自然エネルギーでつくられた電気を自宅に届けられるの? 私たちの「選択」が進めるエネルギー大転換 ①電気の選択

私たちの快適な生活を支える電気は、つくる段階でたくさんの二酸化炭素が排出されているのが現状です。そんな中、電力システム改革により、「○○産のキャベツを□□の店で買おう」という日々の買い物と同じように、家に届ける電気を生活者が自分で選べるようになりました。では、どのような視点で電気を選ぶことが大切なのでしょうか。

日本科学未来館は2020年3月1日にトークセッション「今から始める! 『エネルギー大転換』~電気・家・車の選択~」を開きました。エネルギーの未来について考える「どうする!?エネルギー大転換」展の関連イベントです。本ブログでは「エネルギー大転換」の鍵を握る私たち生活者の「選択」について、3名の専門家が語った内容を紹介していきます。第一弾は、国際環境NGO FoE Japanエネルギー・気候変動担当の吉田明子氏のお話です(以下の内容は吉田氏が語った内容を要約・抜粋したものです)。

吉田明子氏(国際環境NGO FoE Japan エネルギー・気候変動担当)

2007年よりFoE Japanで気候変動やエネルギー分野でキャンペーンや政策提言活動を行う。2011年よりネットワーク「eシフト」事務局、2015年に消費者からの電力選択をよびかけるパワーシフト・キャンペーンを立ち上げ事務局を務める。

いま、自然エネルギーの電気を選ぶわけ

2011年に起きた東日本大震災と原発事故は、日本はもちろんのことドイツでもエネルギーのあり方や人々の意識を大きく変えるきっかけになりました。また、世界各国で気候災害が顕在化しており、2018年の西日本豪雨でも、その原因に気候変動が関係していると気象庁も発表しています。世界は2016年に発効したパリ協定のもと脱炭素社会を目指していますが、日本をはじめとした各国の温室効果ガス削減目標では、気温上昇を2℃未満に抑えるには不十分であることもわかっており、世界中の若者からもさらなる取り組みを求める声があがっています。日本で消費されるエネルギーや排出される二酸化炭素はまだまだ削減可能であり、特に、電気を自然エネルギーでつくられたものに転換していくことが重要です。

電気は「自分で選ぶもの」に

日本の電力システムは改革の途中です。そもそも従来の電力システムでは、日本を10の地域にわけ、そのエリアを担当する大手電力会社(東京電力など)が、電気を「創る(発電)」、「送る(送電)」、「売る(小売)」という各段階すべてを独占して実施していました。同じエリア内に住む人は、みな同じ電力会社から電気を買い、その料金は発電・送電にかかった経費に一定の利益を上乗せして値段をつける総括原価方式で決められたものを使用量に応じて支払うシステムでした。

その仕組みの本格的な改革が、2011年の原発事故のあと議論され、2015年から実施されています。特に2016年度からの小売の全面自由化(一般家庭や小規模向けの自由化)で大きく仕組みが変わり、従来の電力会社ではない、様々な電力事業者が新規参入しました。加えて、新たに誕生した電力広域的運営推進機関が各会社から提出される電力需給の計画をもとに全国一律で電気の需要と供給を管理することになりました。

この改革後、わたしたちは電気の小売事業者を選ぶことを通じて、どこでどのようにしてつくられた電気を家庭に届けてもらうかを選ぶことができるようになりました。また、電気料金も一律ではなく、自由競争のもとで小売電気事業者から出された多様な料金プランから自分に合ったものを選ぶことができます。

ただ安い電気を選べばいいわけではない

大手電力から新電力(新たに電力市場に参入した小売電気事業者)に契約を切り替える人は少しずつ増えてきており、2019年現在、新電力のシェアは全体の約16%になりました。大手電力のシェアは95%から84%に下がり、電力自由化によってそれなりに大きな変化が電力市場に起きてきています。

しかし、この自由化は負の側面も持っています。自由化によって消費者はより安い電気を求めるようになり、それに伴って、電力会社側もいかに安く電気を仕入れて売るかに注力することとなりました。その結果、各電力会社は安く電気を作れるように自前の石炭火力発電所を新設する計画を打ち立てます。石炭火力発電所からは大量の二酸化炭素が排出されます。2012年以降、新たに50基もの石炭火力発電所建設計画が持ち上がり、世界が目指す脱炭素社会とはまったく逆行した流れが生まれてしまいました。その後、2016年に発効したパリ協定をうけて13基は計画を中止しましたが、すでに15基が運転を開始し、残りの22基も計画や建設が進められています。また、こうして増加する二酸化炭素を相殺させるねらいから、「低炭素」電源として原子力発電を推進することにもつながります。私たちが単に安さのみを求めて電気を選んでいたのでは、エネルギー転換を進めることはできないのです。

おうちの電気の選び方

そこで、私たち生活者が「安さ」以外の視点も持って電気を選ぶことが大切です。特に、どんな発電方法によってつくられた電気なのかに注目し、再生可能エネルギーの電気を積極的に選ぶことが大切です。その他、発電所の立地地域のことを考えているかなど、値段以外に大切な視点があります。

私が事務局をしている「パワーシフト・キャンペーン」では、7つの点を重視して、再エネ供給を目指す電力会社をWEBサイトで紹介しています。電力自由化が始まったころには、再エネの電気を重視して販売している会社はまだ少なく生活者の選択肢は少なかったのですが、いまではかなり増えてきているため、選びやすくなっています。サイトでは、実際に電力の切り替えを行った個人や事業所も紹介しています。

電気を選ぶのは簡単

いざ電力会社を変更しようと思っても不安があるものです。「何となくそのままに...」「追加工事など手間がかかりそう」「どの会社にすればいいかわからない」「小さい電力会社だと不安」など、生活者が電力の選択に踏み切れない壁があります。まずは正確な情報が重要です。例えば、上で紹介したパワーシフト・キャンペーンで調べることができます。そして、電気契約の変更はとても簡単で、現在の請求書に書かれている「地点番号」と「お客様番号」を確認して、切り替えたい電力会社に連絡を入れるだけです。なお、電力会社を変えることで新たに電線を引く必要はありません。電気の物理的な流れに変化はなく、これまでと同じ電線を使って送配電事業者が各家庭まで電気を届けます。電気会社が変わるというのは、あくまで契約の窓口が変わるということです。

エネルギーを市民の手に

ドイツでは2019年に、全発電量に占める再生可能エネルギーの割合は46%になりました(日本は17% 2)。再生可能エネルギーでつくられた電気を選ぶ生活者も多く、ナトゥアシュトローム(日本語に直訳すると自然電気)、シェーナウ電力などの再生可能エネルギー100%の電力を販売する会社では、契約者数がそれぞれ20万人をこえています。再生可能エネルギーを扱う電力会社が紹介されたサイトもあり、各社を比較しながら検討することができます。

実際に、ドイツでは、 再生可能エネルギー設備の所有者として、大手電力は設備容量のわずか5%なのに対して、自宅の太陽光パネルなどの個人所有が32%は、バイオガス発電など農業者が所有しているものが11%と、生活者自身がエネルギー供給の担い手になっています。

比較的小規模な設備で電気を作れる再生可能エネルギーだからこそ 、地域や市民がエネルギーの供給に参加しやすいのです。こうして再生可能エネルギーを進めることは、自分たちで使うエネルギーは自分たちで決めるという「エネルギーの民主化」 を進めることにつながるのです。

お金の流れを変えて社会を変える

わたしたちが電力会社を選び、お金の流れを変えることは社会を変えることにつながります。再生可能エネルギーを重視する会社にお金を払うことで、再生可能エネルギーへの転換を進めることができるのです。また、それだけにとどまりません。再生可能エネルギーは地域や住民に根差したものであり、これを応援することで、地域や地域を超えた新たな人のつながりを生み出すことができます。これが、面白くやりがいのあることでもあり、今後の再エネ電力発展のカギになるかなと思っています。

持続可能な社会に向けて、わたしたちひとりひとりが主体的に電気を選び、社会の在り方を選んでいくことが大切だと考えています。

「どうする!?エネルギー大転換」展
https://www.miraikan.jst.go.jp/sp/energiewenden/

トークイベントの様子(オンライン動画)
https://www.youtube.com/watch?v=xpzWwRSk9jA

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