今年のお月見は土星の「月」に注目しました!
地球に似た衛星「タイタン」の魅力を探る 【プロローグ】

こんにちは!科学コミュニケーターの渡邉です。

今年の中秋の名月は10月4日でした。皆さんはお月見を楽しめましたか?

筆者が撮影した月(2017年10月4日)

東京のお台場の空はあいにく曇っていましたが、雲の隙間から見える月というのも、なかなか味わい深いものでした。未来館では毎年恒例のイベント「中秋の名月 未来館でお月見!」を9月13日から10月6日まで行っていました。

「中秋の名月 未来館でお月見!」で上映されたGeo-Cosmos特別コンテンツ

今年は特別に、地球の月だけではなく、土星の「月」にも着目しました。ここでいう「月」というのは、惑星の周りを回っている衛星を指します。土星には62個もの衛星が発見されており、その衛星のさまざまな表情を、土星探査機「カッシーニ」がとらえてきました。

そのカッシーニは9月15日に無事その役目を終えたことが確認され、昨日はちょうど一ヶ月という節目になります。(そして偶然にも、昨日はカッシーニの打ち上げからちょうど20周年という大きな節目の日でもあります!)

62個の衛星の奥深さを味わいたい方はこちら高知尾のブログを、
カッシーニがどんな探査機か詳しく知りたい方はこちら渡邉のブログ を
ご参照ください。

土星の62個の衛星の中も、カッシーニ計画で一番、探査に力を入れたのは最もよく調べられたのは「タイタン」です。

このオレンジ色のぼんやりした衛星、タイタンは、他の惑星や衛星にはない魅力がたっぷりつまった天体なのです!地球に似ているって本当?生命がいるかもしれないの?昔の地球の気候の謎を解く鍵なの?そんなタイタンの魅力を、本ブログにていろいろな方向から探っていきたいと思います!

探査機カッシーニ以前までで分かっていたタイタンのこと

タイタンが発見されたのは360年以上も前の1655年です。1781年に発見された天王星、1846年に発見された海王星よりも古くに見つかっています。タイタンは太陽系の衛星の中でも最大級の大きさ(直径5150kmで水星よりも大きく、火星より二回り小さい程度)で、発見しやすかったのです。ギリシャ神話に出てくる巨人族「ティーターン(Titan)」にちなんで名づけられたのもうなずけます。

そのタイタンの素性は、望遠鏡の進化や探査技術の発展に伴って、徐々に明かされていきました。1980年前後には、パイオニア11号、ボイジャー1号、ボイジャー2号と3機の探査機が立て続けに土星やタイタンのそばを通過しました。

当時分かったタイタンの大事な特徴の一つめ、地表がマイナス180℃の極寒の世界であること。地球と比べると土星は太陽からかなり遠く、太陽からの光も地球のおよそ1%しか届きません。

さらにこのとき、大気についてもかなり分かりました。タイタンが98%の窒素と2%のメタンでできた厚い大気をまとっていると分かりました。メタンは、私たちの身の回りでは、例えば都市ガスとして使われています。大気圧は地球の1.5倍とさほど変わらず、大気の量で比べると地球の10倍もあることが分かりました。このサイズの天体で、こんなに厚い大気を持つものは太陽系のどこを探してもありません

そしてタイタン大気の最大の特徴は分厚い「もや」でできていることです。地球での「もや」は、霧と同じように空気中の水蒸気が凝結し、細かい水滴となって浮かんでいて視界が悪い状態ですが、霧よりも薄いものを指します。

朝もや

タイタンの「もや」も同様ですが、地球とは異なり水蒸気でなく、別のある粒子が「もや」を作っています(それが何なのかは第三回目でたっぷりご紹介します)。「もや」は私たちが目で見ることのできる光(可視光)をあまり通しません。そのため肉眼ではもちろん、ボイジャーなどの探査機でも、地表面の様子を見ることはできませんでした。

ボイジャー1号が撮像したタイタン

でもその下の世界を知りたいと思うのが科学者というもの。液体の海が広がっているに違いない、生命を生み出すのに必要な物質が存在しているはずだ。その可能性を指摘した惑星科学者は、SF作家としても著名なカール・セーガンです。

カール・セーガン(1934-1996)

タイタンの知られざる世界は、2000年代に入ってから、探査機カッシーニとそれが運んだ着陸機ホイヘンスによって明かされることになります。カッシーニとホイヘンスはどんな世界を見てきたのでしょうか?そして、観測からどんな科学的な発見があったのでしょうか?

次回から3回に分けて、皆さんを不思議なタイタンの世界へご案内します!

次にご紹介するのは、カッシーニとホイヘンスが見てきた不思議な地形と、そこから分かった気象のお話です。こちらもぜひご覧ください!

参考文献
・Brown, Robert, Jean Pierre Lebreton, and Jack Waite, eds. Titan from Cassini-Huygens. Springer Science & Business Media, 2009.

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今年のお月見は土星の「月」に注目しました!
地球に似た衛星「タイタン」の魅力を探る

★【プロローグ】 この記事
【地形と気象編】
【生命の材料編】coming soon!
【生命のエネルギー編】coming soon!


今年のお月見は土星の「月」にも注目しよう!
土星探査機カッシーニの功績を讃えて
土星の「月」から学ぶ、物理学と人間関係??

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