みなさんこんにちは。科学コミュニケーター(SC)の山本です。
緊急事態宣言が解除され、日本科学未来館も6月3日から再開館しています。
※感染拡大対策をしながらの再開館です。状況に合わせて対策も変わることがありますので、来館をご検討の際には、その都度、ご来館前に必ずお知らせをご確認ください。
未来館のトップページはこちら⇒https://www.miraikan.jst.go.jp/
そういうわけで、「未来館が再開館するまで」といいながら配信してきたニコニコ生放送「わかんないよね新型コロナ ~だからプロにきいてみよう」(国立国際医療研究センター 国際感染症センターとのコラボ番組)も、5月29日(金)をもって一旦終了となりました。
4月1日から月曜~金曜、合計43回の配信の視聴者数を足してみたところ、のべ165,004人の方にご視聴いただいたようです(2020年5月30日現在)。ニコ生の視聴者数の規模感が分からないので、手近な基準として未来館の年間入館者数と比べると、だいたい10%くらい・・・あれ、すごい数字なのでは? ご覧いただいたみなさま、ありがとうございました!
もしまだ見ていないという方は、チラッと覗いてみてください(アカウント登録なし、無料でご視聴いただけます)。
番組の詳細はこちらから⇒https://www.miraikan.jst.go.jp/info/2003310925716.html (リンクは削除されました。また、URLは無効な場合があります。)
このブログでは、月~金の配信の最後の週になった5月25日~29日の内容を、山本の独断と偏見でピックアップしてお送りします。この週はあまりにも内容が濃すぎてブログ1本に収まらないので、25日(月)~27日(水)の前編と、28日(木)・29日(金)の後編とに分けてお送りします。
5月25日に、すべての都道府県で緊急事態宣言が解除されました。しかし、今でも感染は続いていますし、次の感染の波が来る可能性も高いと言われています。
そのような状況ということで、この週は「新型コロナの第二波に向けて、第一波を振り返る」ことをテーマに配信しました。「みんなで頑張ったよね!」と美しい思い出にしてしまったり、さっさと忘れ去ったりしてしまいたくもなりますが、次に備える意味で建設的に振り返ることはとても大事なので、ぜひお付き合いください。
もちろん、感染症対策のプロ、国立国際医療研究センター 国際感染症センターの堀さんはレギュラー参加です。
なお、項目のあとにあるカッコ内の数字は、各放送の開始時点からの経過時間です。番組を見る際の目安にお使いください。
■5/25(月)のお話、ピックアップ
新型コロナウイルスに関連してときおり広がるデマをテーマに、名古屋大学 大学院 情報科学研究科 複雑系科学専攻の笹原和俊先生をゲストにお迎えしてお送りしました。
◆拡散しやすい情報の特徴は?(22:25~)
上の図のように、同じ意見の人だけで集まってしまうと、フェイクニュースを見破れないままになりがちとのことです。SNSが日常的に使われる中、広まりがちなデマにはどんな特徴があって、どうやって対処していけばよいのでしょうか。
笹原先生によると、SNSで拡散されやすい情報には、以下のような傾向があるそうです。
- 「正しい情報」と「誤情報」とを比べると、「誤情報」の方が早く広まりやすい
- 「驚きを含む情報」や、「感情を刺激する情報」は拡散されやすい
- 「情報が拡散される量」は、「情報の重要性」×「状況の曖昧さ」で決まるという研究もある
新型コロナウイルスについては情報の重要性がそもそも高いです。情報を発信する時には、情報の曖昧さをできるだけ排除することが大事とのことでした。また、正しい情報を繰り返し発信していくことも大切なのだとか。
堀さんは、誤解を与えかねない発言をしたタレントさんのいる芸能事務所に苦情を伝えたこともあるとのこと。
影響力ある方の発言の場合、本人に訂正してもらうのは一手かも?
加えて、新型コロナなどの新しい感染症は、新しい情報が出て、古い情報が訂正されることも多くあります。古い情報に惑わされることがないように、情報を発信する場合は日付を書くこと、情報を受け取る側も情報の日付を確認することが大事とのことでした。
◆デマ拡散の防止法(26:45~)
笹原先生に、デマの拡散防止法を伺いましたが、やはり大事なのは社会全体の情報リテラシーとのこと。今のところ、地道に一人ひとりが意識していくしかなさそうです。
「好きな人の発言だから」「たくさん共有されているから」というだけで拡散させず、内容をよく見てみる(可能であれば、その情報のもとになった一次情報も探ってみる)意識が広がれば、確かにSNSでのデマの拡散は減りそうです。私も改めて意識して情報に触れるようにしたいと思います。
■5/26(火)のお話、ピックアップ
この日は、毛利が気になる「抗体検査」をテーマにお送りしました。前半は、抗体検査について。特に検査を実施されているナビタスクリニックの久住英二先生への取材結果も踏まえながらお伝えしました。後半は、新型コロナウイルスに感染・発症した経験を持つサトウさん(仮名)にご出演いただき、その経験を共有していただきました。
◆個人での抗体検査について、現場の声 (16:47~)
ナビタスクリニックでは、 テレワークから出勤に移行する会社が、社員に検査を受けさせることが増えているそうです。受けに来る方は、「きっとかかっている」と自信満々のことも多いとか。
久住先生は、陰性の結果がでたときには、その正しい解釈を伝え、感染症対策を続ける大切さを伝えるようにされているそうです。
堀さんも、オンラインで手軽に購入できる検査キットを使うよりも、今後どうすれば良いかの説明が医師から受けられる医療機関で検査を受けることをオススメされていました。不安なことを相談できるという意味でも、不安のある方は感染症に詳しい医療機関で受けることを検討するといいかもしれません。
◆新型コロナウイルス感染症の経験者にインタビュー① 検査について(26:09~)
新型コロナウイルス感染症を経験されたサトウさんは、手洗いなどの感染対策にはかなり気を付けている、堀さんお墨付きの清潔好きの女性で、東京都23区在住です。新型コロナには、どこでいつ感染したかにさっぱり心当たりがなく、身近に感染者や体調不良者もいないとのことです。感染リスクは下げられても、ゼロにはならないことを再認識させられる事例ですね。
※自治体や、時期によって制度が変わるので、あくまでも参考例としてご覧ください。
そんなサトウさんの症状の経過をみると・・・
- 40度の高熱に加え、嗅覚異常を発症したことで新型コロナを疑う
- 帰国者相談センターに電話がつながらず、ようやくつながった翌日「検査対象ではない」と言われる
- 保健所との電話の翌日、クリニックに電話相談の上で受診し、医師から保健所への連絡で検査OKに
- 検査の実施が決まってから4日後、熱が下がった頃にPCR検査(鼻ぐりぐり)
- 結果が出るまで3日
- 軽症なので入院対象ではなく、ホテルでの隔離を希望してから、ホテル入所まで4日
- 15日後、検査なしでみなし陰性になり、ホテルを退所
うまく検査や隔離につながらず、かなりご苦労をされたことが見て取れます。この時期は、後から振り返るとピーク時にあたっていました。
サトウさんは諦めずに医師を通して検査にこぎつけましたが、検査を諦めた陽性者も多くいたはずです。そのような方は、統計でも感染者としてカウントされません。感染の状況をできるだけ正確に把握するという意味でも、スムーズに検査を受けられる仕組みは重要です。第二波に向けて、検査や治療につながる仕組みづくりに期待したいですね。
■5/27(水)のお話、ピックアップ
新型コロナ感染経験者のサトウさん(仮名)に再登場していただきました。26日は検査についてのお話でしたが、この日はホテルや自宅での隔離について、経験をシェアしていただきました。
◆新型コロナウイルス感染症の経験者にインタビュー② ホテルでの隔離について(16:04~)
つながらない電話、なかなかしてもらえない検査、希望してもすぐには入れないホテル、という状況を乗り越え、家族を感染させてしまうことを防ぐためにもホテルでの隔離生活を始めたサトウさん。ホテル生活は、どんな感じだったのでしょうか?
※自治体や、時期によって制度が変わるので、あくまでも参考例としてご覧ください。
- ホテルの外から、欲しいものを取り寄せることができなかった
- 豪華な食事はおいしかったが、病人食とは言えず、他を選ぶこともできなかった(食事の制限やアレルギーがある方はホテルに入れないとの事前説明はあった)
- 隔離中に具合が悪くなったが、病院に行くまでいろいろなやり取りが必要だった
- 選べる水分が水とお茶しかなかったのが大変だった(上記体調不良の原因は脱水だったとのこと)
うーん、この生活は・・・特に体調が万全ではない中では、かなりつらそうです。新型コロナに感染して隔離状態にある中では、体調を崩しても医療につながりにくい、というのも不安を増しますね。
とはいえ、これも、陽性ならもれなく(元気でも)入院するしかなく、病院のベッドを圧迫していた頃から、一歩状況が変わったときのお話です。このままこの仕組みを死守する必要もないと思いますので、次の感染の波が来る前にスムーズな仕組みといろいろな選択肢が整うことに期待します。
◆コロナウイルス感染症の経験者にインタビュー③ 自治体ごとのルールについて(26:51~)
陽性と判明してから半月が経ったサトウさんは、症状もないことから検査なしで「みなし陰性」ということで、隔離が解除されました。実は、その後にも、現場の混乱をうかがわせる(サトウさんのご苦労がしのばれる)お話が続きます。
東京都のルールで、公共交通機関の利用も仕事もOKと言われて帰宅したサトウさんに、区の保健所から電話がかかってきたそうです。
「当区では、検査で陰性が出るまで隔離の継続をお願いしています」
まさかの、自宅での隔離に逆戻り。痰(たん)によるPCR検査をしたら、なんと結果が陽性だったので、更に隔離継続。2回目の検査でようやく陰性が出て、隔離終了(追加で10日間の隔離)。
自治体ごとにルールが違うというのは非常につらいです。自治体ごとにルールが違うということは、自治体をまたいで出勤・通学する人は両方のルールの影響を受ける可能性もあるのではないでしょうか。これはつらい。
自治体ごとに事情が異なることもあると思うので、全国的に同じルールを適用するわけにもいかないかもしれませんが、第一波の事例をもとに、混乱を最小限に収める調整に期待したいですね。ちなみに、5月1日の厚生労働省資料で、陽性と判明してから14日経っているなどの基準を満たしたら検査なしで隔離をやめて良いという判断が出ている(https://www.mhlw.go.jp/content/000627457.pdf)ので、このサトウさんのような事例はなくなっていく・・・と良いですね(基準やルールは状況に応じて変わるので、必ず最新の情報をご確認ください)。
最後に、サトウさん(仮名)のご家族は最後まで感染がなかったそうですが、そのご家族も職場から出勤を控えるように言われ、収入を断たれた時期があったとのことです。経済的な問題も、根深いです。
以上、デマとどうつき合っていくか(つき合わずに済ませるか)、感染した時の検査や隔離をどうするかなど、いろんな課題が浮かび上がった5/25(月)~27(水)の配信内容ピックアップでした。
後編に続きます。そちらのテーマは、ペットと新型コロナの問題、消毒薬の噴霧の問題、医療機関や保健所で起こった問題など。そちらもぜひご覧ください。
■各回の内容一覧
こちらから過去の番組を無料で視聴できますので、ぜひご覧下さい。
https://ch.nicovideo.jp/miraikan
これまでとこれからの番組表は、こちらです。
https://www.miraikan.jst.go.jp/info/docs/schedule8.pdf
◆5/25「あやしい情報をどうするか~新型コロナ第一波を振り返る~」 (担当SC:綾塚)
【情報とのつき合い方① ~名古屋大学 笹原和俊先生ご登場!】
- SNSで同じ意見の人が集まる様子(シミュレーション)(3:00~)
【情報とのつき合い方② 最近のあやしい情報:次亜塩素酸水】
- 人体の消毒を目的とした利用や噴霧について(9:25~)
- 情報を判断する際のポイントは?(11:15~)
- "専門家"の意見が食い違ったら?(19:30~)
【情報とのつき合い方③ 笹原先生に聞いてみよう!】
- SNSで誤情報が広がるしくみは?(21:20~)
- 拡散しやすい情報の特徴は?(22:25~)
- 誤情報を拡散させないためにできることは?(23:35~)
- 堀さんが情報発信時に気をつけていること(25:45~)
- 誤情報が広がるのを防ぐ方法は?(26:45~)
- 堀さんの取り組み:誤情報を訂正してもらう(29:30~)
- 曖昧な状況でどう判断するか(35:10~)
◆5/26「第二波に向けて毛利が気になる話題」 (担当SC:毛利)
【抗体検査について】
- 抗体検査と他の検査でわかること(02:43~)
- 世界各地の抗体検査結果をどう見る?(04:10~)
- 「免疫パスポート」について(10:45~)
- 個人での抗体検査について、現場の声 ~ナビタスクリニック・久住英二先生にきいてみた(16:47~)
- 検査キットの精度は100%ではない(20:00~)
【新型コロナから回復されたサトウさん(仮名)に聞く①】
- 感染経路の心当たりはあった?(26:09~)
- 症状が出てからの経過表を見てみよう(27:48 ~)
- 新型コロナを疑い始めた「嗅覚異常」(28:57~)
- PCR検査OKの判断まで、検査実施まで、ホテルに入るまでなどに、それぞれに何日かかった?(29:46~)
- 家庭内感染を防ぐためにどんな工夫をした?(32:52~)
- 検査キットの精度評価に協力するために受けた抗体検査(33:44~)
◆5/27「検査・治療体制はどうなってた?~新型コロナ第一波を振り返る~」 (担当SC:綾塚)
【新型コロナから回復されたサトウさん(仮名)に聞く②】
- 感染経路の心当たりはあった?(02:28~)
- 症状が出てからの経過表を見てみよう(03:01 ~)
- 新型コロナを疑い始めた「嗅覚異常」(04:42~)
- 高熱の期間はどれくらい?(05:20~)
- 感染経路はわからない(06:16~)
- 保健所へ電話がなかなかつながらない(07:49~)
- 「コロナかもしれない」医療機関へ相談(09:20 ~ )
- なぜ保健所は検査対象でないと判断したの?(12:18 ~)
- ホテルの入所前の説明(16:04~)
- ホテルでの食事について(18:30~)
- ホテルで体調を崩したときの対応について(19:56~)
- 食事や飲み物は決められている(21:45~)
- ホテルの退所は検査をしない「みなし陰性」(26:51~)
- 保健所からの隔離継続の連絡(29:40~)
- 喀痰PCR検査について(31:12~)
- PCR陽性と感染力の有無は違う(34:58~)
- 周囲の人と接するうえで気を付けたことは?(36:01~)
- 新型コロナ感染を受けて、差別や偏見はあったか?(39:59~)