(CNRS)に属する研究機関です。決してアヤシイ団体ではありません。
今年の化学賞を受賞された一人であるソバージュ博士は、CNRSに1971~2014年に所属されていました。

次に、ルール!!このルールがまた、僕をワクワクさせるんです!

※ルールに関しては、現在見直しがされているようで、本番までに変更されそうです。
以下の内容は、現時点のルール(http://www.cemes.fr/Molecule-car-Race?lang=en) (リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)に基づいた情報です。

ナノカーが走るコースの素材は、

"Gold"、"Aurum"の金です!!-268 ℃、真空状態の金の表面を走らせるのです!現実の車だったら考えられない世界ですね。

現時点のルールを読むと、(梶井の英語の読み間違いでなければ)金で作られたこんなコースを走るようです。

金の平らな面に、やはり金でできた障害物(図の赤丸)をくっつけたコースです。図に4 nmと書いてあることに気がつきましたか?1 nm = 0.000000001 m、つまり1mの10億分の1です。
こんな小さいコースをどうやって作るのでしょうか?そして、どうやってナノカーをこんなにクネクネと自由自在に動かすのでしょうか?

それらも気になるのですが、もっと気になることがあります。

コースを作るのは参加者自身・・・!!
 
参加者が設計図通りのコースを作り、委員がOKサインを出さなければいけないのです。

「コースも作れないようなチームに、走る資格はございません!」

とでも言いたげなルールです。

このようにして、制限時間38時間の耐久レースが行われます・・・

記念すべき第1回大会である今回は、計6チームが出場するようです。

OHIO BOBCATというイカした名前のナノカーもあれば、これ壊れるんじゃないの?と不安になるようなナノカーもあります。

その中で、今回、梶井の推しチームはこちらの2チーム!!

① Nanocar Team (Rice & Gras Universities)

なにがそんなに推しポイントなのかというと、チームメンバーにJames M. Tour教授がいらっしゃることです!この先生がいるだけでワクワクが止まりません!

なぜか?

実は、Tour先生は元祖ナノカーを作った方として有名ですが、こんな分子を創った遊び心満載の方なのです。

↑ナノプシャンの1つ。ナノキッド。

見たことのある方もいらっしゃるのではないのでしょうか? ナノプシャンという、人のような形に見えるかわいいかわいい分子です。

この辺りのお話は、サイエンスライターである佐藤健太郎さんのHP、有機化学美術館で詳しく語られています。 http://www.org-chem.org/yuuki/nanoputian/nanoputian.html (リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)

前置きが長くなってしまいましたが、このチームの車がこちら。

© Rice University
Nano-car Team - Texas et Autriche

紫色のボールのようなところがタイヤで、青色が車軸です。The ナノカー!という形をしていますね。 Tour先生の研究室のHP(http://tournas.rice.edu/website/nanoprix.html) (リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)にあるアニメーション見た限りでは動きそうな感じもしますし、アニメーションの見せ方が上手いだけじゃないの?という感じもします。 本番では一体どんな走りを見せてくれるのでしょうか!?楽しみです!

② きました!日本!NIMS!!

我が茨城、つくば市にある物質・材料研究機構(NIMS; National Institute for Material Science)は、物質・材料科学分野で世界トップレベルの研究をしている研究機関です。

それでは、そのNIMSチームが作り上げたナノカーをご紹介しましょう!こちらです!

(図版提供: NIMS-MANAチーム リーダー 中西和嘉 先生)

・・・車?

化学を専門としていない方は、形をイメージできないかと思います。
実際には、平面ではなく、下図のような立体的な構造をしています。

(図版提供: NIMS-MANAチーム リーダー 中西和嘉 先生)

上図右の絵の両端で交差している手と足のようなところが、キャタピラのような動きをするらしいです。
実際の動きを考えたアニメーションも用意されているので、見てみましょう。

(図版提供: NIMS-MANAチーム リーダー 中西和嘉 先生)

ビヨーン、ビヨーン。

・・・これで前進できるのでしょうか。

こういうときは、思い切って分子の気持ちを考えましょう!

かじい号発進!

おー、なんか動ける気がしてきたぞ!?

※本当はこんなに激しく手足が動いたりはしないようです。

そして極めつけはこちら。

Sponsored by TOYOTA

「ナノの世界だろうが、車は車!」という熱い思いが伝わってきて、とてもGoodです。
自動車メーカーでは、ほかにもプジョー・シトロエンがフランスチームのスポンサーになっています。

くぅ~!なんなんでしょう!この、ものっっっっすごい小さい世界の現時点では役に立たないであろうことに全力投球をしている感じ!熱いですね!!イグノーベル化学賞を狙えるんじゃないかとすら思えます!!!

本番が楽しみです!

to be continued...

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