太陽系外惑星をもっと知りたい!ジェイムズ・ウェッブ望遠鏡とは?

先日のブログ(リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)で渡邉が紹介しているように 、「地球サイズの惑星が7つもある太陽系外惑星系」が確認されました。
これはわくわくしますね!液体の水はあるの?暖かくて生き物がすめるような環境なの?疑問は尽きません。
もっと詳しく知りたい!

この成果を告げる記事(リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)の中でNASA(米航空宇宙局)は、
「2018年に打ち上げられる予定のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で、惑星の大気の化学組成や、惑星の温度、表面の気圧を分析できるようになる」
と書いています(編集部2019年1月追記:打ち上げは延期になりました。文末の注をご参照ください)。

今回は、この宇宙望遠鏡について紹介しましょう。

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡とは?

新しい宇宙望遠鏡ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (James Webb Space Telescope、以下 JWST)。
名前の由来であるジェイムズ・ウェッブは、1960年代、つまりアポロ計画の頃のNASA長官の名前です。

Image credit : NASA / Northrop Grumman

JWSTは、現在稼働中のハッブル宇宙望遠鏡(以下 ハッブル)やスピッツァー望遠鏡の後を継ぐ望遠鏡でもあります。
私たちに驚くべき宇宙の姿を見せてくれたハッブルは、この4月に打ち上げから27周年を迎えます(宇宙望遠鏡としてはかなりの高齢です)。
ハッブルは2021年まで運用予定なので、JWSTはハッブルとともに、そしてハッブル運用終了後の観測を担います。

系外惑星大気を観測する!

JWSTには4つの主要ミッションがあります。系外惑星大気の赤外線分光観測はその一つです。
この観測の基本的な仕組みを図にしてみました。

JWSTに載せられた赤外線を測る分光器で、恒星からの光を観測すると、たとえば上のオレンジの線のようなデータが取れます。
惑星が恒星の前を通ったときに、もしその惑星が大気をもっていると、下の赤い線のように変化します。

このとき、次の二つのことが起こっています。

①惑星にカットされた分、光が弱くなる→恒星に対する惑星の相対的な大きさがわかる

②特定の波長の光が、惑星大気中に含まれる分子に吸収されてそこだけ減る(吸収線が現れる)→その物質が大気中にあることがわかる

吸収線の現れる波長、その深さ、形状(太さ、広がり方)を分析すると、大気に含まれている分子の種類やその量、大気の温度や圧力の情報を得ることができます。
惑星が恒星の前を横切るのを観測するこうした方法は「トランジット法」と呼ばれていて、系外惑星の観測ではとても重要な手法です。
こちらの記事(リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)でも紹介しているのでぜひ併せてお読みください!

ハッブルとの大きな違いは、主鏡の大きさと、観測する光の波長帯です。
一般に、望遠鏡は主鏡が大きいほど多くの光を集められるので、観測の能力が高いのですが、主鏡の大きさをハッブルと比べるとこんなに大きくなります。

Image credit : NASAの図をもとに改変

また、系外惑星大気の観測自体はすでにハッブルなどでも行われていますが、ハッブルは可視光での観測が主でした。
水蒸気、二酸化炭素、メタンなど注目すべき分子の吸収帯は赤外にあるので、赤外線で調べる必要があります。

JWSTは場所と大きさがすごい!

JWSTには2つの特徴があります。

・月より遠くに設置!

ハッブルが地球を周回しているのに対して、JWSTは月よりも遠くの「第二ラグランジュ点L2」と呼ばれる地点を周回するように設置します。地球から150万キロ、月と地球の距離の約4倍の地点です。

Image credit : NASA

なぜこんなところにわざわざ設置するのでしょうか?
赤外線観測の機器の温度を低温(マイナス233℃!)に保つために、太陽光を遮断する必要があるからです。
L2では太陽と地球との相対位置が一定になるので、ここに設置するとシールドを常に太陽に向けやすくなります。

・過去最大!宇宙で大きく開く!
Image credit : NASA

これはJWSTの模型の写真です。
先ほどハッブルとJWSTの主鏡の大きさを比較しましたが、全体では縦横がテニスコートぐらいの大きさです。
宇宙望遠鏡では過去最大!そのままではロケットに入らないので、折りたたまれて打ち上げられ、目的地まで向かう30日間で少しずつ主鏡やシールドを開いていきます。
開いていく様子がすごいのでこちらの紹介映像 (JWSTのYouTube)も見てみてください!

系外惑星研究の面白さは、私たちの知っている太陽系とは違った宇宙の姿が見えてくることだと思います。
系外惑星について考えるとき、私は『スターウォーズ』を思い浮かべます。
こんな星が宇宙のどこかには本当にあって、実際にそれを発見できたらすごいですよね!実はすでに、アナキンとルークの故郷タトゥイーンのように2つの太陽を持つ惑星(連星系の2つの恒星の周りを回る惑星、ケプラー16b)が見つかっています。

来年2018年10月予定の打ち上げに向けて準備が進んでいて、3月末に本体の振動試験も終わったところです。
今までは主に系外惑星を"見つけること"が目的でしたが、JWSTではその惑星がどんな惑星なのかを詳しく調べていきます!

参考:NASA James Webb Space Telescope

2019年1月追記
この記事の公開後、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の打ち上げは2021年以降に延期になりました。

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