イグノーベル賞

祝!14年連続日本人受賞!!ワニもヘリウム声になる⁉

30回目を迎えるイグノーベル賞。今年も、日本人を含む研究グループが受賞しました!日本人の受賞は、これで14年連続になります!

今回受賞したのは、京都大学霊長類研究所の西村剛先生で、当時ウィーン大学(オーストリア)のStephan A. Reber先生、セントオーガスティン・アリゲーターファーム動物園(アメリカ)のMark Robertson先生らとの共同受賞です。おめでとうございます!

受賞分野は、Acoustic Prize、音響学賞とでも訳しましょうか。仕掛け人のMarc氏によれば、それぞれの賞の名付けは受賞研究を決めてから行うようで、大変な作業だそうです。今回も若干無理のある感じが漂っていますね。

音響学賞受賞の皆さん。手を振っているのが西村先生。(授賞式の配信動画より)

気になる受賞理由は、「ヘリウムを多く含む気体で満たした容器の中で、メスのヨウスコウワニにうなり声を出させた業績に対して」でした!

ヘリウムを吸ったワニのうなり声は、人間の「ヘリウム声」と同じく、通常よりも高くなっていました。これは、ワニが声を出すとき、私たち人間や鳥のように、のどにある声道などの空間で音を共鳴させていることを示しているのです。なんと、ワニどころか、爬虫類が共鳴を使って発声しているという報告は本研究が初めてだそうです!

いつもと一味違う!授賞式

新型コロナウイルス対策のため、今年はオンラインで授賞式が行われました。せっかくですから、今回ならではの工夫をお伝えします!

イグノーベル賞のマスコット、Stinker。今年はいつもと少し違います。服にもマスクにもなる優れもの、エマージェンシー・ブラ(2009年イグノーベル賞受賞)を着用し、感染防止に配慮しています。怪しい者ではございません。

Stinker in a bulla(提供:Improbable Research)

賞金の10兆ジンバブエドル(現在は流通していません)。いつもは授賞式で手渡しですが、今年は違うみたい。トロフィーも、あらかじめPDFを受賞者に送り、立方体を作ってもらったそうです。各面には今年のテーマ「BUGS」を受け、ノミやコンピューター「バグ」、ノロウイルスなどの絵が描かれています。※ノロウイルスはお腹に来る感染症ですが、食あたりにはお腹のBUGという表現があるそうです。

時空を超えて飛来するジンバブエ・ドルとトロフィー(授賞式の配信動画より)

授賞式の随所で投げられる紙ヒコーキ。今年は色々な場所から投げられています。未来館の科学コミュニケーターも登場!

飛沫をとばさぬよう笑顔ながらも無言で紙ヒコーキを投げる科学コミュニケーターたち

BUGS」にちなみ、ゴキブリを意味するメキシコ民謡『ラ・クカラチャ』をリレー形式で歌っていきます。ゲストの歴代ノーベル賞受賞者も参加!なんとも豪華な輪唱です。

熱唱するAndre Geim氏(ノーベル賞、イグノーベル賞両方のホルダー。後ろに見える分子模型は、ノーベル物理学賞の受賞テーマになったグラフェンかも…?)(授賞式の配信動画より)

授賞式のラスト、Marc氏は「今はGoodbye, Goodbyeとは言いたくありません」と締めくくりました。今回のような催しももちろん面白いのですが、また新型コロナウイルスが終息したとき、例年のように賑やかな授賞式が開催されることを祈っています!

音響学だけを紹介しましたが、今年の10賞は以下の通りです。イグノーベル賞ならでは風刺の効いた賞もありますね。

2020年イグノーベル賞の受賞者一覧

音響学賞(オーストリア、スウェーデン、日本、米国、スイス)
Stephan Reber, 西村剛, Judith Janisch, Mark Robertson, and Tecumseh Fitch
ヘリウムを多く含む気体で満たした容器の中で、メスのヨウスコウワニにうなり声を出させた業績に対して

心理学賞(カナダ、米国)
Miranda Giacomin and Nicholas Rule
まゆ毛からナルシストを特定する方法を考案した業績に対して

平和賞(インド、パキスタン)
インドとパキスタン両政府
それぞれの外交官が、真夜中に互いのドアベルを鳴らし、誰かが出る前に逃走(いわゆるピンポンダッシュ)したことに対して

物理学賞(オーストラリア、ウクライナ、フランス、イタリア、ドイツ、イギリス、南アフリカ共和国)
Ivan Maksymov and Andriy Pototsky
ミミズを揺らしたときにその形に起こる変化を実験で調べた業績に対して

経済学賞(スコットランド、ポーランド、フランス、ブラジル、チリ、コロンビア、オーストラリア、イタリア、ノルウェー)
Christopher Watkins, Juan David Leongómez, Jeanne Bovet, Agnieszka Żelaźniewicz, Max Korbmacher, Marco Antônio Corrêa Varella, Ana Maria Fernandez, Danielle Wagstaff, and Samuela Bolgan
各国の国民所得の不平等と、口同士をつかったキスの平均回数についての関係を定量化しようと試みたことに対して

経営学賞(中国)
Xi Guang-An, Mo Tian-Xiang, Yang Kang-Sheng, Yang Guang-Sheng, and Ling Xian Si
広西チワン族自治区における5人の殺し屋が契約した方法に対して(次々と下請けに依頼したところ、それぞれの報酬は少しずつ少なくなり、結局誰も仕事をしなかった)

昆虫学賞(米国)
Richard Vetter
多くの昆虫学者がクモ(昆虫ではない)を恐れている証拠を集めたことに対して

医学賞(オランダ、ベルギー)
Nienke Vulink, Damiaan Denys, and Arnoud van Loon
音嫌悪症(他人の咀嚼音を不快に感じる疾患)は長期にわたり認知されていなかったが、それを診断した業績に対して

医学教育賞(ブラジル、イギリス、インド、メキシコ、ベラルーシ、米国、トルコ、ロシア、トルクメニスタン)
Jair Bolsonaro of Brazil, Boris Johnson of the United Kingdom, Narendra Modi of India, Andrés Manuel López Obrador of Mexico, Alexander Lukashenko of Belarus, Donald Trump of the USA, Recep Tayyip Erdogan of Turkey, Vladimir Putin of Russia, and Gurbanguly Berdimuhamedow of Turkmenistan
COVID-19によるパンデミックを利用して、政治家は科学者や医者よりも速やかに生死における影響を及ぼすことができると世界に教えた業績に対して

物質科学(米国、イギリス)
Metin Eren, Michelle Bebber, James Norris, Alyssa Perrone, Ashley Rutkoski, Michael Wilson, and Mary Ann Raghanti
凍った人糞製のナイフを再現したところ、あまり切れなかったのを確かめた業績に対して

イグノーベル賞、あなたはどんなとこが好き?

さて今夜のニコニコ生放送では、私たち科学コミュニケーターが、イグノーベル賞を受賞した研究のおもしろさや、ユーモアあふれる授賞式の模様、これまでの歴史などをご紹介いたします!乞うご期待!

ニコニコ生放送「祝30回!イグノーベル賞を科学コミュニケーターと楽しもう」
https://live2.nicovideo.jp/watch/lv327959159
9月18日(金)開始:18時~、開場:17時30分~

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