トークイベント 「掘る」×「火山」 レポート

"新種" の火山 !? 「プチスポット火山」 の謎にせまる(前編)

皆さん、こんにちは!
科学コミュニケーターの倉田祥徳です。

今回紹介するのは、“新種”の火山。
その名も 「プチスポット火山」 です!
なんとも可愛らしい名前ですが、この 「プチスポット火山」 が今、アツいのです。火山だけに……。
ふざけすぎました。

本ブログでは2025628日に開催したトークイベント「“新種” の火山 !? 『プチスポット火山』 の謎にせまる」をふりかえりながら、「プチスポット火山」 の面白さをたっぷりとご紹介したいと思います。
なお、本ブログは前編・後編の2本立てとなっております。前編では主に 「プチスポット火山」 の基本情報について、後編は 「プチスポット火山」 の研究を中心にご紹介します。

アーカイブ動画はこちらからご覧ください。

ゲストスピーカーは、きれいな石が大好きな秋澤先生!

今回のイベントでお招きしたのは、広島大学の秋澤紀克先生です。秋澤先生はまわりに海がない栃木県出身ですが、今では研究フィールドのほとんどは海だそうです。
とりわけ、海から採取される岩石に注目して研究されています。

イベントで使用した秋澤先生の自己紹介スライド

このトークイベントでは、「プチスポット火山」 周辺から採取された岩石の話を中心に、研究の面白さをご紹介いただきました!
秋澤先生は本当にお話ししやすい方で、トークイベント中には思わず漫才のようなやりとりになる場面も……。

トークイベント中のようす

まずはここから! プチスポット火山のきほん

火山とは、地下のマグマが地表に噴き出すことでできる地形のことです。

プチスポット火山が発見されるまでは、火山ができる場所は大きく分けて3つあると考えられてきました。

1つ目は、地球の表面を覆っている厚さ数キロメートルから数十キロメートルのかたい岩石であるプレート(海洋プレート) が生まれる場所 「海嶺」 。
ここではプレートが引っ張られ、マグマが噴き出して新しい海底がつくられます。

2つ目は、ハワイに代表される 「ホットスポット」 。地球の深いところから高温の物質が沸き上がってきて火山になります。

そして3つ目が、日本列島のように海洋プレートが陸側のプレートに沈み込む 「沈み込み帯」 にできる火山です。この3つ目は私たちにとって、もっとも身近な火山のタイプだと思います。
しかし、この3つのタイプとは異なる場所で、新たなタイプの火山活動が日本人研究者によって報告されました。
それが、海洋プレートが折れ曲がる場所に発生する 「プチスポット火山」 です。

火山ができる場所を説明したスライド

 「プチ」 という言葉にはフランス語で 「小さい」 という意味がありますが、いったいどれくらい小さいのでしょうか?
そこで、その “プチ” さを実感していただくために、イベントではクイズをご用意しました!

「プチスポット火山の大きさはどのくらいでしょうか?」

 東京ドーム・富士山・エベレスト山の選択肢がありましたが、結果はいかに……。

クイズのようす

答えは東京ドームぐらいとのことでした!正解できましたか?

活火山である富士山や桜島と比べても、プチスポット火山はやはりその名の通り、とても小さな火山なのだと実感しますね。
そんなプチスポット火山は、海水面からおよそ5000メートルよりも深い海底に存在しています。そんな深い場所にある火山の特徴を調べたいと思ったときに、いったいどうするのでしょうか。
まさか人がそのまま潜っていくわけにはいきませんし……。

そこで活躍するのが 「しんかい6500」 です!

「しんかい6500」 は水深6500メートルまで潜ることができる日本の有人潜水調査船で、深海での調査やサンプル採取などに使われています。秋澤先生は5回も乗船経験があるそうです!

「しんかい6500」を説明するスライド。秋澤先生も写っています!

余談にはなりますが、秋澤先生に 「深海で珍しいもの見つかりましたか?」 と聞くと、ペットボトルを見かけたことがあるとのこと。深海にまでゴミがあると聞くとなんとも悲しい気持ちになりました。
話をもどすと、「しんかい6500」 でプチスポット火山付近の岩石を採取すると、なんとも穴ぼこだらけの岩石だったそうです。これは大量の二酸化炭素や水蒸気を含んでいたことを意味しており、詳しく調べてみると、通常のマグマの5倍以上の二酸化炭素を含んでいると見積もられるそうです。

プチスポット火山付近の岩石の写真

小さいのに二酸化炭素をたくさん含むマグマをもつ火山、奇妙ですね。この奇妙な火山「プチスポット火山」 を調べる方法が、実は 「しんかい6500」 で潜る以外にもあります。

それは……「掘る」 ことです!

え、掘る? と思われた方もいらっしゃると思います。深海5,000 メートルまで掘るなんて無理じゃない? と思いますよね。そこで登場するのが、地球深部探査船 「ちきゅう」 です。

地球深部探査船 「ちきゅう」

地球深部探査船 「ちきゅう」 は、海水面からなんと1万メートルもの長さのドリルパイプを下ろすことができます。このドリルパイプを使って海底を 「掘る」 ことで、海底から地質試料を採取するのです。採取された円柱状の地質試料は 「コアサンプル」 と呼ばれ、地球内部の成り立ちや過去の環境を調べるための貴重な手がかりとなります。未来館の5階常設展示 「“ちり” も積もれば世界をかえる」 にて地球深部探査船 「ちきゅう」 および 「コアサンプル」 の模型展示がありますので、ぜひご覧ください。

そして、この 「ちきゅう」 を用いて、今年の秋に東北沖に存在しているプチスポット火山を掘削するプロジェクト 「Expedition 502」 がはじまります! 秋澤先生も航海メンバーに選ばれているということで、ブログ後編では 「Expedition 502」 について深堀りし、さらには、秋澤先生の研究内容も紹介していきたいと思います。

ブログ後編はこちらをご覧ください。

https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20250813post-568.html

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